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フィンランド模擬選挙は若者の未来の投票行動につながる民主教育

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事
撮影:Salla Merikukka/Allianssi

2023年4月 2日のフィンランド国政選挙を目前に、現地では若者を対象とした模擬選挙が開催された。

  • 模擬選挙は1960年代にスタート
  • 1990年代からは若者協議会「アッリアンシ」が全国の模擬選挙をコーディネート
  • 2023年の模擬選挙は895の学校や関連機関が参加、投票者は9万435人と過去最高記録を達成

アッリアンシの研修生ユリア・ヴィヒネンさんに模擬選挙について取材した。

今年は何が特別だった?

若者協議会は投票用紙など複数の道具を学校に提供。一部の学校は自分たちで投票箱などを作ることを選んだが、多くの学校は同会が提供したものを使用 撮影:Salla Merikukka/Allianssi
若者協議会は投票用紙など複数の道具を学校に提供。一部の学校は自分たちで投票箱などを作ることを選んだが、多くの学校は同会が提供したものを使用 撮影:Salla Merikukka/Allianssi

  • 過去最高の投票者数を記録
  • 模擬選挙で最も票を獲得した政党は、実際の国政選挙でも(順位は違うが)同じく上位3位に入った(これまでは若者が模擬選挙で投票する政党と、大人の有権者が実際の選挙で投票する政党は異なっていた)
  • Tiktokで最も存在感を放っていた政党は、模擬選挙でも大成功を収めた

上位3位の政党

1位 フィン人党(極右) 18.2%

2位 国民連合党(中道左派) 13.1%

3位 社会民主党(中道右派/サンナ・マリン首相が党首) 13%

Tiktokを活用した政党、若い世代からの支持を集める

カリオ高校での模擬選挙 撮影:Salla Merikukka/Allianssi
カリオ高校での模擬選挙 撮影:Salla Merikukka/Allianssi

筆者コメント:Tiktokを使い大成功を収めたというのは、フィンランドの極右・ポピュリズム政党のフィン人党だ。同党は数年前からTiktokにアカウント開設し、積極的に投稿していた。

他政党は選挙期間が近づいてからTiktokで投稿し始めたが、以前から利用していたフィン人党にはかなわず。新しい党首となった現在の女性党首の人気が重なり、フィン人党は模擬選挙で1位となった。

若者がいるTiktok空間に政党が普段からいることは、重要な戦略だということを証明する結果ともいえる。

参加校が締切日までに結果を提出できるかが課題

撮影:Salla Merikukka/Allianssi
撮影:Salla Merikukka/Allianssi

ヴィヒネンさん「アッリアンシは模擬選挙のコーディーネーターとして動いており、模擬選挙を主催する学校に資料や案内を配布しています。今年は思ったよりもスムーズに進めることができました」

「投票結果は公共局YLEと一緒に発表することにしたので、各学校が結果を提出する締め切り日が厳しかったんです。複数の学校は締切までに間に合いませんでしたが、全体的には上手くいきました」

筆者コメント:北欧諸国では日本のNHKに当たる公共局が模擬選挙の発展に大きく関わっている。

政党や候補者名が書かれた紙 撮影:Salla Merikukka/Allianssi
政党や候補者名が書かれた紙 撮影:Salla Merikukka/Allianssi

大人や教師は手助けするが、介入は最小限に

青年部が生徒の前で討論することもあるが、若者協議会が主催しているわけではなく、模擬選挙とは関係なく討論会が催されることもある。

「教師や大人の介入は少しだけです。若者協議会に連絡して模擬選挙に参加する登録手続き、開催がスムーズにいくための手伝いをしています」

筆者コメント:ノルウェーでは選挙期間中には青年部が校庭や体育館で、討論会「選挙広場」を開催する。ノルウェーに比べて、フィンランドは学校内に青年部にそれほどは招かない印象を抱く。メディアや大人の手助けは必要最低限に、若者を信頼して現場を任せて、後ろから見守るのが北欧で尊重される光景だ。

模擬選挙は重要な民主教育

撮影:Salla Merikukka/Allianssi
撮影:Salla Merikukka/Allianssi

「模擬選挙前には、若い投票者が何にこれから投票するのかを理解するための手助けとして、教師は若者協議会が配布した資料を、政治と民主主義を教えるための教材として使用することが多いですね」

「フィンランドの民主教育において、模擬選挙の重要性は計り知れないほど大きいです。若者が選挙・政党・候補者を知るだけではなく、投票とはどのようなものかを実用的に体験できます」

「投票を練習し、どういうものか想像できるようになれば、若者がいずれ有権者として実際の選挙で投票する行動につながると信じています」

撮影:Salla Merikukka/Allianssi
撮影:Salla Merikukka/Allianssi

Text: Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信16年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。北欧のAI倫理とガバナンス動向。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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