本場を味わった新星
拓殖大学3年次に全日本王者となり、2024年3月に同校を卒業した横山葵海(あおい)。7月7日のプロデビューは、2ラウンドKO勝ちを収めた。
ワタナベジムは非凡な才能を磨くべしと、今回OPBF東洋太平洋ライト級チャンピオンの宇津木秀に同行させた。9月2日から6日まで、ラスベガスでミニキャンプを張ったのだ。
当地でイスマエル・サラスの指導を受けた。5日間の強行日程を終えた横山は振り返る。
「一瞬でしたが、ホンマに濃かったですね。合計8ラウンドですが、WBCフライ級4位のアンジェリーノ・コルドバらとスパーリングが出来て良かったです。ラスベガスキャンプは、大正解だったと心底感じています」
横山はサラスにそのポテンシャルを評価された。
WBAミドル級チャンピオンのエリスランディ・ララ、WBC世界スーパーライト級王者であるアルベルト・プエジョらと同じ空間で汗を流した新鋭は話す。
「日本のボクサーは一般的に攻撃を軸に練習しますが、こちらのトップ選手はシャドウボクシング一つとっても、まずディフェンスを意識します。そこが新鮮でした。驚きでもありましたね。自分もそうしなければいけないと痛感しています。
ララもそうですが、サラスさんのジムはキューバの選手が多く、体の柔らかさや膝の使い方など参考になりました。そして皆、激しく動いても息切れしないんです。また、パンチをもらわない距離にポジションを取るのが巧みですね。彼らにとって、アメリカはアウェイ。当たり前のことですが、敵地で戦うにはメンタルの強さが求められます。練習時から、緊張感を持ち、高い集中力で臨んでいるところが印象的でした」
サラス、そしてララ、あるいは今回、横山が出会ったキューバ人ファイターたちは、ボクシングで身を立てるために祖国を離れ、亡命した面々だ。もしリングで成功を収められなければ、彼らに帰る場所は無い。だからこそ、ボクシングに懸ける思いは並々ならぬものがある。23歳の若者は、その姿から刺激を受けた。
「今回、サラスさんにスパーを見て頂き、パンチを打った後の体勢、足の幅が広過ぎること、バックステップに頼り切りになっているので、サイドステップも使えとアドバイスされました。すぐにでも、またラスベガスで練習したいですが、まずは日本で反復練習です」
期待の新星はプロ第2戦で何を見せるか。