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赤ちゃんを泣かせたままにする寝かしつけが流行?放置して悪影響はないの?【専門家解説】

ねんねママ(和氣春花)乳幼児育児アドバイザー

これは欧米で「スリープトレーニング」として知られている方法で、赤ちゃんに自分の力で眠りに入れるように練習をさせるトレーニング方法です。

馴染みのない方にとっては「赤ちゃんにトレーニング?!」と驚かれるようなことかと思います。しかし、いまの子育て世代にとっては「ネントレ」というのが比較的メジャーな言葉になってきているのも事実です。

ネントレにはさまざまな方法がありますが、ある程度赤ちゃんを泣かせる方法が一般的です。泣いてもすぐに抱き上げず、自分で寝るように促していくことで、寝る力をつけていくようなスタイルです。

きっと、こんなことを疑問に思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。

「赤ちゃんを泣かせたままにするっていけないことなんじゃないか?」

「抱っこして!と泣いているのだから、抱っこしないと愛着に悪影響では?」

「泣いたまま赤ちゃんを放置して大丈夫なの?そんなことまでしないと、イマドキの親は忙しくて面倒が見られないの?」

当然の疑問だと思います。そこでこの記事では、研究論文なども引用しながら1つ1つ解説していきます。

ネントレの見守りと放置の違い

赤ちゃんをねんね上手にしようと少し泣かせる時間を作る、というネントレの取り組みは放置ではなく見守りです。

放置とは意に介さずに置いておくこと。赤ちゃんがうんちをしたり空腹を訴えてもお世話しないのは放置(育児放棄)にあたります。

一方で、おむつは汚れていないか・お腹はすいていないかの確認や、眠気のくる時間帯、室温など寝室環境の条件をすべて整えた上で行うネントレは放置ではなく「見守り」にあたります。

よく「ネントレをするとサイレントベビーになってしまうのではないか?」というご心配の声もありますが、それも誤解です。

サイレントベビー(何も訴えない子)というのはそもそも医学用語ではないのですが、ネントレをして親への信頼をなくして何も訴えない子になるのではなく、一切お世話をしてもらえない、呼んでも応えてもらえない経験を積み重ねた先に、そういった子になってしまう可能性があるということになります。

一般に家庭でお世話している中で、ちょこっと赤ちゃんのことに手が回らなかったり、ねんね上手にするために泣かせる、ということではサイレントベビーになることは考えづらいです。

ネントレで泣かせることに悪影響はある?

そうはいっても子どもに悪影響なのでは?というご心配もあるかと思います。しかし、ネントレが赤ちゃんの心の成長に悪影響を与えないことは医学研究によって証明されています。

まず、2006年のペンシルベニア小児病院の研究で、ネントレについての医学論文をまとめて解析したものがあります。その結果、52個の研究のうち49個では夜泣きや寝つきの悪さの改善に効果があったという結論が出ていて、その効果が証明されています。残り3つの研究では、効果も無かったが、悪影響も無かったという結果になっていました。

つまりネントレで子どもに悪影響があったという論文は見つかっていない、という結果だということがわかります。

また、2012年のオーストラリアの研究では7ヶ月の時点で睡眠に問題を抱えていた326人の子どもたちを、ねんねトレーニングを行うグループとそうでないグループにわけ、愛着に差が出るのか5年間追跡しました。

結果は、どちらのグループも問題行動やストレスレベルに差がなかったという結果になりました。長期的にも悪影響はなかったということです。

親が忙しいからネントレをするのか?

少し前に子育てをしていた世代にとっては

「子どもを産んだのだから、夜泣きで眠れないなどは当然。そんなことも今時の親は耐えられなくて、赤ちゃんを泣かせてまでトレーニングするのか?」

そんなふうに感じることもあるかもしれません。

しかし、ここには誤解があると私は思っています。

私がこれまで1800人以上の方のご相談にのってきた中で、全ての方がお子さんのことを大切に考え、お子さんのことを想って、ご相談にきてくださっていました。

誰も「この寝ないモンスターを私のために寝るようにさせよう」と考えているわけではなく、寝不足でイライラしてお世話もままならない自分の現状を悔いて、なんとか変えたいと願って、ご相談に来られる方ばかりです。

親が寝不足でイライラすることは、子どもにとって良い影響とは考えにくいものです。どうしてもネガティブ思考になり、イライラしやすくなりますし、判断能力が鈍って安全面にも影響が出てしまいかねません。

つまり、「ぐっすり寝よう」と思うことは決して怠惰なことではなく、むしろ家族のために必要なことなのです。

おわりに

ネントレは怖いものでも、やってはいけないものでもありません。

泣かせないネントレもありますが時間はかか流ことが多いものです。泣かせて早く解決することもあって、それが悪影響になるわけではなない、ということをネントレする際の知識としてもっておけば、迷った時の選択肢となるのではないでしょうか。

とはいえ、ネントレにはきちんとした前準備が必要です。動画でも解説しているのでご確認くださいね。

ネントレは自信をもって夫婦ともにで取り組むことが大切です!

さまざまな方法があり、YouTubeの動画でもいくつか解説しているので、取り組もうかな?と思う方は、ぜひご自身に合ったものを見つけてみてください。

そして、周りの方は盲目的に否定せず、親のエゴとも思わないでいただければ幸いです。ぐっすり眠れることは、赤ちゃんにとっても幸せなことです。なにより、親の機嫌がよくなることはハッピーなことのはずですからね。

乳幼児育児アドバイザー

乳幼児育児アドバイザー。小児スリープコンサルタント。0-3歳モンテッソーリ教師。株式会社mominess代表。YouTube「ねんねママのもっとラクする子育て情報局」やInstagramなどで乳幼児の育児に関する発信を続け、2024年現在、SNSの総フォロワーは19万人超。運営する「寝かしつけ強化クラス」では月間200問以上の睡眠に関する質問回答を行っている。著書に『すぐ寝る、よく寝る 赤ちゃんの本』『〇✕ですぐわかる!ねんねのお悩み消えちゃう本』がある。

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