荒木選手が値千金の同点打、板山選手はウル虎パワーで決勝2ラン!《阪神ファーム》
前日に続いて『ウル虎の夏2018』として行われた、阪神甲子園球場でのウエスタン・中日戦。スタンドには黄色いジャージを着たファンの方がいっぱいでした。5回まで2安打無得点だった打線ですが、6回2死満塁の場面で途中出場の荒木郁也選手が見事な2点タイムリー!これで追いつき、8回には板山祐太郎選手がライトポールを巻く勝ち越し2ラン!板山選手のヒーロースピーチにも大歓声です。
もちろん、そこへ至る前に2死から貴重なヒットを放った高山俊選手は守備でも魅せ、同じ外野の島田海吏選手も、内野の板山選手もいいプレーがありました。そして投手陣の頑張りも忘れてはなりません。これで4連勝、貯金はいつの間にか17まで増えていますね。
きょう22日も『ウル虎の夏』仕様の甲子園。先発は竹安大知投手です。思い起こせば昨年の7月21日、同じ甲子園球場のナイターで行われたウエスタン・ソフトバンク戦で“プロ初勝利”を挙げ、初めてのヒーローインタビューを経験したんですよね。あの時も『ウル虎の夏』でした。思い出すこともあるでしょう。ことしはインタビューでなくスピーチもやっちゃいますか!
では、きのう21日の試合結果です。なお板山選手のホームラン以外、写真はほとんど撮れていません。ご了承ください。
《ウエスタン公式戦》7月21日
阪神- 中日20回戦 (甲子園)
中日 010 001 000 = 2
阪神 000 002 02X = 4
◆バッテリー
【阪神】福永-松田-島本-山本-○守屋(2勝)‐S伊藤和(1勝2敗11S) / 長坂
【中日】阿知羅(6回)-浅尾(1回1/3)-●福(1勝1敗)(2/3回) / 加藤
◆本塁打 神:板山4号2ラン(福)
◆二塁打 中:遠藤
◆打撃 (打-安-点/振-球/盗/失) 打率
1]指:江越 (4-0-0 / 2-0 / 0 / 0) .215
2]二三:森越 (3-0-0 / 2-1 / 0 / 0) .256
3]左:緒方 (4-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .263
4]右:高山 (4-2-0 / 0-0 / 0 / 0) .316
5]遊二:板山 (3-2-2 / 0-1 / 0 / 0) .293
6]一:山崎 (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .333
〃一:荒木 (2-1-2 / 0-0 / 0 / 0) .196
7]三:西田 (1-0-0 / 0-1 / 0 / 0) .194
〃走遊:熊谷 (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .199
8]捕:長坂 (2-1-0 / 0-1 / 0 / 0) .276
9]中:島田 (3-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .211
◆投手 (安-振-球/失-自/防御率) 最速キロ
福永 6回 80球 (6-4-1 / 2-2 / 3.69) 148
松田 0.1回 21球 (1-0-2 / 0-0 / 5.91) 146
島本 0.2回 8球 (0-0-0 / 0-0 / 5.14) 142
山本 0.2回 8球 (0-1-0 / 0-0 / 3.18) 132
守屋 0.1回 4球 (0-1-0 / 0-0 / 2.13) 146
伊藤和 1回 16球 (0-1-0 / 0-0 / 1.71) 146
《試合経過》※敬称略
先発の福永は三者凡退の立ち上がり。なんと、わずか2分で1回の表が終わりました。しかし2回、先頭の4番・野本を内野安打(板山がダッシュして素手で捕りナイススロー!しかしセーフ)で出すと、松井佑と阿部に連打されて無死満塁。近藤の中飛を島田が好捕するも、犠飛となって先制されます。
3回は2死から右前打された遠藤の盗塁を、福永が自ら刺して3人で終了。4回は2三振を奪って三者凡退。5回は1死から死球を与えましたが、併殺で片づけて追加点を与えていません。
一方、打線は中日・阿知羅の前に1回が3者連続三振、2回は三者凡退、3回にようやく初ヒット(長坂の中前打)が出るも得点なし。4回はまた三者凡退。5回は先頭の板山が中前打して、山崎の犠打と西田の四球(代走に熊谷)で1死一、二塁としたものの後続を断たれます。
1対0のまま迎えた6回、福永は2死を取ったあとで3番・遠藤の右翼線二塁打を浴び、暴投で三塁へ。続く野本の当たりはセカンド板山が捕って一塁へ送球しますがセーフ。タイムリー内野安打となって、リードを広げられました。
その裏の攻撃は、1死から森越が四球を選び、2死後に高山が右前打、板山は四球で満塁のチャンスを作ります。次は直前の守備から出場の荒木。2球で追い込まれたあとボール3つを見送り、6球目の真っすぐをレフトへ!2人が相次いで生還して同点です。
7回に登板した松田が内野安打と犠打、さらに連続四球を与えて降板。1死満塁で代わった島本は攻めの投球で溝脇を遊ゴロ(本塁で封殺)、友永は右飛(右中間の当たりを高山がランニングキャッチ!つかんだ後で島田と接触して倒れ込むも、問題なく大きな拍手)に打ち取って、見事な救援でした。その裏は長坂の四球のみ、併殺もあって無得点。
8回表は山本が遠藤、野本の左2人を打ち取り、松井佑は守屋が空振り三振に仕留めて3人で片づけています。そして、その裏。簡単に2死を取られた打線ですが、ここでまた高山が左前打で出塁。続く板山はフルカウントからの6球目、138キロの真っすぐをとらえました。ただ打球はライトポールの右へ大きく上がって…おそらく見ていた人のほとんどがファウルと思ったでしょう。
板山もバットを持ったまま打席で、その行方を見守っていました。すると、なんと戻ってきたのです!確かに右から左へ、この日も強い浜風が吹いていたけど、まさか…という印象ですねえ。打った本人も何度かライトポール方向を見ながら一塁を回り、やがて満面の笑みを浮かべて三塁へ。ベンチ前でみんなが大喜びです。
9回表は守護神の伊藤和が、キッチリと三者凡退で締めて試合終了!勝ちは打者1人に4球を投げた守屋で、伊藤和は1軍昇格前の6月13日から数えて5試合連続の11セーブとなりました。
矢野監督も絶賛のスピーチ
ここで、板山選手のヒーロースピーチをどうぞ。
「きょうは最後まで応援ありがとうございました!きょうのホームランは、最初ファウルだと思ったんですけど」と、ここでスタンドや後ろに並ぶ選手らから笑いが起き、さらに「皆さんの声援が打球に乗り移ったんだと思います!」と板山選手が続けると、割れんばかりの拍手と大歓声でした。
「後半戦が始まったばかりで、チームの中に諦めている人はひとりもいないと思うので、これからも応援をよろしくお願いします!」。ここでも歓声。さらに続きます。「そして、あしたも甲子園球場で試合があるので、僕の全力疾走を見に来てください!きょうはありがとうございました」
なかなかのスピーチですね。前日の森越祐人選手にも負けない拍手で。思えば2月の安芸キャンプで、自身の気持ちを前向きにしようと始めた全力疾走。今もなお、攻守交代の時や打って一塁へ走る時は全力です。この日、勝ち越し2ランを放ったあと9回表が始まる際も、ベンチからセカンドまでしっかり走って「板山!板山!」のコールに応えました。
試合後の矢野燿大監督も「浜風が助けてくれることって滅多にないんやけど、浜風がフェアグラウンドに戻してくれたなあ」という言葉。本人もスピーチで「皆さんの声援が」と言っていました。「そう?ちゃんと聞こえへんかったのよ。そう言ってた?」と嬉しそうです。
板山&荒木、そして投手へ
では続けて矢野監督の話をご紹介しましょう。
「板山自身、打ったこともそうだし、さらに気持ちを共有できることやから、どんどんそういうのは言ってほしい。打った場面もね、2アウトから結果ホームランやし。最近も安定して調子はいいので。それと最後の『全力疾走を見に来てください』も俺は好きやけどな。板山らしい。アイツのそういうとこがすごいなって、ずっと思っていた。本当に板山の全力疾走を見に来て、プラスアルファでホームランもね」
いい時も、そうでない時も全力疾走は続けていますね。「(あれを始めた)キャンプの時から、落ちたことがあんまりないなあ。俺はずっと、すごいなあと思っている。言うのは簡単なんだけど、それを続けるのはね。“当たり前”のレベルが板山の中でちょっと上がったかな。全力疾走することも当たり前だし、ある程度の結果を出すことも当たり前だし。今はもうアイツの基準になっているっていうのは、レベルがまた上がっている証拠じゃないかなと思う」
“球際”がよかった試合
この試合は守備も光りました。「そうやね、きょうはほんま球際がよかったね。それで荒木が2-2になる低めのボール球を振らんかった、あの見逃し方もすごかったし。みんな、ピッチャーが要所、要所で代わってしんどいところなんだけど、そこでも気持ちがこっちに伝わるというか。そういうプレーが多かった。だから際どいところをこっちに持ってこられたのかも。今挙げた以外にも多分、俺が忘れているものもあると思うんだけど、ほんと球際ね」と矢野監督。
さらに荒木選手について「ヒットも最高のヒットだけど、あの見逃しがあったからこそ。あそこは本当にバッテリーが苦しいところ。3-2で満塁で押し出しもあかん状況で、あの1球を見逃したっていうのはね。(ああいう結末になる)確率がすごく上がる1球だから」と、中堅どころの渋い働きを絶賛しています。
投手陣への言葉
福永春吾投手に矢野監督は「まだちょっと…。いつも1軍ではどうかなという目で見ているから。勝負にいった球で相手を、たとえば低めの変化球を投げても、それを意識させて差し込めるか。意識させることがあまりできていないのよ。結果はそれなりのピッチングなんだけど、じゃあ1軍でどうなの?ってなると、うーん…まだワンランク上げないと」と話しました。
そして「厳しい言い方をすると、きょうの(内容)ではナイスピッチングと俺は言えない」と。もちろん“1軍で投げる、勝負するためには”という前提があってのこと。奮起を促しています。
連投した投手も多かったリリーフ陣に関しては、自ら「あとは中継ぎがみんなね。島本もあの苦しい場面で頑張ってくれたし、守屋も1人やったけど抑えたし、みんな仕事キッチリね。(松田)遼馬もいろいろ取り組んでいるから、また次に」とのことです。
「自分の頭を越えていった2本で」
選手のコメントはまず福永投手から。自身のよかったところを聞かれ「先制点を与えてしまったのは次に向けての課題、反省点ですけど。序盤の時点でバッターが真っすぐを振りにきて、最初はそれでしっかり押し込めてアウトが取れたのはよかったですね。回を追うごとに変化球でカウントを、もしくは勝負できたのはよかったなあとは思うんですけど」と振り返りました。
「一番よかったのは、由宇で投げた時に矢野さんから『インコース投げ切れていない』という指摘があって、きょうはインコースをかなり投げ切れたかなと思います。ボールになっていたのも引っかけたものではなく、バッターの方のボールだったので第一ステップとしてはよかったと思う」。確かに珍しく死球もありましたね。あれもそういうこと?「そうですね。インコースをしっかりいこうと。フォアボールないですよね?」。ありませんよ。
全体的に見て、よく踏ん張ったし、逆にもったいないかなという印象だと記者陣に言われた福永投手は「そうですね。結局あの自分の頭を越えていった2本のヒットが…。最初に点を取られたのも、あれから始まって、2点目もあれ。打ち取っているのに」と悔しがります。
帰り際に「阿部の三振がよかった。インコース、インコースで最後に真ん中低めのスライダー」と福永投手。4回2死で迎えた阿部選手に2‐2となってからインコースの真っすぐを2つファウルさせ、最後は135キロのスライダーで空振り三振でした。「ああいうアウトの形がいい」のだそうです。
いい状態が長くなるほど近づく1軍
大トリは板山選手。まず決勝ホームランを振り返りましょう。「打った感触は完ぺきでした。ポール際に上がって、距離は足りていると思ったけどファウルかなと。そしたら風で戻ってきてくれた。いい打ち方ができたから、そうなったのかなと思います」。なるほど。そこにスピーチで言ったような、“皆さんの声援”が加わったおかげですよね。
ずっと落ちることなく来ていると矢野監督も話していました。「やろうとしていることが表現できているので、状態はいいですね。今の感覚を忘れないようにしたい。この(いい状態の)期間が長ければ長いほど、1軍に近づいているから」
やろうとしているのはどういうこと?「バッティング面ではとにかくリラックスして、と考えています。技術は別として、軽く打つということ。軽く打っても力は入っているものなので、強く振ろうとすると120%の力になってしまう。軽く、リラックスして打つことによって、多少ずらされても対応できるので」
誰かのアドバイス?「いえ、自分で。バッティング練習でも、そんなに飛ばそうとは思っていなくて自分のポイントとタイミングで打つようにしています。それでも飛んでいく時は勝手に飛んでいくから。自分のタイミングで打てば飛んでいくと最近、感じ始めました」。最近なんですね。また日を改めて聞いてみましょう。今夜も板山選手の全力疾走を、ぜひご注目ください!
<掲載写真は筆者撮影>