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楽天モバイル「Rakuten Turbo」料金は高すぎる? その狙いとは

山口健太ITジャーナリスト
Rakuten Turbo(楽天モバイルのWebサイトより、筆者撮影)

1月26日、楽天モバイルがホームルーター専用料金プラン「Rakuten Turbo(ラクテン ターボ)」を発表し、同日より順次提供を開始しています。

しかし、その料金はスマホ向けプランよりも高く、他社とも大きく変わらないことから、SNS上では不満の声が相次いでいます。運営会社にサービスの詳細を確認しつつ、その狙いを探っていきます。

楽天モバイルが「ホームルーター」に参入

Rakuten Turboは、楽天モバイルの回線を利用した家庭向けのインターネットサービスです。他社ではソフトバンクの「SoftBank Air」が知られており、NTTドコモやKDDIなどもサービスを提供しています。

これまで楽天モバイルの料金プランは段階制の「ワンプラン」をうたってきましたが、運営会社によればRakuten Turboはあくまで別サービスとのことから、スマホ向けは引き続きワンプランのままと理解してよさそうです。

実際にWebサイト上では、「ホームインターネット」サービスとして、「楽天ひかり」と「Rakuten Turbo」の2つが並んでいます。

ホームインターネットサービスに「Rakuten Turbo」が加わった(楽天モバイルのWebサイトより)
ホームインターネットサービスに「Rakuten Turbo」が加わった(楽天モバイルのWebサイトより)

楽天ひかりでは光回線を利用するため工事が必要な場合がありますが、Rakuten Turboは部屋まで届く楽天モバイルの電波を利用するので工事不要、というわけです。

そのため、楽天モバイルのスマホ向けプラン「Rakuten UN-LIMIT VII」とは一部の仕様が異なります。Rakuten Turboが対応する5Gの周波数は「Sub6」のみで、「ミリ波」には非対応です。

また、楽天の自社エリア外をカバーするKDDIローミングは利用できません。Rakuten Turboの対応エリアはWebサイトで公開されており、購入後に問題があった場合は一定の条件下で返品・返金に応じるとのことです。

ホームルーター本体の名称は「Rakuten Turbo 5G」で、製造者は台湾Sercomm Corporationとなっています。モバイルWi-Fiルーターとは異なり、契約した場所でしか使えませんが、手続きをすれば場所は変更可能です。

対応バンドは2つのみ。楽天モバイルによればSIMロックはかかっていないとのことですが、他のSIMカードは利用できず、Rakuten Turbo専用のSIMカードのみ利用できる仕様とのことです。

スマホ向けプランより高いのはなぜ?

家庭向けサービスとしてはおおむね妥当な内容ですが、注目はその料金設定です。Rakuten Turboは税込み月額4840円で、スマホ向けプランを上限まで利用した場合の月額3278円より高くなっています。

スマホ向けプラン(左)よりもRakuten Turbo(右)は高い(楽天モバイルのWebサイトより、筆者作成)
スマホ向けプラン(左)よりもRakuten Turbo(右)は高い(楽天モバイルのWebサイトより、筆者作成)

他社のホームルーターとの比較では、ソフトバンクよりは528円安いものの、ドコモの「home 5G」とは110円の差しかありません。キャンペーンによる割引で、3年間使えばルーター本体の代金が実質無料になる仕組みも他社と似ています。

もともと楽天モバイルは携帯インフラをソフトウェア化する技術を採用し、低コストをうたっています。さらにRakuten Turboでは、1GBあたり約500円とされるKDDIに支払うローミング費用もかからないはずです。

それでもスマホ向けより料金が高い理由について、運営会社は「弊社の事業戦略に沿ってプラン料金を決定しております。なお、詳細についての回答は控えさせていただきます」(楽天モバイル広報)と、明確には説明していません。

ここはひとつ、「日本のホームルーター料金は高すぎる!」とぶち上げて価格競争を挑んでほしかったところですが、現実的には無理があるのではないかと筆者は感じています。

というのも、スマホ向けの料金は楽天経済圏とのシナジーを前提に、割安に設定していると考えられるためです。楽天市場で買い物してくれるなら、多少安くても元が取れるというわけです。

一方、ホームルーターの契約者にはそうした効果をあまり期待できないとすれば、スマホ向け料金よりも高くなる可能性は十分にあるといえます。

ただ、それはあくまでサービス提供側の事情です。ユーザー視点では「市販のルーターにスマホ向けSIMを入れたほうが安い」という発想になるので、不満の声が上がるのは当然でしょう。

楽天モバイルは他社にないメリットとして、「料金を楽天ポイントで払える」ことを挙げています。こうしたサービスが期間限定ポイントを消化するのに向いていることはたしかです。

今後は楽天ひかりのように、楽天市場の「SPU」の対象に加わることを期待したいところです。

アップデート:

2023年7月1日より、Rakuten Tubroが「SPU」の対象サービスに追加されることになりました。「Rakuten Turboまたは、楽天ひかりの契約でポイント+1倍」となります。

https://network.mobile.rakuten.co.jp/hikari/campaign/spu/

インフラの利用効率は上がりそう

料金には不満の声が多いものの、楽天モバイルにはプラスの影響がありそうです。それは単に売上が増えるだけでなく、インフラの利用効率が上がるという点です。

一般に、個人のスマホ利用は昼休みや朝夕の通勤時間帯が多く、このピーク需要に合わせて設備投資をするべきか、通信事業者を悩ませています。

その対策の1つとして、個人のスマホとは利用パターンが異なるサービスを提供することで、幅広い時間帯に需要を平準化するという考え方があります。

たとえば家庭向けのRakuten Turboは夜間や休日、1月30日開始の「法人向けプラン」は平日昼間の利用が多く、個人のスマホとはピークが重なりにくいと考えられます。

最近の楽天はモバイル事業のための資金繰りに奔走している感はありますが、その中で既存のインフラをより有効活用できるサービスを増やすのは王道といえそうです。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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