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タブレットは7インチが最適なのか?

田代真人編集執筆者
(c)InventHelp

そろそろ発表されるというiPad mini。サイズは7.85インチ。iPhoneが4インチ、iPadが9.7インチだから、ちょうどその中間ということになる。故スティーブ・ジョブズは7インチiPadに否定的だったそうだが、結局販売になりそうだ。

個人的には、文庫がちょうど読めるような7.85インチサイズは、持ち運びにもちょうどよく、また、大きさや画面のサイズも電車のなかで見ていても違和感がないので、商品化は大歓迎だ。

そもそもこの大きさはアンドロイド陣営とアマゾンのキンドルで先行していた。サムソンのギャラクシー(GALAXY Tab)は7.7インチ、キンドルファイヤー(Kindle Fire HD)は7インチと8.9インチだ。それらの評判があまりに良いのでアップルも乗ってきたわけだ。サムソンのギャラクシーシリーズには5インチのスマートフォンもある。その大きさで耳に当てて電話をかけているところは滑稽でもある。

さて、そのように盛り上がっている約7インチのタブレットだが、たしかに持ち運びにも便利だし、使い勝手もよい。しかし、これが本当に最適なのかは、まだ結論がでていない。

そもそも画面は、ある程度の大きさがあったほうが見やすいことはたしかだ。だからこそ、スティーブ・ジョブズは7インチなどいらないと言い放ったのだ。しかも自動車社会の米国のこと。7インチが必要ないと判断してもおかしくはない。

しかし、現状の7インチが最適という判断は、実は技術とのトレードオフで生まれた結論じゃないかと思う。なぜならば、9.7インチのiPadは約650gと手に持って操作するには重い。ソニーのタブレット、Xperia Tablet Sも9.4インチで約570gだ。

そもそも我々がいままで見て読んでいた雑誌を考えると、A4のサイズが約14.3インチなので、10インチでも小さい。新聞にいたっては、あの大きさだ。しかし電車ではいざ知らず、部屋ではあの大きさのまま拡げて読んでいることも多い。部屋で読んでいるぶんには、別にそれでも問題なく、一覧性を考えるとかえって見やすいほどだ。

そう考えると現状のタブレットは、大きさの割りに重いことが障害になって、7インチに向かっているだけにすぎないのではないだろうか。技術とニーズの妥協点である。つまり技術的に乗り越えられない壁がまだあるということだ。なかなか小さくできないバッテリーの持ちを考えると必要十分な大きさと重さが必要になる。

想像してみよう。たとえば、現在の標準の紙の大きさであるA4の画面を持ち、縁がほとんどない表面のタブレットで、厚さは5mm、重さは約100g、バッテリー持続時間は10時間、そんなタブレットがあったら、どうだろうか? 魅力を感じないだろうか?

そろそろ目も悪くなっているアラフィフの私にとってはとても魅力的に感じる。小さな画面では文字を大きくするために画面を拡大すると、1画面に入っている情報量が少なすぎて、かえって見づらくなる。iPhoneも4インチになったとはいえ、電子書籍で文字を大きくすれば、そのぶん一覧性は損なわれる

その点、A4ほどの大きさであれば、まずまず大丈夫。問題ない。そういえば、先日の敬老の日の発表では、65歳以上のシニアの人数が3000万人を超えたという。団塊世代のトップバッターが65歳になったからだそうだが、この調子では、来年再来年とますます65以上のシニアは増えていく。

人は歳を取ると字が読めなくなって文字を読むのが面倒くさくなるという。だから読書したくてもできない。そんなシニアにとって、軽くて大きなタブレットは人気を博すと思うがどうだろうか。

日本の個人金融資産1500兆円の6割を60歳以上がもっているといわれる。『らくらくホン』が成功したように、彼らに向けた“らくらくタブレット”が出てきてもいいはず。それは使い勝手もさることながら、画面の大きさが最も重要な要素を占める。

新しい技術が生まれるのには時間がかかる。現在のスマホやタブレットの中身はほとんどがバッテリーで占められているというから、その技術革新に期待するしかないが、人間が人間である限り、現状の7インチタブレットが本命というわけではない。

編集執筆者

1963年福岡県出身。86年九州大学工学部卒業後、朝日新聞社入社。その後、学習研究社にてファッション女性誌編集者、ダイヤモンド社にてWebマスター、雑誌編集長、書籍編集などを経て、2007年メディア・ナレッジ設立。代表に就任。出版&電子出版、Webプロデューサー、PRコンサルタントとして活動。現在は、駒沢女子大学教授、桜美林大学非常勤講師を務める。専門は「コミュニケーション」「編集論」。

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