深い悲しみの向こうに:喪失体験の心理学:三浦春馬さん自殺報道を受けて
■喪失体験とは
喪失体験とは、自分の大切なものを失う体験のことです。
親しい人との死別が、喪失体験の代表です。でも、それだけではなく、たとえば失恋、離婚、失業、引越し、転校、健康を失うことや、ペットの死、好きな趣味やスポーツができなくなることなども、その人にとっての大切なものを失う体験であれば、喪失体験です。
私が今激しいスポーツができなくなっても、あまり喪失感はありません。けれども、プロスポーツの選手や、部活で青春をかけていたような人にとっては、激しい喪失体験になるでしょう。何かを失った時、愛着が強いほど、それは辛い喪失体験になるのです。
大災害では、自分の家族友人との死別もあります。家や職場を失うこともあります。さらに町全体が被害を受けるので、大きな喪失体験になります。
先日新潟県で、FMポートというラジオ局が停波閉局しました。県全域に放送している放送局が停波するのは、全国でも初の出来事でした。多くのリスナーたちが、冗談や誇張ではなく、喪失体験をしました。
毎日熱心に聞いているコアなリスナーだけでなく、時々聞いていたというレベルのリスナーまでショックを受けていました。寂しくて、悲しくて、心にポッカリ穴が開いたような感覚です。
「自分の心がこんなふうになるなんて想像していなかった」と語るリスナーもいました。私たちは、様々な喪失体験を繰り返しているのです。
■俳優三浦春馬さんの自殺報道
今日7月18日、衝撃的なニュースが報道されました。俳優の三浦春馬さんの死亡です。報道によると、遺書のようなものもあり、警察は自殺と見ているということです。
一般の人にとっても、有名人の死亡、ましてや自殺となれば、衝撃的です。さらに、ファンの人たちには、大きな喪失体験になるでしょう。一般の私ですら大きな衝撃を受けましたから、ファンの皆さんの心の健康や、さらにセンセーショナルな自殺報道の後に起こる連鎖自殺まで、心配になるほどです。
喪失体験は、私たちの心に大きな傷を与えます。
家族との死別であれば、誰が見ても大変なことだとわかりますが、芸能人が亡くなるのも、ファンにとっては大きな喪失体験なのです。
<「三浦春馬さん死亡報道と私たちの役割:衝撃を受けている人々のために」>
■喪失体験と心身の症状:回復のために
喪失体験は、心に大きな負担を与えます。あまりに衝撃が強いと、現実感がないほどです。亡くなった方が、夕方家に帰ってくるような気がします。停波閉局したラジオ局に、ラジオのチューナーを合わせたりもします。頭ではもう存在しないことがわかっていても、心が追いつかないのです。
喪失体験のダメージは、心にも体にも行動にも現れます。
深い悲しみ、無力感、後悔、怒りなど、様々な感情が押し寄せます。
食欲不振、消化不良、頭痛など、体の不調もあります。
活発な行動が取れなくなったり、逆にイライラして攻撃的になることもあります。
ただ、これらの症状は、自然なことです。愛し、慣れ親しんできたものを失ったのです。心身が傷つくのも当然です。
このような喪失体験について理解し、心身の症状を受け入れることが、病的悲嘆に陥らないため、またそこからの回復のために必要なことです。
病的悲嘆を放置すれば、うつ病、さらに自殺などの危険性が高まります。
■病的悲嘆とは
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