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元withBコージと元NFLチアが語った「挑戦」。コロナ禍の今だからこそ伝えたいこととは

三尾圭スポーツフォトジャーナリスト
30代でアメフト界に復帰するコージ・トクダと曽我小百合

 ともにこの春にアメリカンフットボール界への復帰を決断したコージ・トクダと曽我小百合。選手とチアリーダー、男性と女性、日本とアメリカ、XリーグとNFLと違いは多いが、2人の復帰には共通点も非常に多い。

 2人が対談で発した言葉には人生を歩む上でのヒントがたくさん隠されていた。

 改めて2人の対談動画を観ながら、人生を豊かに生きる方法を考えてみたい。

コロナ禍での自宅での過ごし方

 今年のゴールデンウィークは新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言によって旅行や外出をしないで、うちで過ごす方が多く、例年とは違う春の大型連休となった。

 もうしばらくは家で過ごす時間が続きそうだ。

 自由に外にも出られずに家にいることでストレスを感じることもあるだろうが、「家の中で楽しいことを見つけてやる」とコージが言うように、家で過ごす時間がたくさんある今は、これまでにやりたくてもできなかったことをするチャンス。何か資格を取ったり、キャリアアップに繋がる勉強に集中するのに、今ほど適したときはない。もしくは好きな趣味に没頭して楽しむのもいいかもしれない。

 家族で暮らしていると、子供の世話や面倒をみて、自分の好きなことをできないかもしれないが、家族と一緒に過ごす時間が増えたのも今ならではの恵み。外に出掛けることはできなくても、子どもたちと一緒に新たなプロジェクトに挑戦してみてはいかがだろうか?

 

 「時間があるからこそ、自分の心や身体と向き合っている。自分がなにをしたいのかとか、社会に貢献できることはないかを考えています」と語るのは曽我。コージも「就職活動の自己分析をやっていた時間を思い出す。自分を見つめ直す時間というか、これから先はコロナの問題で人生が大きく変わる人もいるのではないかと思う」と同意する。

 自分と向き合い、現状で良いのかを考え、コロナ禍収束後の人生の生き方を考え直す良い機会。普段は日々の生活で精一杯の方も、この機会に一度立ち止まって、人生を見つめ直すチャンスが与えられている。

 アメフト選手とチアリーダー、アスリートの2人にとって、外出自粛の今は思うようなトレーニングができない。アスリートがトレーニングできないのは致命的だが、2人は自宅でできる方法で身体が鈍らないようにしている。

 「オンラインのレッスンを毎日受けている」と言うのは曽我。コロナ禍で家にいる時間が増えた人に向けて、オンラインのトレーニング・レッスンがとても増えている。嬉しいことに無料のものも多い。「普段だったら海外まで行かないと受けられないようなレッスンが自宅で受けられる」と語るように、世界トップレベルのアスリートやスーパースターのレッスンを自宅で受けられるのはオンラインならでは。オンライン会議サービスのZoomを使ったレッスンであれば、ただ教わるだけの一方通行ではなく、同じ時間に一緒にレッスンができる双方向で、やる気もさらにアップする。YouTubeなどのレッスンは一方通行ではあるが、自分の好きな時間にできる利点がある。

 コージは「僕もオンラインでフィットネス配信をやっている」と言うが、テレビの向こうの世界の人ともオンラインならば繋がれる。コージのYouTubeチャンネル「コージのじかん」で配信されているトレーニングは一方通行だが、所属するアメフト・チーム「みらいふ福岡SUNS」のズムトレは双方向なので、自分のスケジュールに合う方を選択できる。

 オンラインでの交流はトレーニングに限らず、勉強会や趣味の集まり、飲み会などでも活用されているが、オンラインならではのメリットも多い。自宅から参加できるので移動時間もなく、満員電車に揺られることも、終電を逃すこともない。何よりもネット社会には国境もないので、遠く離れてしばらく会っていない友達と再会するのには最適なツールである。外国に住む知り合いはもちろん、違う地方に住んでいる知人ともすぐに会うことができる。

30代での現役復帰

 日本では初対面で年齢を聞かれることも多いように、日本人は年齢を気にする国民性だと感じる。年齢を気にするあまり、自分で年齢を理由にした制限をかけてしまう。

 身体が武器のアスリートは一般の人よりも年齢に左右されるが、コージと曽我は30代での現役復帰を決意した。

 「何歳になっても挑戦する気持ちが大事」とコージがツイートしたように、挑戦に踏み出す一歩は強い気持ちがないとできないもの。壁が大きいほどに、「できない」、「やらない」理由を探してしまうが、できるか、できないかはやってみないと分からない。

 人間だから失敗を恐れてしまうが、人間は失敗から学んで成長する生き物なので、長い目で見れば失敗も悪いことではない。

 例えば曽我は20代のときにNFLチアリーダーになる夢を持ったが、30代までNFLには挑戦しなかった。初めて挑戦した年にはオーディション中に膝の前十字靭帯を損傷して1年目のチャレンジは「失敗」に終わったが、その経験を2回目での成功に繋げている。

 法政大学アメリカンフットボール部の選手として大学日本一決定戦の「甲子園ボウル」に3度も出場したコージだが、日本一に輝いたのは1年生だった1度だけ。4年生ではキャプテンとしてチームを甲子園ボウルに導いたが、日本一を目の前にして敗戦。「いまでもよく夢に、敗戦が決まる10秒前のカウントダウンのシーンが出てくる」と今でもその悔しさを引きずっている。

 連載コラムの中で、当時の自分に手紙を書くという設定でコージはこう綴っている。

これから貴方は甲子園ボウルに人生を狂わされます。

甲子園ボウルでの興奮がそれほど快感だったのです。大学卒業後、就職という道を捨て、フリーターになり、いまでは芸人という道を歩き始めています。

その目的こそが「甲子園ボウル以上の感情の高ぶりを味わうため」なのです。あのアドレナリン分泌量を超えることです。

まだその瞬間は訪れてはいません。それぐらい甲子園ボウルは貴方の人生において重要な出来事だったのです。

相手のチームはとにかく強いです。もしかしたら負けるかもしれません。でも最後の1秒まであきらめてはいけません。

本気で取り組んだ先に見えるものがあるからです。

答えは勝ち負けの二つだけではありません。人生という土俵でそれをしっかりと見つけて下さい。

甲子園ボウルに出場できたことは、いまの僕の誇りです。

甲子園ボウルに出場して、人生を狂わされたことも僕の誇りです。

それに決して後悔はしていません。

本気で目指したからこそ、気づけた感情です。

出典:『人生を狂わせられた甲子園ボウル! 4年生のときの自分に手紙を書いてみました!』(4years.)

 

 コージは大学アメフト選手にとっての頂点である甲子園ボウルで敗れ、「失敗」した。でも、「答えは勝ち負けの二つだけではない」と言い、「本気で取り組んだ先に見えるものがある」と自らの経験から教えてくれる。

 スポーツでは勝敗が最も大切なはずなのに、本気で取り組めば、その勝敗よりも大切なものを手に入れられる。勝敗は一時的なもので、次の試合、次のシーズンが来れば色褪せてくるが、「本気で取り組んだ先に見えるもの」は一生の宝になる。

 

 曽我との対談の中でも「周りは「厳しいですよね」とか、「身体作りも前のように簡単には行かないですよ」って言われるけど、自分の中ではそんなことないなと……」と自分の限界は他人が決めるのではなく、自分で決めると言っている。

 「それができれば、みんなに勇気を与えられる。同じ30代の人にも、なにか始めようと思っている人にも勇気を与えることができると思っての挑戦で、決意」と自らが先頭に立って道を切り開くことで、人々が後に続くことを願っている。歩む道は違っても、それぞれが一歩を踏み出すときに、背中を押す存在になる覚悟を持っている。

 曽我は今年のスーパーボウルで世界中を熱狂させたジェニファー・ロペスのパフォーマンスを観て、挑戦に年齢は関係ないと再認識した。

 「自分になにができるんだろうと考えたときに、挑むことで、皆さんにパワーやエネルギー、勇気を与えたい」とコージと同じ気持ちでNFLにチャレンジする。 

 「このまま辞めて、将来的にやっぱりやれば良かったと思いたくない」と言う曽我は後悔をしないために、今を全力で生きている。

2人が人生をかけてまで挑戦するアメフトの魅力とは?

 コージと曽我が人生をかけて復帰するアメリカンフットボールの世界。

 アメリカンフットボールには人を本気にさせ、魅了させるものがある。

 日本ではマイナースポーツのアメフトだが、本場アメリカでは野球やバスケットボールを大きく上回る人気スポーツであり、スポーツの枠を超えたアメリカの文化と呼んでもいい。

 

 「アメフトは社会の縮図」と言われるが、どんな意味だろうか?

 アメフトではレギュラー選手なのに、シーズンを通して1回もボールに触れない選手や、一度もタックルをしない選手もいる。肩の強い人、足の速い人、太っているがパワーがある人、ボールを蹴るだけの人などとそれぞれの才能に応じたポジションが用意されており、どんな球技よりもポジションごとの特性も役割も大きく違う。

 コージのポジションであるディフェンシブエンド(DE)と対峙するオフェンシブライン(OL)の選手は、ルールによってボールを捕ることが禁じられており、チームの要であるクオーターバック(QB)を身体を張って守ることと、ボールを持って走るランニングバック(RB)の走路を切り開くのが仕事という縁の下の力持ち。ほとんどのプレーでは見過ごされるのに、ミスをしたときだけ目立ち、怒られるという割に合わないポジションだが、攻撃を最前線で支える大切な存在だ。

 「ディフェンスの暴れん坊」とコージが呼ぶDEは「相手の花形であるQBに対するアプローチばかりできる、ディフェンスの中で結構目立つポジション」。パワーとスピードの両方を求められ、パスプレーでは相手QBに襲い掛かるが、その前にOLとの勝負に勝たないとQBまで到達できない。

  また、フィールドに出ている選手だけでは試合は成り立たず、試合に華を添えるチアリーダー、数多くのコーチ、試合を分析するアナライジング・スタッフ、選手のコンディションを守るトレーナー、チームを運営するフロント陣など多くのスタッフが力を合わせることで、はじめて勝利を目指すチームができ上がる。運動神経の良い男性だけでなく、女性でもアナライジング・スタッフやチアリーダーとしてチームの一員になれるのがアメフトの良さの一つでもある。運動神経ゼロだが分析能力に長けたオタク気質の男性でも、アナライジング・スタッフとしてチームに欠かせない存在となれるのがアメフトだ。

 「アメフトを初めて観に来た人は、ヘルメットとヘルメットがガシーンって当たる音に興奮すると言ってくる。あとはどこを見ても、みんなが勝負し合っている。一人一人が本気の相撲をやっていたりとか、本気の押し合い、本気の走り合いをしている。(フィールドの)どこを見ても楽しめる瞬間がある」とコージが説明するように、アメフトは毎プレーでフィールドにいる全選手がプレーの成否に大きく関わってくる。ボールを持たない選手のプレーがアメフトほど重要な球技は他にはない。

 ポジションごとの役割が大きく異なるので、アメフトはどんなスポーツよりもチームワークが問われる。スター選手の力よりも、裏方スタッフを含めた全員の一致が何よりも大切だ。

 「アメフトはホントにチームワークのスポーツで、ボールを持っている選手だけが動くのではなく、プレーが始まった瞬間に全員がそれぞれの戦略を成功させるために、一斉に自分の役割を果たすために動く」と曽我も力説する。

 社会も同じで、会社には多くの役職があり、一日中外に出ずっぱりの営業と、会社の中でずっとコンピューターとにらめっこする経理では必要とされる能力は違う。自分が置かれたポジションで、チームの勝利のために懸命に戦う。そのことを身体の芯から叩き込まれたアメフト出身者は、社会に出ても成功するケースが多い。

 「アメリカンフットボールって、見て一番楽しめるスポーツ。プレーヤーとしてやる方も楽しいけど、見て楽しめる要素がいっぱい詰まっている」とコージは言うが、それが事実だからこそアメリカではテレビの歴代視聴者数の上位30位中29放送がアメフトの試合と完全独占状態なのだ。

 「ルールが複雑」と敬遠する人も多いが、食わず嫌いはとても勿体ない。基本的なルールさえ把握できれば楽しめるし、選手の中にはルールを全て知らない人もいる。野球よりもルールは分かりやすいので、一度スタジアムに足を運んで試合を体験してもらいたい。

 シーズン中はほぼ毎日試合がある野球とは異なり、アメフトは週に1度なので、アメフトの試合を観に行くときは前日からワクワク感が高まり、お祭りに行くかのような非日常感に包まれる。

 新型コロナウイルスの影響で、今年のXリーグは春シーズンをキャンセルして、秋シーズンも通常の8月開幕を10月開幕に後ろ倒しにすると発表された。今後も状況の変化によってスケジュールは変わるかもしれないが、コロナが収束して、無事にアメフトのシーズンが始まったときには、ぜひアメフトの試合に足を運んでもらいたい。

 コロナ禍で溜まったストレスを発散させるエキサイティングな試合があなたを待っている。

コージ・トクダ:1987年生まれ、大阪府出身。ワタナベエンターテインメント所属。高校からアメリカンフットボールを始め、法政大学では1年生のときに大学日本一を経験。4年生では主将に選ばれ、チームを甲子園ボウル(大学日本一決定戦)に導いた。在学4年間で関東リーグ戦では無敗。大学卒業後はアメフトから引退。ワタナベコメディスクールを経て、ダイキとの『ブリリアン』として芸人デビューし、『ブルゾンちえみ with B』として注目を浴びる。2020年2月にアメフトの現役復帰を宣言後、3月にはブリリアンの解散とソロでのタレント活動継続を発表。アメフト選手としてはXリーグのみらいふ福岡SUNS所属。「スポーツを気軽に楽しむ」をコンセプトにしたオンラインサロン『Hedgehogs』ではスポーツの試合観戦など魅力的な企画が盛りだくさん用意されている。

(写真:本人提供)
(写真:本人提供)

曽我小百合:1982年生まれ、東京都出身。MJ Management所属。高校からアメリカンフットボール部所属のチアリーダーとして活動して、大学卒業後は日産スカイライナーズ、富士通フロンティアレッツとXリーグで10年間、チアリーダーとして活躍。2017年に単身渡米して、NFLテネシー・タイタンズのオーディションに合格して、念願のNFLチアリーダーになる夢を叶える。NFLチアリーダーとして2年間の活動を終えて引退したが、今春に渡米してNFLチアリーダー復帰を目指す。

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(写真:三尾圭撮影)
(写真:三尾圭撮影)

取材協力:ワタナベエンターテインメント

動画編集:KATSUYA YAMAMOTO

スポーツフォトジャーナリスト

東京都港区六本木出身。写真家と記者の二刀流として、オリンピック、NFLスーパーボウル、NFLプロボウル、NBAファイナル、NBAオールスター、MLBワールドシリーズ、MLBオールスター、NHLスタンリーカップ・ファイナル、NHLオールスター、WBC決勝戦、UFC、ストライクフォース、WWEレッスルマニア、全米オープンゴルフ、全米競泳などを取材。全米中を飛び回り、MLBは全30球団本拠地制覇、NBAは29球団、NFLも24球団の本拠地を訪れた。Sportsshooter、全米野球写真家協会、全米バスケットボール記者協会、全米スポーツメディア協会会員、米国大手写真通信社契約フォトグラファー。

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