SDGS ゴール14 「海の豊かさを守ろう」について学ぼう その2
前回の記事では、SDGs ゴール14「海の豊かさを守ろう」のアウトラインについて、解説をしました。今回はその内容について詳しく見ていきます。ゴール14には、10のターゲットが設定されています。外務省の仮訳をもとに、ターゲットを個別に見ていきましょう。
14.1~14.3は、環境問題に関するターゲットです。
14.1は海洋汚染全般に関する一般的なターゲットです。14.2は強靱性についてです。健全な生態系は、汚染等の攪乱から速やかに自己回復する能力を持っています。この回復能力を頑健性と呼びます。強靱性が損なわれると、回復が阻害されるために、環境破壊が進むことになります。3は海洋酸性化です。温暖化ガスであるCO2が増えることで、海の水が徐々に酸性になっていることが、様々なデータから示されています。酸性化すると、カルシウムが溶けやすくなり、貝殻や珊瑚の組織が作りづらくなることなどが懸念されています。
ターゲット1-3は、具体的な数値目標などが設定されておらず、スローガン的な内容になっています。これらの広範な環境問題については、科学的なデータが十分に集まっていないケースもあり、国際的な目標が定められていないため、SDGsでも明確な目標が定められていません。国際的な議論の推移に注目をしつつ、できる範囲で、出来ることをやることが求められています。
14.4は水産資源の管理です。
水産資源管理については、すでに国際的な合意が存在するので、その確実な達成がターゲットになっています。こういったケースでは、SDGsのターゲットの内容を理解するには、その根拠となった国際合意の内容を読み解く必要があります。
14.4の根拠となるのは海洋法に関する国際連合条約(通称:国連海洋法条約)です。海の憲法とも呼ばれる国連海洋法条約は、1982年に採択され、1994年に発効しました。沿岸国に200海里(約380km)の排他的経済水域を認める根拠となっており、2020年現在、日本を含む世界168か国が批准しています 。
国連海洋法条約では、沿岸国に排他的利用権を認めると同時に、管理義務を課しています。漁獲によって魚が減りすぎると、十分な親が確保できずに、資源の生産力が下がっていきます。持続的に安定した漁獲を得るには、資源の再生産力が減らないような水準を維持する必要があります。国連海洋法条約では、資源量がその水準を下回ると資源の生産力が減少する資源量(これを最大持続生産量を実現することのできる資源水準と呼びます)に維持し又は回復するように管理措置を講じることを沿岸国に義務づけています。SDGs14.4もほぼ同じ内容であり、国連海洋法条約の管理義務の着実な実行を求めているのです。
国連海洋法条約が発効してから25年以上経過しています。例えば、米国やニュージーランドでは、漁獲規制を強化して、8割以上の水産資源が最大持続生産量のレベル以上にあるとされています。一方で、多くの途上国では、管理体制の不備から、資源の減少が続いています。
日本では漁獲規制が不十分であったことから、多くの水産資源が最大持続生産量のレベルを下回っています。そこで、日本政府は2018年に漁業法を改正して、最大持続生産量のレベルまで、水産資源を維持・回復するための漁獲規制を導入することになりました。改正漁業法が施工されるのは2020年12月ですから、滑り込みでSDGs14.4に対応したことになります。
こちらが改正漁業法の第12条です。国連海洋法条約やSDGs14.4とほぼ一致する内容です。ちなみに、改正前の漁業法は戦後間もない1949年に施行されたもので、食糧難という時代背景から、食糧増産に主眼がおかれ、持続可能性への考慮が欠如していました。国連海洋法条約の採択から40年を経て、ようやく、それに対応する国内法が整ったというわけです。
乱獲を回避するには、漁獲規制の決まりをつくるだけなく、それを遵守させる必要があります。法律は作ったけれども誰も守っていないのでは意味がありません。そのため、違法・無報告・無規制(IUU)漁業の削減に向けて、取り組んでいく必要があります。日本も様々な国際機関と連携して、国際的なIUUを削減するための体制作りを始めています。また、漁業法改正によって、国内の密漁の罰金が引き上げられました。
(つづく)