東京でただ1箇所、「大名屋敷跡地に建つマンション」を購入できる場所とは
東京都内には、大名屋敷跡地と呼ばれる場所がある。江戸城に近い上屋敷、江戸城から離れた下屋敷があるのだが、いずれも広大な面積で樹木が多く残された素晴らしい土地だ。
大名屋敷跡地は明治以降、国有地となり、行政施設や国立大学キャンパス、各国大使館、公園などに活用されている。東大の本郷キャンパスは加賀藩前田家の上屋敷跡地。日比谷公園は、萩藩毛利家や佐賀藩鍋島家など8つの大名上屋敷跡地だ。
この大名屋敷跡地を民間人が買取り、マイホームにするのはむずかしい。しかし、絶対無理というわけではない。
これまでの例でいえば、2012年に港区内で分譲された「プラウド南麻布」がある。これは、大名屋敷跡地に立地するフランス大使館が建て替えられ、旧・大使館跡地に建設されたマンション。抽選販売となる、超人気物件だった。
ただし、同マンションは60年の定期借地権方式だったため、厳密に言うと、購入者は旧大名屋敷跡地の所有権(正確には区分所有権)を得たわけではなかった。
大名屋敷跡地だから実現する緑豊かな環境
東京都内には「大名屋敷跡地に建つマンション」を購入・所有できる唯一の場所がある。それが、板橋区の加賀エリアだ。加賀の地名から「加賀百万石」を思い浮かべる人は多いだろう。そのとおり、一帯は江戸時代に加賀藩の下屋敷があった場所である。
加賀藩下屋敷跡地は国有地となった後、民間に売却されて学校や企業の研究所となった。その後、現在は複数のマンションが建つ場所になっている。つまり、大名屋敷跡地のマンションを所有できる希少な場所となっているわけだ。
加賀エリアは地区計画で緑の多い街並が保たれており、石神井川沿いの遊歩道は都内有数の桜の名所として知られる。学校も多く、板橋区立金沢小学校と加賀中学校はいずれも公立校として評価が高い。文教地区の趣もある。
加賀エリアでは、新規分譲マンションも
これまで加賀エリアで分譲されたマンションは、建物のつくりに力を入れたものが多かった。大名屋敷跡地に恥じないマンションをつくろうとした結果だろう。
その加賀エリアで、今年2月から分譲が始まった新規マンションが「アトラス加賀」(旭化成不動産レジデンス)。板橋区加賀一丁目に建設される大規模マンションだ。建設地は、都営三田線新板橋駅から徒歩9分、板橋区役所前駅から徒歩10分。ほかに、JR埼京線板橋駅から徒歩14分、十条駅から徒歩15分でもある。決して駅に近い場所ではないが、その分、緑豊かで静かな環境が保たれている。
さらに、「アトラス加賀」の建設地は3辺が緑に接しており南向き・公園前という住戸が大半を占める。これは、加賀エリアでも希少な立地条件となる。南西側は板橋区の登録文化財に指定されている板谷公園、南東側は加賀公園。こちらは、近代史跡を保存する公園として再整備される計画がある。北東側は前述した石神井川遊歩道だ。
マンションの中庭と遊歩道の樹木との連続性を持たせるため、遊歩道に面したフェンスをガラスにしているのも「アトラス加賀」の特徴。コンクリートの塀や鉄柵ではなく、高さ約2メートルのガラスフェンスを50メートルもの幅に設置しているのだ。
バルコニーの手すりをガラスにするケースは珍しくない。しかし、人の身長よりも高いガラスフェンスを塀代わりに設置するケースは珍しい。30年以上マンションの取材をしている私も、そのようなフェンスをみたことがない。おそらく、日本で初めてだろう。
「アトラス加賀」は、全227戸の大規模。南西向きと南東向きの南向き中心の住戸構成となる。敷地に対して、ゆったりと建物を配置し、石庭の趣のある中庭を広く取っている。駐車場は、機械式中心で85台分を用意。中庭を潰せばもっと多くの駐車スペースを用意できただろう。しかし、駐車場よりも、趣ある中庭を大事にしたのだと考えられる。
住戸は、70平米台の3LDKが中心で、住戸内設備が充実する。キッチンには、ディスポーザー(生ゴミ粉砕処理機)と食器洗い乾燥機、天然石カウンターが標準設置となり、浴室のミストサウナ、トイレのタンクレス便器と手洗いカウンターが標準設置される。
「アトラス加賀」の建設地は、旭化成の創業者・野口遵が遺した「野口研究所」があった場所。その野口遵は加賀藩士の末裔という縁(えにし)もあり、旭化成不動産レジデンスが分譲する「アトラス加賀」は建物にひときわ力を入れたマンションになったのだろう。
同マンションは2月に第1期分譲85戸を販売。3月に入って、追加分譲が行われることになった。