【パリ】3度めのロックダウンでもサクラ咲く 植物園の名桜「白妙」満開
新型コロナウイルスの感染拡大はおさまらず、フランス本土で4月3日夜から3度めのコンフィヌモン(ロックダウン)が行われることになりました。
3月20日からはすでにパリ首都圏を含む一部の県で行われていたのですが、その後も新規感染者数が6万人に迫る日があったり、ICUの占有率が100%になるなど第3波の勢いは止まらず、3月30日の大統領演説で全国拡大が発表になりました。
一部地域だけの措置で抑えられなかった理由は、英国種とよばれる変異種の感染力が強いこと。新規感染者のうち8割近くがこの英国種によるもので、重篤患者の44%が65歳以下と若い世代も重症化しやすいことが懸念されています。
緩やかなロックダウン
ところで、一口にコンフィヌモン(ロックダウン)といっても、1年前とはだいぶ状況が違います。カフェ、レストラン、美術館や映画館、そして一般の商店も休業というのは前回と同じですが、食料品店、薬局に加えて、書店、美容院、花屋さんも例外として営業が認められることになりました。
そしてなんと言っても大きな違いは、自由な外出の範囲。昨年の春には自宅から1キロ、1時間以内しか認められず、取り締まりが厳しかったせいもあって、パリの中心部はゴーストタウンのようになっていました。けれども今回の場合、6時から19時までは10キロ圏内、時間無制限で外出ができるので、人が消えてしまった街という雰囲気はありません。
思えば1年前は公園も閉鎖されていましたが、今回は公園やセーヌの岸辺も開放されているので、思う存分散歩をすることができます。自由に散歩する。そんなごくあたりまえのことが去年の春は叶わなかったのです。
パリのような都会に暮らしていても、息が詰まるような気がしないと筆者が感じる最大の理由は、街の中心をゆったりと流れるセーヌ川、そして大きな公園やブーローニュの森などが身近にあって、日々季節を感じられることです。
気候がどんどんよくなってくるこの時期はとくに、街の中心にいても緑や花の成長が手にとるようです。マロニエの芽が膨らみ、水仙、レンギョウ、木蓮の花が次々に咲いてゆくのを、パリの人たちはそれぞれのお気に入りの場所で楽しむのです。
パリっ子に親しまれる日本の桜
桜もパリの春を彩る花です。市内のあちらこちらに、さまざまな種類の里桜、八重桜があ花を咲かせますが、なかでも多くの人達が今か今かと開花をうかがう銘木があります。それは植物園に咲く「白妙」。1960年頃に植えられたもので、まるで龍が地を這うように枝を伸ばした姿が圧巻です。
もともとは王立の薬草園として1640年に開園した植物園。現在は23ヘクタールあまりの敷地に、自然史博物館、鉱物・地質博物館、そして動物園なども点在しています。市民の憩いの場所というだけでなく、学術研究の役割を担う場所なだけに、園内の樹木には、種目、名前などを明記したプレートがつけられています。
「白妙」には「日本の桜、里桜グループ、«Shirotae》」と説明されているほか、横に「Arbres Remarquables(傑出した木)」というもうひとつのプレートも添えられています。これは、樹齢、形状、歴史的価値などから特筆すべき樹木を認定する機関によって付けられたもので、「白妙」はその姿かたちから、フランスの専門家たちも認める「傑出した木」とされているのです。
わたしは3月下旬に何回か植物園に出向いて「白妙」の様子をうかがっていましたが、まるで初夏のような暖かさになった30日に、ほぼ満開の姿を愛でることができました。
1年前には近づくことすらできなかった桜。その満開に居合わせることができたのは、一時帰国がなかなか叶わない筆者にとってひとしおの思いがありますが、周りにいるパリの人たちの様子をみても「白妙」はやはり特別な存在のようです。
乳母車に乗っている赤ちゃんでも、よちよち歩きの子供でも触れられる花と一緒に記念撮影をする家族、スマホに全容をとらえようとする人たち。そんな光景のなかにいると、ことしもこの花を見ることができたとしみじみする気持ちや、花に寄せて人生の節目を思い出すことは、日本人に限らず、この国の人たちにも共通のものなのだと感じさせてくれます。
※開花から満開までの「白妙」は、こちらの2本の動画からもご覧いただけます。