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【バスケW杯】順位決定戦に回った日本のパリ五輪への道。ここから「も」勝負!

小永吉陽子Basketball Writer
8月31日からの順位決定戦でアジア最上位を目指す日本(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

ワールドカップは五輪予選を兼ねた大会

 男子バスケットボール日本代表の指揮官、トム・ホーバスHCは一貫して大会の目標を「アジア1位になってパリ五輪の出場権を得ること」と言い続けてきた。

 4年に一度の世界ナンバーワン決定戦であるワールドカップは、前回2019年大会から32ヶ国が出場する大会へと規模を拡大し、同時にオリンピック予選を兼ねた大会となった。

 ワールドカップに参加しているアジア大陸の6チーム(イラン、中国、ヨルダン、日本、フィリピン、レバノン)のうち、最上位のチームがパリ五輪の切符をつかむ仕組みだ。前回大会(2019年)はイランと中国が2勝して同率となったが、得失点差でイランが上回って東京五輪のチケットを勝ち取っている。アジア、オセアニア、アフリカ大陸にはワールドカップでの最上位チームに五輪出場権が与えられるが、アメリカとヨーロッパ大陸は上位2チームに与えられる。

 日本はワールドカップ2戦目のフィンランド戦で待望の1勝を上げた。世界舞台での1勝は、2006年に自国開催した世界選手権でパナマに勝利して以来、17年ぶりの歴史的勝利だ。98点というハイスコアで勝利した点でも、これまでより成長を感じさせる。ドイツとオーストラリアというメダルを狙う強国には敗れたため、2次ラウンド進出は断たれて17~32位決定戦(以下、順位決定戦)に回ることになったが、「アジア1位になって五輪出場」という目標があるため、ここからが本番…いや、ここから「も」勝負であり、最後まで落とせない試合が続く。

<パリ五輪出場権の内訳:12チーム>

アメリカ大陸…W杯上位2チーム

ヨーロッパ大陸…W杯上位2チーム

アジア大陸…W杯上位1位チーム

オセアニア大陸…W杯上位1チーム

アフリカ大陸…W杯上位1位チーム

世界最終予選(2024年五輪直前に開催)…4チーム

開催国…フランス

※【東京五輪開催国枠はどうやって決まった?】

日本は東京五輪のホスト国だったが、簡単に開催国枠をもらったわけではない。2019年ワールドカップの成績や成長ぶり、強化内容、日本協会のガバナンスなどがFIBAセントラルボード(中央委員会)によって総合的に審査され、開催国枠を得た。

強い気持で牽引するリーダー渡邊雄太
強い気持で牽引するリーダー渡邊雄太写真:YUTAKA/アフロスポーツ

順位決定戦は「グループ内順位」が優先される

 日本は順位決定戦で、8/31(木)にベネズエラと、9/2(土)にカーボベルデと対戦する。順位決定戦の試合方式は、E組3位の日本と4位フィンランド、そして同じ沖縄アリーナで試合をしたF組3位のカーボベルデと4位ベネズエラが「グループO」となって17~32位の順位を争う。ここでは1次ラウンドの勝敗も得失点差も引き継ぐため、1次ラウンドで対戦したチーム以外と2試合することになる。

 順位決定戦のルールで注意したいのは、アジア全6チーム(日本・イラン・中国・ヨルダン・フィリピン・レバノン)の中で成績を上から並べて最上位を競うわけではない、ということだ。順位の決め方は振り分けられたグループ内での順位が優先となる。いくら勝敗や得失点差で上回っても、グループ順位が上のほうがアジア上位となる。順位決定戦のグループ分けと1次ラウンドでの勝敗数は以下の通りで、日本はグループOの1位からスタートする。

<順位決定戦グループ分け:スタート時の順位>

FIBA公式サイトより
FIBA公式サイトより

FIBA公式サイトより
FIBA公式サイトより

順位決定戦で2連勝すればパリ五輪確定

<グループ内順位の決め方>

 勝利数が一番多いチームがグループ1位。グループ内で勝敗数が並んだ場合は、2チームならば当該国同士の勝敗の結果、3チームならば当該3チーム間の得失点差で決まる。この条件はどのFIBA大会でも同じ決め方である。

<17~32位決定戦 全体の順位の決め方>

グループ1位→ 17 - 20位

グループ2位→ 21 - 24位

グループ3位→ 25 - 28位

グループ4位→ 29 - 32位

 グループ内の順位が決定したあとは、上記のルールに従って全体の順位をつける。たとえば、日本がグループOで1位であれば、他グループの1位同士の成績比較となり、1次ラウンドから引き継いだ(1)勝敗(2)得失点差(3)総得点(4)FIBAランキングの順によって17~20位を決定する。以下、同じ順位の決め方で、グループ2位となれば21~24位、グループ3位なら25~28位、グループ4位なら29~32位となる仕組みだ。

 1次ラウンドの勝敗や得失点差は引き継いでいくので、アジア内で唯一、1勝している日本は一歩リードしている状態から順位決定戦がスタートする。日本は2連勝すれば計3勝になるのでグループ1位になり、かつ、グループ1位同士の成績比較になっても、他のアジア勢より勝敗数・得失点差で上回わるので五輪確定。計2勝や1勝の場合は他のアジア勢の結果次第だ。

 ただし、何度も言うが、グループ内の順位が優先される仕組みなので、いくら日本が勝敗や得失点差で上回っても、グループ内順位が上のほうがアジア上位となるので注意したい。日本より勝敗数が下のチームでも、グループ内で三つ巴になって勝敗が並んだ場合は、当該チーム間の得失点差によって順位が上がるケースが出てくるということは頭に入れておきたい。

 日本にとって注視したいのは、アジア勢がつぶし合いをするフィリピン×中国の「グループM」とイラン×レバノンの「グループP」の動向だ。この2試合はアジア勢が必ず1勝をマークするので、日本のライバルとなる。ただ、アジア勢同士の試合は9/2(土)に組まれているため、その前に8/31に決まるケースもある。以下の条件をクリアすると、8/31(木)に日本のグループ2位以上、他のアジア勢のグループ3位以下が確定し、日本の五輪出場が決定する。

8/31に日本の五輪出場が決定するケース

■日本がベネズエラに勝利 

■日本以外のアジア勢が敗れる 

■カーボベルデがフィンランドに勝利、またはニュージーランドがメキシコに勝利

非常にわかりにくいので、これらの条件を言い換えると

■順位決定戦に回ったチームで、1次ラウンドで1勝をあげている8チーム(アンゴラ、南スーダン、エジプト、ニュージーランド、日本、カーボベルデ、フランス、コートジボワール)が8/31に勝利して2勝になった場合は、日本のグループ2位以内が確定し、日本以外のアジア5チームがグループ3位以下になることが決定するため、日本のパリ五輪出場が決まる。

 もっと簡単に言えば、日本は連勝すれば計3勝となって文句なしでオリンピックの切符を得るので、他国のことは考えず、目の前の2試合に勝利すればいい。

残り2試合もチーム一丸で戦う日本
残り2試合もチーム一丸で戦う日本写真:YUTAKA/アフロスポーツ

アジアのライバルたちの現状

 今大会、1次ラウンドを突破したチームはアジアにはなかった。組み合わせが決まった時点では、フィリピンの組み合わせが有利なように思われた。

 ワールドカップの組み合わせは、FIBAランキング順にポット分け(POT1~8)をして抽選をするが、『開催国シード』を得たフィリピンは『POT1』に振り分けられた。その結果、フィリピンはランキング上位との対戦を避けることができた。対して日本はランキング通りに『POT7』に振り分けられたため、『死の組』と呼ばれる組に属した。

 共催大会でありながら、フィリピンだけがPOT1に入った理由についてFIBAは「決勝トーナメント開催地であるため」と示している。この件については、ホーバスHCも不満で、組み合わせが決まったときに「開催国枠がフィリピンになったのはしょうがないことだけど、FIBAランキングはフィリピンのほうが低い(日本36位、フィリピン40位)。当然フラストレーションはある」と正直な気持ちを吐露していた。

 しかし蓋を開けてみれば、フィリピンは1次ラウンドの3戦すべてを接戦で落としており、ヘッドコーチが変わって半年足らずの中国はチームコンセプトが定まらず、絶対的司令塔の欠場やセンターの怪我などが響いている。

 開催国のフィリピンは死に物狂いで戦い、チーム作りの過程である中国は順位決定戦では上昇していく可能性もある。アフリカ勢も五輪出場権がかかっている。どこの国も五輪切符の可能性を残しているため、厳しい戦いになることは間違いない。ただ、日本は『死の組』に入ったことで、強豪国に揉まれて大会中も成長している。そうした、確実な手応えとブレない目標へのモチベーションの高さが選手たちの自信となっている。順位決定戦では、2勝をもぎ取ることで歴史を切り拓いていきたい。

日本代表のキャプテン富樫勇樹
日本代表のキャプテン富樫勇樹写真:YUTAKA/アフロスポーツ

 最後にパリ五輪に向けて「ここからが勝負」と意気込む選手たちの声を紹介したい。

「自分はドイツとフィンランド戦でなかなかシュート入っていなくて、自分にできることはそれを切り替えてシュートを打ち続けることだったので、オーストラリア戦ではそこの切り替えはできました。ただ、チームの勝利には貢献できなかったので、残り2試合は貢献したい。自分たちにはパリオリンピックの出場権をつかむという目標があるので、チームとしてもう一回準備して、必ずアジア1位になって、パリの切符をつかんでこの大会を終えられるように頑張りたい」(富樫勇樹)

「オーストラリア相手に気持ちを切らさず、後半にアジャストできたのは本当に成長しているところだと思います。実際に後半は勝っていますし、負けたけど収穫にしていい試合です。僕たちには明確な『オリンピック出場』という目標がありますし、誰も下を向いている選手はいません。そこは心配していません。まだ終わったわけじゃないですし、これからも日本のバスケットを続けていきます」(比江島慎)

「ここからが本当の勝負だと思っています。今日(オーストラリアに)負けて落ち込んでいる暇などないですし、次の2試合に勝てば大きくパリに近づきます。1試合たりとも取りこぼしができない中で、日本の戦いを40分できることを、全員が信じられるかどうかだと思います」(渡邊雄太)

Basketball Writer

「月刊バスケットボール」「HOOP」のバスケ専門誌編集部を経てフリーのスポーツライターに。ここではバスケの現場で起きていることやバスケに携わる人々を丁寧に綴る場とし、興味を持っているアジアバスケのレポートも発表したい。国内では旧姓で活動、FIBA国際大会ではパスポート名「YOKO TAKEDA」で活動。

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