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【河内長野市】日本一の鳥の巣コレクターは河内長野の小海途さん。「日本の鳥の巣と卵427」は驚きの連続

奥河内から情報発信奥河内地域文筆家(河内長野市・富田林市)

河内長野在住の小海途銀次郎(こがいとぎんじろう)さん。鳥の研究者やその分野においては日本で非常に有名な方なのですが、私を含め一般的な市民はあまり知らない人かもしれません。

その小海途さんが「日本一の鳥の巣コレクター」として収集した膨大な数の鳥の巣、そのすべてが大阪市立自然史博物館(以下、自然史博物館)で、52回特別展「日本の鳥の巣と卵427 -小海途銀次郎鳥の巣コレクションのすべて-」として、6月19日まで開催されています。

小海途さんについては、こちらの広報かわちながの6月号にて紹介されていました。ここで紹介されて初めて、河内長野にすごい人がいることを知った人も多いのではないでしょうか?

このように、20ページに「市民の横顔」というコーナーで小海途さんが紹介されています。

要約すると60年前に南大阪野鳥研究会を立ち上げたそうで、その時に野鳥の古巣を活動の発表会として展示後、処分が惜しいとなったことがきっかけで鳥の巣の収集を始め、気が付いたら日本一の鳥の巣コレクターになっていたというのです。

偶然ですが先日、ある場所で壁の天井近くに小さな鳥の巣を見つけました。どうやらツバメのようです。このようによく見ると鳥の巣があるのでしょうが、素人ならなかなか見つけにくいもの。

それを見つけただけでなく、それを427個も持ち帰ったという小海途さんのことがますます気になりますね。

Takeshi WADAさんからの掲載了承済み
Takeshi WADAさんからの掲載了承済み

実は、4月中旬にツイッターで気になるつぶやきを見つけていました。こちらのTakeshi WADAさんとは、自然史博物館の学芸員の和田岳さんです。

このつぶやきは特別展を前に、小海途さんのご自宅にあった数多くの鳥の巣のコレクションを博物館に運ぶ際の実況中継。果たして全部運び出せるのか、数日にわたってどきどきしながら読ませていただいていました。

そこで、会期が始まり一段落したころに和田さんとコンタクトを取った上で、自然史博物館の広報の方を通じて、小海途さんのことや鳥の巣、この特別展のことについて、お話をお伺いすることになりました。

小海途銀次郎さん
小海途銀次郎さん

本来なら小海途さんに、河内長野市内のご自宅に訪問するか、市内のどこかの場所でお話を伺うのが筋ですが、事情により直接のインタビューは難しいとのこと。その代わり、和田さんからたっぷりと小海途さんについてお話を伺えました。

というわけで、自然史博物館まで来ました。

ご存じだとは思いますが、念のために河内長野方面からの行き方を書きますと、南海高野線で中百舌鳥駅から地下鉄(大阪メトロ)、あるいは三国ヶ丘駅からJRでどちらも同じ名前「長居駅」で下車すれば、そこから長居公園を歩くこと十数分で到着します。

ちなみにJRのほうが地下鉄よりほんの少し距離がありますが、料金はJRのほうが70円安いです。

ところが、南海経由の場合、別の鉄道会社に乗り換える必要がありますね。第3の方法として近鉄矢田駅から向かうという手があります。

特に河内長野駅や汐ノ宮駅近くの人ならこちらの方が同じ鉄道会社で行けるので割安です。矢田駅からの所要時間は徒歩20分くらいです。

さて展示室の中で和田さんにお話を伺いました。最初に最も気になったのは、小海途さんは河内長野のどこにお住まいなのかという点。

岩湧山の近くで収集したという印象が強いので、加賀田とか滝畑とかそのあたりとばかり思っていました。しかし、和田さんは意外な事を言います。「河内長野駅のすぐ近くなんです」と。

河内長野駅近くと聞いて本当に驚きです。小海途さんが南大阪野鳥研究会を作ったころの河内長野は、宅地造成が行われる前の昭和30年代。当時は河内長野駅周辺にも多くの鷹が飛来していたようなところだったのです。

小海途さんの自宅はかつてご両親が住んでいた母屋と、ご自身が住んでいる家屋があるとかで、母屋の方にこの鳥の巣コレクションが保管されていたとか。タンスの引き出しや床の間など、ありとあらゆるところに鳥の巣が保管されていたそうです。

427もの鳥の巣の数にただただ驚きますが、和田さんによると427は小海途さんが言われた数で、実際にはもっと多いことが判明したとか。「実際に数えると516もありました」もっと多いとは!

鳥の巣についているタグには小海途さん直筆のメモ
鳥の巣についているタグには小海途さん直筆のメモ

小海途さんと和田さんとの出会いは、19年前(2003年)のこと。直接の接点はなかったそうですが、鳥の収集関係の仲間を通じて知り合ったそうです。

そして小海途さんから収集した鳥の巣のコレクションを展示してほしいと申し出がありました。それが1回目の特別展示で、今回は2回目の開催になります。

鳥の巣と同時に展示しているのは該当する鳥の繁殖分布図
鳥の巣と同時に展示しているのは該当する鳥の繁殖分布図

1回目の展示会の時はおよそ250もの鳥の巣コレクションがあったそうですが、それから19年でさらに倍もコレクションが増えていたそうです。

今回の2回目の展示が決まった時に、和田さんも「思ったより多い」と慌てたとか。その様子をツイッターでつぶやかれていたんですね。

小海途さんのコレクションで、最も古いのは60年代の物だとかで、画像のモズの巣は、河内長野駅から歩いて行ける富田林の嬉で1967年に収集したもの。モズと言えば大阪府の鳥でもありますね。

もっと古いのがありました。岩湧山で収集されたミゾゴイの巣は1966年に収集されています。

小海途さんは全国津々浦々で鳥の巣を集めていますが、やはり大阪府南部、それも河内長野市のものが多いです。こちらのヒヨドリの巣は2003年に寺ヶ池公園で収集されたもの。

こちらは岩湧山で2007年に収集されたオオルリという鳥の巣です。あまり聞きなれない名前だったのでどんな鳥か確認すると、オスとメスとでは違う色合いをしていて、オスは青いボディで、腹の部分が白い鳥でした。

こちらは河合寺で1969年に収集されたハシボソガラスの巣です。河内長野で収集された巣はまだまだいっぱいありますが、キリがないのでこのくらいにしましょう。

「小海途さんは人前でしゃべるのはあまり得意ではないそうなのですが、文章を書かれるのはお得意なんですよ」と和田さん。展示物の中には小海途さんが書いた収集当時のエピソードが紹介されています。読んでいると非常に人間味がある上手い文章。

私も文章を書くようなことをしていますが、見習わなければと思いました。

展示している物を見ると落ちている枝などを集めて作る鳥の巣が多いですが、画像のように木の中に巣を作るなど、鳥の種類によって巣もいろいろあるのがわかります。

カワセミの巣:画像は大阪市立自然史博物館提供
カワセミの巣:画像は大阪市立自然史博物館提供

「でも、こちらを見てください。一番人気の巣ですよ!」と和田さん。

それはこちら。驚いたことにアカショウビンがスズメバチの巣だったものを蜂がいなくなってから自分の巣として使ったというのです。

人間ならこの文様を見ただけで、ビビッて駆除を頼みそうなスズメバチの巣。それを自分の巣として利用するアカショウビンはすごいですね。

ちなみに和田さんのイチオシはこちらのカササギの巣だそうです。アカショウビンの巣の隣にありました。

また鳥の巣のインパクトが強くて見落としがちなのが卵の展示です。鳥の巣は雌鳥が卵を産みつけるためにあるのですから、卵のことをも見逃してはいけません。

こちらはフクロウとオオコノハズクの卵です。特に後者は2002年と2004年に河内長野市内で繁殖が確認されていました。

和田さんによると、小海途さんは本来鷹の研究者とかで、鳥の巣はそのついでに収集していたそうです。ところで小海途さんは鷹の中でも画像のサシバについてはあまり研究されていないとか。

その理由として、小海途さんが子供のころの河内長野には、サシバがいくらでもいたから珍しくなかったそうなのです。今では絶滅危惧種になってしまったサシバですが、なんとももったいないというか、面白いエピソードですね。

ところで鳥の巣のほかに小動物の巣も一部ありました。こちらはニホンリスの巣。河内長野で2002年に収集されています。

「あまりにもすごいコレクションなので、他の博物館から展示の打診も来ています」と、和田さん。

もちろん他の博物館で展示会が開かれるとしても、今回のようにすべてのコレクションが展示されるわけではありません。このクラスの展示はもう当分なく、あったとしても前回が19年前だったから恐らく20年くらい先になるのではないかとのこと。

この展示会では、町中で鳥の巣を見つけた場合の注意点なども書かれていました。

画像にも書いてあるように小海途さんが収集したコレクションはすべて、営巣(えいそう:雌鳥が巣として雛を育てている状態)が終わった空き家のようなものです。

ちなみに今回の特別展はフラッシュ無しという条件で撮影可能。その上SNSに投稿することもできます。これはうれしいですね。

大阪市立自然史博物館の第52回特別展「日本の鳥と巣と卵427 -小海途銀次郎鳥の巣コレクションのすべて-」(外部リンク)は6月19日日曜日まで開催しています。

開館時間は9:30〜17:00(入館は16:30まで)で、月曜日が休館日とのことです。開催期間はあとわずかですが、ぜひこの素晴らしいコレクションを生で見に行ってみてください。

さてこの特別展のきっかけは、博物館への寄贈でした。小海途さんから日本一の鳥の巣コレクションの管理を託されたのです。

本来なら河内長野の宝と言えるものが、河内長野から大阪市内の博物館に行ってしまうことは残念な気がしますが、やはり小海途さんの代りにこれだけの宝物を管理できるとなれば、妥当な判断といえるでしょう。

鳥の巣は非常に壊れやすいそうですから。そんな壊れやすい鳥の巣を何十年も保管し続けた小海途さんは本当にすごい人だと痛感します。

「同じ大阪で管理しますから」とは、和田さんの言葉。

実際に拝見させていただいた感想は、このコレクションは河内長野だけでなく、大阪、いや日本の宝物だと思いました。

管理される場所は河内長野を離れることとなりましたが、和田さんのような専門家の手により、未来永劫大切に保管・管理されていくのでしょう。

岩湧山の中腹にある岩湧の森
岩湧山の中腹にある岩湧の森

小海途さんの鳥の巣コレクションを見に行ったら、ぜひ実際に河内長野市内の森や公園で鳥の巣がないか探してみましょう。展示していた鳥の巣の中で河内長野で採集したもので私が確認できたのは、岩湧山河合寺寺ヶ池公園のものでした。

寺ヶ池公園
寺ヶ池公園

ということで早速実践しました。ここは寺ヶ池公園です。いきなり小鳥が羽ばたくシーンに遭遇。もしかしたら鳥の巣が見つけられるかもと期待が膨らみます。

寺ヶ池公園
寺ヶ池公園

良く通る道ですが、鳥の巣がないか木の上を眺めながら歩きました。あまり上の方は見ないので、それだけでも新鮮。

寺ヶ池公園
寺ヶ池公園

「もしかして?」と思うものがいくつかありましたが、よく見ると枯れ草だったり、枝の付け根だったりと、素人ではなかなかわかりません。小海途さんならあっという間に見つけられるのかも。

寺ヶ池公園
寺ヶ池公園

それでも、木の枝に巣箱が掛けられているのを見つけました。そこに鳥が入ってくるのでしょうか?今まで気づかなかったですね。

今回の特別展を通じて、近所の公園にて花を見るだけでなく、鳥の巣の有無や羽ばたく鳥を探して眺めてみるという新しい楽しみが増えた気がします。

奥河内地域文筆家(河内長野市・富田林市)

河内長野市の別名「奥河内」は、周囲を山に囲まれ3種類の日本遺産に登録されるほど、歴史文化的スポットがたくさんある地域です。それに加えて、都心である大阪市中心部に乗り換えなしで行ける複数の大手私鉄(南海・近鉄)と直結していることから、新興住宅団地が多数造成されており、地元にはおしゃれな名店や評判の良い店なども数多くあります。そして隣接する富田林市もまた、歴史文化が色濃く残る地域。また南河内地区の中核都市として、行政系施設が集まっています。これを機会に、奥河内(一部南河内含む)地域に住んでいる人たちのお役に立つ情報を提供していければと考えています。どうぞよろしくお願いします。

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