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「誰がオカンじゃ!」表情筋が痛くなるほど振り切りゴリラのマネも。美貌の久間田琳加が片想い役で新境地

斉藤貴志芸能ライター/編集者
(C)中原アヤ/集英社(C)2023「おとななじみ」製作委員会

恋愛ドラマのヒロインが続く久間田琳加がW主演する映画『おとななじみ』が公開される。幼なじみに長すぎる片想いを続けている役で、9年伸ばしていた髪を20cm以上切って臨んだ。「non-no」でのエレガントなモデルぶりとは裏腹な変顔やオーバーアクションも見せて奮闘。「殻を破って違う面を見せたかった」という。

自分にない要素を集めて作っていきました

――恋愛ドラマの主役級が続いていましたが、撮影時期で言うと『おとななじみ』が先立っていたんですよね。

久間田 そうです。去年の5月に撮りました。

――念願の少女マンガの実写化作品ということで、演じた楓役は自分に合いそうな感じもしました?

久間田 楽しみではありましたけど、原作を読ませていただくと、楓は天真爛漫で動きも大きくて表情豊か。自分にある要素が少ないように感じて、ちょっと不安がありました。魅力的すぎる女の子だから、ちゃんと演じることができるのかどうか。

――その不安はどう解消していったんですか?

久間田 準備期間のリハーサルのとき、私はラブコメが初めてだったので、監督と一緒に楓の要素を集めて作っていく感じでした。序盤のシーンで、監督がサクッと「ここは楓の変顔の見せどころ」と言ってくださって、すごく吹っ切れました。

――モデルとして活躍されている琳加さんには、変顔のイメージはありませんでした。

久間田 仕事的にはタイミングがなかっただけで、抵抗はなかったです。この作品で髪も20cmくらい切りましたし、殻を破るために「全然やりたいです!」と言ってました。

顔も体も動かしまくって倒れ込むように寝る日々でした

ラブコメの名手・中原アヤの大ヒットマンガを実写化した『おとななじみ』。青山春=ハル(井上瑞稀)と加賀谷楓(久間田)は4歳から隣りに住む幼なじみ。楓は小さい頃からハルを想い続けているが、気づく様子がない。だらしがないハルに楓はつい世話を焼き、オカン化していた。

――ハルを朝に起こしに来て怒るシーンでは、ゴリラのマネをしていましたが、鏡の前で練習したそうですね(笑)。

久間田 はい、やりました。どうやったらゴリラ感を出せるか。本物のゴリラの画像を検索して、いっぱい見て「ほお、こうか」と(笑)。監督とも話し合って、ポーズも声の出し方もたくさんリハーサルしました。動きを大きくして、振り切った感じですね。

――そういう練習をしていると、自分で笑っちゃいませんでした?

久間田 没頭していて、自分で笑うことはなかったです。「何か違うな。もうちょっとこうかな」みたいにやっていました。

――「誰がオカンじゃ!」とか言うときも、表情をオーバーに?

久間田 そうですね。表情筋を動かすように意識していました。普段こんなにも表情筋を使っていなかったのかと、気がつきました。リハーサル期間は体も顔も動かしまくったので、夜は倒れ込むように眠る日々でした。

――そこまでやったんですね。

久間田 大きく動いたので、全身の筋肉痛がすごかったです(笑)。エネルギーもすごく消費している感覚で、チョコレートとかで糖分をたくさん取りました。

キュンキュンしても一瞬で現実に戻されて(笑)

――別の幼なじみの伊織(萩原利久)と美桜(浅川梨奈)の前で、「デートしてみるべきか?」とひとり芝居みたいなことを始めるシーンもありました。

久間田 あそこも監督と動きを付けながら撮りました。でも、撮ったのが後半で、もう恥ずかしさは何もない感じでした(笑)。

――一方で、ハルに前髪を「いい感じじゃん」と言われてテレたり、乙女な顔も見せています。

久間田 ハルが急に期待させるようなことを言うので、ドキッとしてしまうんですよね。狙ってない感じの不意打ちはやっぱりいいなと(笑)。そこは乙女になりますけど、すぐいつものオカンの顔に戻ってしまうことが多くて。

――感情が忙しい役でしたか。

久間田 本当に、演じていてジェットコースターみたいな感じでした。

――相合傘をしながら、喧嘩になったり。

久間田 キュンキュンしていたのに、ハルが一瞬にして壊すから(笑)。ドキドキするだけでなく、一気に現実に戻されて「エーッ⁉」となるのは、普通のラブコメとはひと味違う気がしました。

年月が積み重なった分、想いが伝えられなくなって

――楓はハルにずっと片想いをしています。ラブコメでは片想いを楽しむ話もあったり、琳加さんが主演した『ブラザー・トラップ』では他の役が「片想いなんて不毛なだけ」と言ってました。琳加さんは片想いにはどんなイメージがありますか?

久間田 この作品だと、20年という長さがどんな感じだろうと思いました。どんどん片想いの年月が積み重なった分、気持ちを伝えるのも難しくなってしまったのかなと。そのひと言を言ったら、一番の友だちという関係すらなくなってしまうかもしれない。だから、伝えるなら大きな決断をしないといけなくて。しかも、ハルは真面目なトーンになる瞬間があまりないから、そういう隙を与えてくれない。でも、すごく好きという。苦しいけど楽しい。どっちの感情もあると感じました。

――楓は24歳ですが、撮影当時の琳加さんは21歳。幼い頃からずっと好きという年月の長さは、なおさらイメージしにくかったかもしれませんね。

久間田 私だったら、ほぼ生まれた頃からに当たるので(笑)。自分が芸能界に入った時期さえ、もう「いつのことだっけ?」という感覚なので、20年はすごく長い気がします。でも、そんなに長い間、いろいろあっても想い続けるのは素敵なことだなと思います。

――自分の4歳の頃は覚えていますか?

久間田 たくさん記憶があるわけではないですけど、当時は海外(フランス)に住んでいて、クラシックバレエを始めた頃でした。バレエが楽しかった感覚はあります。

――フランスならではの経験もしました?

久間田 暗くなるのが遅くて、カーテンを閉めても光が差し込んできました。日本のエンタメをすごく恋しがっていて、『プリキュア』のDVDやグッズを、祖母に日本から送ってもらっていた記憶があります。

お互いがいないとダメなのがかわいく見えました

――琳加さん目線でも、ハルには楓が4歳からずっと好きでいるくらい、惹かれるものがあると思いますか?

久間田 悩んでいるときに、パッとポジティブなことを言ってくれる。いつでも手を差し伸べてくれるのは、すごくいいなと思います。

――「不器用だけど、いつもやさしい」という台詞もありました。

久間田 同い年だけど、たまに年上っぽく頼れるところがあって。普段はだらしなくても、一緒にワチャワチャするだけでなく、男らしさを感じるときもあるのが、ちょうどいいバランスかもしれません。

――オカンとして世話も焼きたくなると?

久間田 お互いがいないとダメな感じが、客観視するとかわいらしく見えます。好きな人のために一途なところは、楓のポイントかなと思いました。

――その一途さは、琳加さん自身にもあるもの?

久間田 20年間、片想いをするような一途さは経験ないです(笑)。でも、楓はすごく応援したくなります。女子としても、あんな幼なじみは欲しいです。

撮影に入る前に唐揚げを作ってみました

――琳加さんもオカンばりに掃除や洗濯はするんですか?

久間田 やります。唐揚げを作るシーンもあったので、ちょっとドキドキしましたけど、いい感じにできました。

――特に手際を練習する必要はなかったと。

久間田 撮影に入る前に、家で何度か唐揚げを作ってみました。作ったことはありましたけど、家で揚げ物は難しくて、ちょっと遠ざけていたんです。楓ほどうまくは作れないかもですけど、唐揚げは大好きで、衣をいっぱい付けます(笑)。

――楓はハルへの不満を込めながら、包丁をすごい勢いで打ち付けたりもしてました。

久間田 あれはすごかったです(笑)。あんな大きい包丁を持ったこと自体なくて、エネルギーを使って新鮮でした。

髪を切ったら気持ちが切り替わって

――『おとななじみ』の撮影では、少女マンガ原作の醍醐味も味わえました?

久間田 やっぱり嬉しかったです。原作もののお話をいただいて、プレッシャーはもちろんありましたけど、髪を切るきっかけにもなったので。自分の中で、忘れられない作品になるだろうなと思います。

――9年間伸ばしていた髪を切るのに、悩みはしませんでした?

久間田 なかったです。できる限り原作の楓に寄せたかったので。切るのは楽しみのほうが大きかったんですけど、最初はどこまで切っていいのか、美容師さんもわからなくて、3日くらい通いました。切りすぎると怖いから、初めはちょっと長めにしておいて、次の日にリハーサルで監督たちに見せて、「もうちょっと切ってください」と。その日にまた美容院に行って、何段階かに分けて短くしていきました。

――形から楓に入れましたか?

久間田 気持ちが切り替えられたのは大きかったです。「よし、やるぞ!」という心意気になれました。

自分に足りない部分を探して変えていくように

――楓は弁当屋での仕事を通じて、「大人になりたくなかった」から「大人も悪くないかも」と考えが変わっていきました。

久間田 揺れるのはわかります。私がそういう気持ちに一番なったのは、2年前の成人式のときですね。まだ20歳が成人で、大人になることに嬉しさも寂しさもあって。今はもう22歳で年齢を重ねるしかないですけど、当時はまだちょっと甘えていたいところがありました。

――精神的には早くから大人だったわけでもないですか?

久間田 お仕事を始めたのは早かったんですけど、同年代も今年で大学を卒業して社会に出たので、私も大人になれていたらいいなと思います。

――楓のように「こんな自分を変えたい」と思ったこともありますか?

久間田 毎年、目標を立てるときに「ここが足りなかったな」と思います。「もっと積極的に共演者の方と話せば良かった」とか「ネガティブなところを変えたい」とか。そういう部分を見つけるようにもしていて、自分に満足しすぎず、変えていく気持ちを持っています。

――仕事にやり甲斐は感じてきたんですよね?

久間田 専属モデルをさせていただく雑誌が変わったり、ポイントごとに悩むことはあっても、好きなことを仕事にできている感覚はいつもありました。

ラブコメでここまでやったと知ってほしいです

――モデルから女優に活動を広げてからも、順調に来ている感じですか?

久間田 去年はとにかく必死にしがみ付いた1年でした。いろいろな現場を経験したい想いで頑張って、チームによって全然色が違うこともわかって。『おとななじみ』では同世代のキャストの皆さんとやさしいスタッフさんに囲まれて、楓を演じ切ることができました。

――女優として自分が変わった転機の作品もありますか?

久間田 『おとななじみ』がそういうきっかけでした。すごく楽しかったので、今でも写真を見返すときがありますし、仲間と切磋琢磨したことを一番感じられて。よりチームで映画を作る感覚もあって、女優業をもっと頑張りたい気持ちになりました。

――最初に出たように、自分の殻も破れて。

久間田 この作品で絶対違う面を見せたいと思っていました。「ラブコメでここまでやりました!」というところを、皆さんに知ってもらえたら嬉しいです。

――試写を観て、自分のコミカルな演技で笑ったりもしました?

久間田 客観視はできなかったです。どんな感じになっているのか、不安のほうが大きくて。カフェ店主役のアン ミカさんと絡むところは笑ってしまいましたけど、もう1回映画館で冷静に観たいです。

切り替えの大事さを1年で感じました

――最近の他の作品だと、『君に届け』での主人公・黒沼爽子の親友の矢野あやね役は、いつもの琳加さんと雰囲気が違っていて印象的でした。

久間田 ギャルの役で、見た目からいつもと違っていて。ギャルとは何ぞやというところから、自分で調べました。あの時代に流行っていたものを検索したり、自分の学生時代でも「こういう子はいたな」と思い返してみたり。あれも有名な原作があるので、よく読んで、あとは共演の南沙良ちゃん、中村里帆ちゃんと話し合いながら作っていきました。

――役幅が広がってきているようですね。

久間田 アネゴっぽい感じが増えてきました(笑)。『おとななじみ』も『君に届け』も人の世話を焼く役だったので。

――演技で大事にするようになったことはありますか?

久間田 切り替えはすごく大事だなと、去年1年で感じました。ひと作品終えたらリフレッシュして、次の作品の準備をする。時間の使い方を工夫するようになりました。

――リフレッシュのために定番ですることも?

久間田 とにかく好きなことをします。食べることもそうですし、撮影期間中はなかなか友人と会えないので、連絡したり。観たかったドラマや映画を観たりもします。

原作ものを再現できたら何より嬉しいです

――琳加さんは日ごろから美容のためにいろいろ気を配るそうですが、演技力の向上のために日常で意識していることもありますか?

久間田 モデル中心だった頃より、作品をたくさん観るようになりました。しかも視点が変わって、ただ感動したとかだけでなく、何か得られるものがないか探しています。

――以前に『きみに読む物語』がずっと好きという話をうかがいましたが、最近刺激を受けた作品というと?

久間田 『逆転のトライアングル』は笑える要素もある中で、すごく考えさせられる映画でもあって。ああいうふうに最後にどうなるか予想できなくて、どう捉えればいいんだろうという終わり方をする作品にも、挑戦してみたいと思いました。

――それはそれとして、『おとななじみ』のようなラブコメのヒロインも琳加さんはすごくハマりますが、極めたい気持ちもありますか?

久間田 個人的に好きなジャンルなので、チャレンジできるなら、させていただきたいです。何よりマンガが大好きなので、原作もののお仕事は楽しくて! 自分がキャラクターをちゃんと実写で再現できたら、こんなに嬉しいことはありません。

Profile

久間田琳加(くまだ・りんか)

2001年2月23日生まれ、東京都出身。

2012年に「nicola」のモデルオーディションでグランプリ。2017年8月から2022年3月まで「Seventeen」、2022年6月から「non-no」で専属モデル。女優としてドラマ『マリーミー!』、『青春シンデレラ』、『ブラザー・トラップ』、『ながたんと青と-いちかの料理帖-』、『君に届け』などに出演。5月12日公開の映画『おとななじみ』、9月1日公開の映画『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』にW主演。

『おとななじみ』

監督/髙橋洋人 脚本/吉田恵里香 原作/中原アヤ

出演/井上瑞稀(HiHi Jets/ジャニーズJr.)、久間田琳加、萩原利久、浅川梨奈ほか

5月12日より公開

公式HP

(C)中原アヤ/集英社(C)2023「おとななじみ」製作委員会
(C)中原アヤ/集英社(C)2023「おとななじみ」製作委員会

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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