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アクションスターが使うような派手なセラピーは、カウンセリングの現場では使えません。

竹内成彦心理カウンセラー(公認心理師)

こんにちは。
精神医学と性格心理学に詳しい
心理カウンセラー(公認心理師)の竹内成彦です。

今日のテーマは、「アクションスターが使うような派手なセラピーは、カウンセリングの現場では使えません」です。

私は、ほぼ毎日、カウンセリングをしています。
プロの心理臨床家になって、かれこれ26年が経過しています。
そして、カウンセリングの勉強も、30年以上ずっとし続けています。

私は、基本、傾聴を主としたカウンセリングをしているのですが、数年前から、「自分の持ち駒を増やそう」とばかりに、数十万円をはたいて、ある心理療法を習いに行くようになりました。

その心理療法を教える先生は、凄かったです。
「何が凄いか?」って言うと、その先生は、毎回、私たち数十名の受講生の前で、デモンストレーション(お手本)を見せるのです。これには私、非常に感服いたしました。というのは、今まで私に心理療法を教えた先生は、受講生へのダメ出しはするものの、自らお手本を見せるようなことは、ほとんどなかったからです。だから私は、非常に感服&驚愕した…というわけです。

私(竹内成彦)も、何度もカウンセリング講座を開いたことがあるのですが、受講生の前でデモンストレーションを見せたことは、ほとんどないです。

何故、私は、ほとんど見せないようにし続けたかというと、
1.ただ話を丁寧に聴くだけ…という地味で面白みのない療法だったから
2.そもそも隠れたがりの私は、大勢の人から見られることに抵抗があったから。
3.皆の前で下手こいて、恥をかいて信用を失うのが怖かったから。
4.ティーチャーとカウンセラーの2つの役割を、瞬時に切り替える自信がなかったから。です。

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ちなみに、カウンセリングを教えるティーチャーの立場とカウンセリングをするカウンセラーの立場では、使う筋肉の部位が全く違います。たとえば私は、ティーチャーの立場だと、受講生からの質問には、非常にテキパキと答えるのですが、カウンセラーの立場だと、クライアントのからの質問には、質問者に考えさせようとするため、非常にゆっくりとしか答えようとしないのです。

で、話は戻りますが。
私は、オンラインではなく、オフラインで教えてくれる時は、毎回、その先生のいる会場まで足を運んでいました。そんなこんなを続けていたら、さすがに内向的な性格の私にも友達らしき人が出来ます。
ある日、その彼とランチを食べに行った時なのですが、私は彼(私と同じ心理臨床家です)に、思い切って訊きました。「どうですか? 今、習っている心理療法、現場で使っていますか? 使えそうですか?」

すると、その彼は、ニコニコと笑いながら、こう答えました。
「使えないですねえ。○○先生のやっていることは、アクションスターが敵を倒しているようなものですから…、とてもとても…」と。私は、その秀逸な答えに、驚愕しました。「なんて上手な例えなんだろう!」と思った次第です。

そう、私たちが新しく習っている心理療法は、残念ながら、現場ではとても使えないのです。そもそも、実際のクライアントは、そんなにカウンセラーに協力的ではないし、カウンセラー役の〇〇先生は、喋りすぎです。
でも、ショーとしては、非常にいいです。観てる側(特に心理臨床経験の浅い人)は、「スゲエ!」と思うだろうし、「面白い」という感想を持つだろうと思います。

それからというもの、私は、新しい心理療法を教えている〇〇先生が、アクション俳優に見えて仕方がないようになりました。実際の戦いでは、敵の前で絶対にやらないだろうと思われる宙返りをするさまが、アクションスターにそっくりなのです。そして、クライアント役の受講生も、私からは、敵(悪役)に見えるようになりました。そう、前に出る受講生の、主人公であるアクションスターのパンチやキックに当たりにいくさまが、悪役そのものなのです。

舞台に立たない私を含めた大勢の受講生は、アクションをやっている講師の先生と、悪役をやっている受講生のやりとりを観ている、観客そのものだなあと思いました。本当の戦い、本物の武道を観ても、多くの人は、ここまで面白いとは感じないだろうと思います。

脚光を浴びるのが大好きなアクションスターの先生は、カウンセラー役をやっている時、毎回、恍惚の表情を浮かべます。そんな姿を見ていたら、隠れたがりの私には、絶対に真似できないなぁと思いました。
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世の中には、生まれつき、目立ちたがり屋の人と、隠れたがり屋の人と、どっちでもいい人がいて、その比率は、2弱2弱6強です。

私は、一緒にランチに行った〇〇さんに訊きました。
「じゃ、○○さんは、このセミナーに参加したこと、後悔しているのですか?」
すると○○さんは、こう答えました。
「いえ、全然。『面白いものを見せてもらった』と、今も先生には感謝していますよ」

なるほどです。私も先生には、感謝しています。決して強そうには見えない、性格がいいとは言えない先生でしたが、あのアクションスターになりきる姿は凄く、本当に強そうに、性格が良さそうに見えますからね。
私も、その部分に関しては、積極的に真似していきたいと思います。そして私は、クライアントから、「竹内先生は、本当に心のカウンセラーさんですね」と言われるようなカウンセリングをしていきたいと思います。← このあたりは、半ば演技でもいいです。私の性格の優しい部分を、より拡大させてセッションに臨みたいと思います。

新しい心理療法を教えてくれた先生のこと、今も私は、大変に尊敬・感謝しています。何と言っても先生は、誰にも真似できないバク転のような大技を、大勢の人の前で披露することが出来ますからね。
それに比べたら、私は、本当にへなちょこです。クライアントの前で誰にでも出来る話を聞くっていう技を、誰にも負けないぐらい上手に出来るだけですから…。

今後も、見せるカウンセリングではなく、
見栄えの良い凄いカウンセリングではなく、
真にクライアントの役に立つカウンセリングを、
コツコツとクライアントに提供し続けて参りたいと思います。

今日も最後までお読みくださって、どうもありがとうございます。
心から感謝申し上げます。

      この記事を書いた人は、心理カウンセラー(公認心理師)の竹内成彦です。

心理カウンセラー(公認心理師)

1960年、愛知県名古屋市で生まれ育つ。1997年06月、地元愛知でプロのカウンセラーとして独立開業を果たす。カウンセリングルーム「心の相談室with」名古屋 の室長。臨床歴25年、臨床数15,000件を超える。講演・研修回数は800回、聴講者は10万人を超える。【上手に「自分の気持ち」を出す方法】など、電子書籍を含め、20数冊の本を出版している。カウンセリング講座などを開催し、カウンセラーを育てることにも精力を尽くしている。

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