雨がやんでも解除されず…? 「大雨警報」の意味
21日11時現在、西日本を中心に梅雨前線による大雨が続いています。引き続き土砂災害に警戒が必要です。最新の気象情報をまめにチェックするようにしてください。
集中豪雨や台風などの際、気象台から発表されるのが「大雨警報」。警報が出されると学校が休校になることがあるなど、比較的身近な防災情報のひとつです。
しかし、「雨が弱まったのに、まだ大雨警報が出されたまま」「雨はもうやんだのに、まだ大雨警報が解除されない」などと思った経験はありませんか? これには、きちんとした理由、しかも、皆さんにしっかりと理解しておいてほしい理由があるのです。
大雨警報とは?
気象台が発表する「警報」は、「重大な災害の発生するおそれ」のある場合に出されるものです(8月30日からはさらに上位の「特別警報」の運用が開始予定です。詳細は以前の記事もご参考に)。簡単に言えば、人命に関わるような災害が起こり得る場合に発表される情報が「警報」。原則として各市町村ごとに発表され、前述した休校の判断のほか、市町村が発表する避難情報や災害対策本部設置の判断にも利用されています。
気象に関係する「警報」としては、大雨・洪水・暴風・波浪・高潮・大雪・暴風雪の7つが定められていて、それぞれの現象によって引き起こされる災害に対しての警戒を呼びかけます。
実は、「大雨警報」が警戒の対象としている災害は、2種類あります。いずれも大雨に起因する災害で、「土砂災害」と「浸水害」です。警報がなかなか解除されないと感じる時は、この2つのうち「土砂災害」を対象に出された大雨警報の場合が多いのです。
「土砂災害の大雨警報」が出される基準は?
大雨警報の発表基準は、予め各地域ごとに定められています。短い時間に降る雨の量がポイントとなる「浸水害」については1時間雨量や3時間雨量が基準ですが、「土砂災害」については雨量そのものが基準ではありません。
土の中に浸み込んでいる雨水の量を5kmメッシュで指数化した「土壌雨量指数」を基準に用いています。現在までの降雨により、いま地面はどのくらい水を含んでいて、どのくらい地盤が緩んでいるのか、そして今後の降雨予測をもとにして、さらにどのくらい地中の水分が増えるのかを判断し、土砂災害を対象にした大雨警報が出される、という手順です。
土砂災害の大雨警報は、降雨そのものの量で発表されるのではなく、それをもとにリアルタイムで推定した地中の水分量によって、発表されているのです。
地中の水分は、すぐには流れ出していかない
地面に降った雨は、全てがすぐに川や海へと流れ出していくものではありません。地面はいわば「スポンジ」のようなものですから、降った雨の一部はしばらく地面に浸み込んだままで、ゆっくりと時間をかけて、外へと流れ出していきます。
つまり、雨が弱まったりやんだりしても、地中の水分が抜けていくのには時間がかかり、しばらくは地盤の緩んだ状態が続く場合がある、ということなのです。
こうした場合には、雨がやんでもすぐには大雨警報が解除されません。気象台で土壌雨量指数をチェックし続け、土砂災害の危険性が低くなってきたと判断できるまでは、仮に雨がやんでいても、大雨警報は解除されない、というわけです。
警報の「本文」も活用を
いつ頃まで警戒が必要かは、警報の「本文」に示されています。発表時点での見通しに基づいて、警戒を要すると予想される期間が記載されているのです。
警報の発表・解除についてはテレビやラジオなど各種メディアで報じられることが多いですが、こうした詳細な事項については、気象庁ホームページなどで市町村ごとに確認することが可能です。
スマートフォンやパソコンで手軽にアクセスできる環境にいる場合には、ぜひ活用されることをお勧めします。
雨がやんでも、油断禁物
雨がやんで晴れ間が出てくると、ついすぐに外にお出かけしたくなるという方もいらっしゃるでしょう。降っていた雨が長雨や大雨だったりすると、その気持ちはなおさらなのかもしれません。
しかし、大雨警報が発表されているうちは、土砂災害の起こりやすい状態がまだ続いているわけです。雨がやんでも晴れてきても、警報が解除されるまでは、ガケや斜面など危険な場所に近づかないよう、心掛けていただければと思います。
梅雨もまだ折り返し地点、という地域が多いです。夏も激しい夕立の日もあるでしょうし、秋にかけては本格的な台風シーズンを迎えます。大雨警報を意味を正しく知って、災害に巻き込まれないように上手に利用していきたいものです。
「土砂災害警報」の検討
気象庁では、昨年度に「土砂災害への警戒の呼びかけに関する検討会」が開催され、情報体系のあり方についても検討がなされました。
改善の方向性として、これまでの大雨注意報・大雨警報(土砂災害)や、土砂災害警戒情報(大雨警報よりさらに上位の情報。気象台と都道府県が共同で発表する)などの体系を整理し、土砂災害注意報→土砂災害警報→土砂災害発生警報とすること(名称について今年度開催されている別の検討会での議論も踏まえて検討)や、危険度の5段階レベル表示といった案が示されました。今後の議論の展開や検討状況にも注目したいところです。