未来の医療を変える!フィンランドの教育革新と人材育成
フィンランドは、なぜ医療分野でのデジタルトランスフォーメーション(DX)を急ぐのか?
その答えの一部は、フィンランド最大級のヘルシンキ大学病院HUSで目の当たりにすることができた。
この施設では整形外科、外傷学、手外科、神経外科の患者が治療されており、希少疾患や重症疾患の治療も、全国的にHUSで集中管理されている。
デジタルトランスフォーメーションが急がれる理由
私たちの訪問先は、ヘルシンキ大学病院の一部であるメイラハティ・ブリッジ病院だ。院内には講義室やカフェも設けられており、広い窓から差し込む日光が病院内を明るく照らしている。
HUSブリッジ病院は、ヘルシンキ大学病院の歴史上でも最大の建設プロジェクトとされ、複数の病院機能が一箇所に統合された。
2023年に新しくオープンしたこの施設は、「ブリッジ」という名前が示す通り、タワーと入院病棟、日帰り診療所を結ぶ機能的な「橋」の役割を果たしている。
医療従事者の現状と対策
魅力あふれるフィンランド最大のヘルスケア・プロバイダだが、医療従事者の人手不足にも直面している。院内を歩くと、患者のいない部屋や誰も歩いていない廊下が目につくことがある。
世界中で共通の課題である医療現場の人手不足は、過労やストレス、燃え尽き症候群が原因で、多くの医療従事者が離職や長期休業を取る事態に至っている。
これに対処するため、ヘルシンキ大学病院は業務配分の再構築や流動性の促進などの新戦略を積極的に採用している。
キャンパスを企業や学生が集うハブに
フィンランドの未来に医療従事者の不足が待ち受けていることを現場の人々は十分に承知している。そのために力を入れているのが、若者の教育だ。その一環として設立されたのが、メトロポリア応用科学大学。
「学生やスタッフは、すべてがリモートまたはデジタルで起こっているときに、どのように操作するかを学ばなければせん」
イノベーション・ディレクターであるミンナ・エロマア・クラプさんは、「テクノロジーが現場を決めるのではなく、人がテクノロジーを使って問題解決する」点を強調した。
だからこそ、現場で的確な決定が下せるように、学生の教育に力を注いでいる。
持続可能な解決策とデジタルヘルスに特化して、学生や関係者だけでなく、ステークホルダー、企業、大学などが集まり、主要な課題を一緒に達成し、解決することができるハブを形成している。
学生のスキルは、本物の学習環境で可能になる
キャンパス内にある「HyMy Village」では、看護、理学療法、口腔衛生士などを学ぶ学生たちが実際に運営に関与しており、医学免許を持つ教員のもと、患者の診療を行っている。この学生運営の施設では医療費も比較的低く設定され、地元市民からの支持も得ている。
大学の役割、学びの場としてのシミュレーション病院
キャンパスにあるシミュレーション病院はフィンランド最大で、国際的にもユニークな施設だ。受付、手術室、分娩室、手術室、集中治療室、救急車まで完備され、病院の状況を安全にシミュレーションすることができる。
同時に、企業はテスト環境に加えて、専門家チームの知識を利用することができる。
国際的な学生と言語の役割
大学での教育においては多くの科目が英語で提供されている。
「フィンランドでは労働力不足が問題となっているため、私たちの大学での国際化は非常に重要です。インド、ベトナム、ケニア、インドネシア、フィリピンなど多くの国から学生が来ています」と、シモ・ムスティラ副CEOは語る。
外国人の参加が多いためにラボでは英語で会話がされているが、もし学生がいずれフィンランドの現場で働くのであれば、患者の安全性を考慮して、現地の言葉であるフィンランド語かスウェーデン語の能力が求められる。そのため学生は言語の勉強もしているという。
フィルソンさん(22歳、フィンランド出身)は看護学を専攻しており、SNSや知人を通じて看護の仕事に興味を持ち、大学で学ぶことを決めた。
「立地や技術、テクノロジーの面で他の学校と比較しても先進的で素晴らしいし、他の人からの評判も良かったからです」と、この教育現場を選んだ理由を話した。
執筆後記
北欧諸国はどの国も自国の福祉制度に誇りを持っている。現在の福祉制度が未来の世代にも継続されることを願っているが、人員不足や高齢化社会の波で、同じ環境を維持することは困難になりつつある。それゆえに、市民からの税金を有効に分配し、教育や医療現場を今から急いで変えていく必要がある。
若い学生たちに充実した学びの場を提供できるように、今、医療も教育の現場も大きなスピードで変化しようとしている。