【WKBLアジア枠】シーズン開幕!日本で育った10選手が韓国でプレー。韓国は注目の市場となるか。
Wリーグ経験者9名がドラフト指名
韓国の女子プロバスケットボールリーグ『WKBL』(Women’s Korean Basketball League)が10月27日に開幕を迎える。今シーズンは、日本で育った10人の選手が韓国のコートに立つ。
WKBLでは2024-25シーズンより、競技力向上を目指して「アジアクォーター制度」(アジア枠)を導入した。導入初年度の今シーズンは、日本国籍選手に限定し、6月23日に東京都内でトライアウトとドラフトが行われた。その結果、全体1位指名の谷村里佳をはじめ、Wリーグ経験者9名が指名を受けた(メンバーリストは下記参照)。
また、8月に行われた新人ドラフトでは、大阪桐蔭高校出身の洪有純(ホン・ユスン)が全体1位で指名され、岐阜女子高校出身で、松蔭大学でプレーしていた大角地黎(おおかくち れいり)が8位指名を受けている。新人ドラフトは韓国籍選手に限定されているが、両親、祖父母のどちらかが、過去または現在に韓国籍を保有していれば、新人ドラフトにエントリーできる。
なお、アジア枠ドラフトで3位指名の渡部友里奈(Wリーグ前所属:デンソー)が健康上の理由により、契約を解除したことが所属先のハナ銀行から9月30日に発表されている。日韓両国で精密検査をした結果、選手としての活動が難しいと判断されたことが理由だ。一日も早い回復を祈り、再び元気な姿が見られることを願いたい。
今季は全6チームに日本で育った選手が所属することになったWKBL。日本人選手にとって、今後、韓国は注目の市場となるだろうか。WKBLのレギュレーションと所属チームのメンバーリスト、アジア枠でWKBLに入団した8選手の抱負を紹介したい。
【WKBL アジア枠制度】
チームに最大2人保有、1人出場可能。今季は日本人国籍選手のみ。選手の選抜方式はドラフト制。アジア枠選手の給与はサラリーキャップには含まれず、月1千万ウォン(約110万円)支給。各チームに日本語通訳者がつく。契約は1シーズンのみ。
【WKBL 競技日程&試合方式】
■レギュラーシーズン
2024年10月27日~2025年2月22日
6回総当たり各30試合、ホーム&アウェー
■プレーオフ
2025年3月2日~3月11日
上位4チームが進出。トーナメント方式
5戦3勝先勝方式、ホーム&アウェー
■チャンピオン決定戦(ファイナル)
2025年3月16日~3月24日
5戦3勝先勝方式、ホーム&アウェー
【日本人選手所属チーム】
昨季の成績順に紹介。年齢はWKBL開幕の10月27日現在。
ウリ銀行 ウリWON
牙山市:アサン/略称:ウリ銀行
読み方:ウリ銀行ウリウォン
■宮坂桃菜 みやさか ももな
(162センチ/G/30歳/アジア枠6位)
■砂川夏輝 すながわ なつき
(161センチ/G/29歳/アジア枠7位)
KBスターズ
清州市:チョンジュ/略称:KBスターズ
読み方:ケイビースターズ
■永田萌絵 ながた もえ
(174センチ/F/27歳/アジア枠5位)
■志田 萌 しだ もえ
(166センチ/G/23歳/アジア枠8位)
■大角地 黎 おおかくち れいり
登録名:イ・ヨミョン
(162センチ/G/23歳/新人8位)
サムソン生命 ブルーミンクス
龍仁市:ヨンイン/略称:サムソン生命
■平野実月 ひらの みつき
(166センチ/G/26歳/アジア枠4位)
ハナ銀行(ハナ1Qから名称変更)
富川市:プチョン/略称:ハナ銀行
■石田悠月 いしだ ゆづき
(168センチ/G/25歳/アジア枠10位)
新韓銀行 S-birds
仁川市:インチョン/略称:新韓銀行
読み方:シナン銀行エスバード
■谷村里佳 たにむら りか
(184センチ/C/31歳/アジア枠1位)
■洪有純 ホン・ユスン
(179センチ/F/19歳/新人1位)
BNKサム
釜山市:プサン/略称:BNKサム
読み方:ビーエヌケイサム
■飯島早紀 いいじま さき
(173センチ/F/32歳/アジア枠2位)
ドラフト1位 谷村里佳/新韓銀行
(Wリーグ前所属:シャンソン化粧品)
「昨年の夏、ドイツリーグに参戦する前の準備として、今回指名された新韓銀行で3週間ほど練習に参加させてもらいました。そのとき『もしかしたら、アジア枠ができるかもしれない』という話は聞いていたので、『ドイツとの契約が終わり、もしそのときにアジア枠ができていたら挑戦したい』という気持ちになりました。
その直後、ドイツでの開幕直前に膝の前十字断裂を断裂してしまいましたが、怪我を乗り越えて新しい気持ちでチャレンジしたかったのと、日本以外の国でプレーしたい気持ちがあったので、韓国でプレーする決断をしました。私の中ではバスケットに限らず、やったことのないことをチャレンジしたい気持ちが常にあります。
今は怪我から復帰してコートに立てることが何よりうれしいです。個人的な目標は、怪我をする前の自分のレベルに持って行くこと。チャンスを得たからには、自分の膝とバスケットに向き合って、新しいバスケットに挑戦したい。ただ復帰1年目なので、焦らずに気持ちと体をコントロールしながら、チームにアジャストしていきます」
ドラフト2位 飯島早紀/BNKサム
(Wリーグ前所属:アイシン)
「これまでのWリーグを振り返ると自分が納得いくプレーが出せたので、引退しても悔いなくバスケ人生が終われると思い、一区切りつけようと自由契約選手リストに名前を載せました。ただ『今までに経験したことのないことができるチームからオファーがあれば移籍しよう』という思いもありました。そんな中で『まだ続けられる』と言ってもらえたり、体を動かさずに1ヶ月オフを過ごしてみたところ『まだバスケを続けよう』と思えてきたので、いい経験になると思って、韓国で新しい挑戦をしてみようと思って決めました。
ドラフトでは、まさか2番目に呼んでもらえると思ってなかったのでビックリしましたが、指名してもらえたのが本当にうれしかったです。
BNKは昨シーズン最下位でしたが、惜しくも負けた試合がたくさんありました。自分がディフェンスの強度を上げることができれば、もっと面白い展開ができると思うので、ディフェンスを強みにやっていこうと思います。ただ、日本のスタイルやディフェンスローテーションとは違うところがあり、苦戦もしています。徐々に良くなってきているので、韓国のスタイルを理解しながらチームに貢献したいです」
ドラフト4位 平野実月/サムソン生命
(Wリーグ前所属:トヨタ自動車)
「昨年、韓国で開催されたパクシンジャカップと3x3の大会に出場させてもらい、そこでファンとの距離感が近いことや、熱のある大会運営に自分自身の気持ちが高ぶり、韓国で頑張ってみたい気持ちが出てきました。
日本でプレーすることも考えましたが、どっちがワクワクするか、どっちが楽しめるかを考えたとき、『韓国でプレーできる機会があるのなら、自分の気持ちが高ぶるほうでプレーしたい』と素直に思えたので、WKBLのドラフトにエントリーをしました。指名されてまずはホッとしました。
韓国は平均的に大きな選手が多い印象です。チームではディフェンスを強化して、ファーストブレイクに持っていくことを意識しています。個人としてはガードとして頑張りたいので、コミュニケーションがいちばん大事だと思っているので、チームメイトと打ち解けて環境に慣れたいです。得意のディープスリーとペイントアタックからのアシストを見せたい。このチームで試合に出て貢献したいです」
ドラフト5位 永田萌絵/KBスターズ
(Wリーグ前所属:デンソー)
「WKBLにアジア枠ができることはシーズン中に耳にしていて、シーズンが終了して移籍を考えている中で、韓国という選択肢が出てきました。
その理由は、日本以外の国でプレーする価値は絶対にあると思っていて、それが隣の国の韓国だとしても、その経験は自分の人生の中で大きなものとして生きていくと思ったからです。また、昨シーズンはプレータイムが少なかったので、この大きなチャレンジの中で自分らしいプレーをしたいと思い、ドラフトエントリーを決めました。
昨シーズン、KBはシーズン優勝をしたけれど、ファイナルではウリ銀行に負けているので、今年はそのリベンジを果たして優勝に貢献したいです。また、今年は韓国代表のセンター、パク・ジス選手が海外でプレーするために抜けたので、チームスタイルを大幅に変えなければいけない中で、自分もしっかりアジャストして、リバウンドやディフェンスなど泥臭いことを頑張って、スピードを生かしたプレーを表現して、チームに流れをもたらすプレーヤーになりたいです」
ドラフト6位 宮坂桃菜/ウリ銀行
(Wリーグ前所属:山梨QB)
「WKBLのアジア枠の話を聞いたときは、Wリーグの自由契約選手リストを提出した直後でした。移籍先が決まらなければ引退を考えていたので、私にとってはタイミングが良かったのと、いい機会だったので思い切ってチャレンジしてみることにしました。また、以前から日本以外の国でプレーをしたり、生活をしてみたい気持ちがありました。
まさか、1巡目で指名されるとは思わず、ビックリしました。正直、指名されるのは厳しいと思っていたので……。だから、名前を呼ばれたときはすごくうれしかったです。ドラフトは味わったことのない経験で、始まる前からずっと胃が痛かったほどです。
ウリ銀行の練習は厳しいと聞いています。でも、厳しいからこそチャンピオンになったのだろうし、厳しい環境で頑張っていきたい。自分はPGなのでいいアシストをして、仲間にいいシュートを打たせたてあげて、ドライブも試みたい。(元韓国代表のレジェンド)チョン・ジュウォンコーチにガードの技術を教えてもらえることは楽しみです」
ドラフト7位 砂川夏輝/ウリ銀行
(Wリーグ前所属:アイシン)
「海外に挑戦したい気持ちがあったのと、もともと、パッシングから高確率シュートを打つ韓国のバスケスタイルが好きだったので、韓国行きを決断しました。また、ドラフト制度が初めての経験で面白そうだったのでチャレンジしてみました。
けれども、いざドラフトになると、1巡目で名前が呼ばれなかったので、ものすごく不安になりました。1巡目が終わって5分の休憩があったのですが、そのとき『自分は数分後にはどうなっているんだろう…』と不安になっていたら、2巡目の最初に指名されたので本当にうれしかったです。
監督やコーチからは『ウリ銀行は他のチームより3倍練習するし、とても走るチームだから』と言われましたが、だからこそ優勝したと思うので、覚悟して臨みます。自分はサイズが小さいので、ウリ銀行の持ち味である走ることでチームに貢献したいですし、韓国のファンから応援されるような選手になりたいです」
ドラフト8位 志田 萌/KBスターズ
(Wリーグ前所属:シャンソン化粧品)
「自分は『新しいことに挑戦したい』という気持ちでWKBLのドラフトに志願しました。まだ年齢も若いので、挑戦して失敗してもまた新しいことを始めればいいと思ったので、思い切って韓国行きを決めました。正直、指名されるのは厳しいと思っていたので、指名されたときはビックリした気持ちのほうが強くて、うれしい気持ちはあとからきました。
シャンソン時代、KBスターズには何回か遠征をしたり、交流がありました。KBは選手とスタッフの雰囲気が良くて、バスケットに集中できる環境があるチームという印象を持っていたので、指名されてうれしかったです。
自分はWリーグでも経験が少ないのですが、韓国が欲しいのはこれから育成する選手ではなく、即戦力の選手だと思います。アジア枠は1年契約ということを考えると、自分は即戦力になるようにアピールしなければなりません。持ち味のスピードを生かして、韓国にはない日本人らしいプレーをしたいです」
ドラフト10位 石田悠月/ハナ銀行
(Wリーグ前所属:山梨QB)
「SNSを通じて韓国のファンの方から『アジア枠の受け入れがあるよ』と教えてもらい、韓国の文化とバスケに興味があったので、挑戦してみようと思いました。
ドラフトは指名を待っている間の緊張感がすごく大きくて、だんだん頭が痛くなってくる感じがありました。指名されたときは手が震えて、不安な気持ちが一気にほどけていく感じがしました。本当にうれしかったです。指名されたときに韓国語でスピーチをしたのですが、準備をしていなくてその場で考えて話しました。韓国語は韓国ドラマやYouTubeを見続けて覚えたのと、勉強はそんなにしてないですが、一日1時間くらい勉強して覚えました。日常生活に困らない程度には話せますが、知らない単語がたくさんあるので、現地で勉強したいです。
日本では自分の持ち味をあまり出せませんでしたが、WKBLではドライブで強く攻めることを意識したいです。韓国バスケはフィジカルが強いイメージで、トレーニングをいっぱいやるので、私もフィジカル強化をしなければと思っています」
写真提供/WKBL
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