三大料理コンクールのうち2つに優勝したのは誰? その料理人による特別ディナーの全容
三大料理コンクール
日本にはいくつもの料理コンクールがあります。
近年目立っているのは、エンターテイメント性が高い料理コンクール。SNSや動画などインターネットを大いに用いて、プレゼンテーションを競ったり、より多くの人々を巻き込んだりしているのです。
そのような新しい料理コンクールとは違い、昔からの伝統的な料理コンクールも存在します。
格式高いフランス料理において、三大料理コンクールといわれているのが、「ル・テタンジェ国際料理賞コンクール」「エスコフィエ・フランス料理コンクール」「ボキューズ・ドール国際料理コンクール」。
2つの料理コンクールに優勝した料理人
三大料理コンクールの日本大会で、1つ優勝するだけでも大変な偉業ですが、2つも優勝した料理人が2人もいます。
初めに成し遂げたのが、浦和ロイヤルパインズホテルの総料理長である竹下公平氏。その次に達成したのが、軽井沢 浅間プリンスホテルの料理長、吉本憲司氏です。
竹下氏は2002年から浦和ロイヤルパインズホテルに在籍していますが、吉本氏は2021年9月1日に軽井沢 浅間プリンスホテルに着任したばかり。
軽井沢は美食のリゾート地として地位を確立していますが、ここに吉本氏という実力者が新たに加わることになり、ますます楽しみになりました。
就任ガラディナー
軽井沢 浅間プリンスホテルでは、吉本氏が料理長に就任するに際して、お披露目となるガラディナーが開催されました。それは、2021年11月18日から20日にかけて行われた新料理長就任記念フェア「Saveur(サヴール)」。
プリンスホテルのコーポレートエグゼクティブシェフである下井和彦氏と吉本氏がコラボレーションして、信州の魅力を最大限に引き出したメニューを用意しました。
ガラディナーには料理にぴったりのワインペアリング 5,000円(税込・サ別)も用意されています。
メニューの内容は次の通り。
「Saveur」メニュー 20,000円(税込・サ別)
・アミューズブーシュ
・佐久鯉のマリネとひよこ豆のガレット 春菊のタルトレット アイコトマトと玉藻塩のキャラメリーゼ
・信州大王イワナと加能ガニのシャルロット 信州リンゴのロンド アボカド飾り 瀬戸内キャビアを添えて
・蝦夷鮑 生どんこ 白霊茸 霜降りひらたけのフリカッセ 軽井沢の大自然をイメージして
・信州黄金シャモのダブルコンソメ その身のクネルにトリュフの香りで
・舌平目のファルシ ナンチュア風
・信州産鹿ロースのロースト モンブラン仕立てと信州プレミアム牛肉のエギュイエット ブルーベリーのソースと農園野菜をそれぞれのテクスチャーで
・オレンジのタルト ピスタチオの香り
・コーヒー、小菓子
・クルミとレーズン入りカンパーニュ イギリス シャンピニョン チーズと信州ハム入りクグロフ
佐久鯉、信州大王イワナ、信州リンゴ、信州黄金シャモ、信州産鹿、信州プレミアム牛肉、信州ハムと、まさに信州の食材ばかりが使われています。地元の食材をふんだんに用いて、どのような料理が紡ぎ出されたのでしょうか。
佐久鯉のマリネとひよこ豆のガレット 春菊のタルトレット アイコトマトと玉藻塩のキャラメリーゼ
アミューズは3種。ガレットはホロリとして、佐久鯉は川魚の風味豊か。塩味のある信州ベーコン入りのタルトレットは、春菊が香り高いです。ピックが刺さったアイコトマトはキャラメリゼされて表面がカリカリに。
信州大王イワナと加能ガニのシャルロット 信州リンゴのロンド アボカド飾り 瀬戸内キャビアを添えて
地元のイワナと石川県の加能ガニのコンビネーション。檻はシュー生地なので、崩しながら食べるとよいでしょう。信州リンゴのマリネ、アボカド、キャビアが添えられており、脂がのったイワナの味わいを引き立てています。
蝦夷鮑 生どんこ 白霊茸 霜降りひらたけのフリカッセ 軽井沢の大自然をイメージして
エゾアワビにたくさんの信州産キノコを合わせ、山海の幸が表現されたヘルシーな一皿です。肝のソース。パセリのシフォンケーキがメリハリのあるアクセント。
信州産鹿ロースのロースト モンブラン仕立てと信州プレミアム牛肉のエギュイエット ブルーベリーのソースと農園野菜をそれぞれのテクスチャーで
メインディッシュには、2種類の肉料理が提供されるという贅沢。信州産のホンシュウジカのロース肉ローストと、信州プレミアム牛肉の薄切り肉。前者はほんのりとした野性味が印象的、後者は適度に脂がのった牛肉です。付け合せのカヌレ型のモンブラン、フォアグラのコロッケもパンチがあって肉に負けていません。
プリンスホテルの会員制リゾートホテル
料理を紹介してきたところで、軽井沢 浅間プリンスホテルについても紹介しておきましょう。
軽井沢 浅間プリンスホテルは1997年に営業を開始。2019年7月8日にはプリンスホテル初の会員制リゾートホテルとして、ホテル内にプリンスバケーション クラブ ヴィラ軽井沢浅間とプリンス バケーション クラブ 軽井沢浅間が開業しました。
プリンス バケーション クラブ ヴィラ軽井沢浅間は15棟だけのヴィラタイプの会員制ホテルで、全棟が80平方メートル以上のゆとりある空間。そのうち2棟は愛犬と一緒に過ごせるドッグヴィラとなっています。
プリンス バケーション クラブ 軽井沢浅間は、軽井沢 浅間プリンスホテル内の客室をリノベーションした48室の会員制ホテル。ファミリー層や3世代に対応した客室もあります。
会員制リゾートホテルの開業に合わせて、モノレール付きの浅間山を望む絶景を生かした温泉棟「Breeze in Plateau」を新設したり、今フェアの会場にもなった「Dining Bloom」をリニューアルオープンしたりしました。
初めて会員制ホテルを造ったことからも、軽井沢 浅間プリンスホテルは、プリンスホテルが非常に注力しているホテルであることは想像に難くありません。このようなホテルであるからこそ、吉本氏のような実力ある料理人が腕をふるっているのです。
フェアが開催された背景
軽井沢 浅間プリンスホテルで吉本氏のフェアが行われたのはどうしてでしょうか。
コーポレートエグゼクティブシェフである下井氏はこう話します。
「プリンスホテルはこれまで外部で経験を積んだシェフは多くなかった。今回、新しく優秀な料理人を迎え、多くのゲストの方に知っていただけるようにとフェアを開催することを考えた」
下井氏のようなプリンスホテルのトップ料理人がコラボレーションすることなど、普通はありません。それだけ吉本氏の才能を高く評価し、そしてゲストに素晴らしい食体験をしてもらいたいと思ったのです。
吉本氏は大きな期待を背負っていますが、東京に家族を残して、単身赴任で軽井沢に来ました。吉本氏は振り返ります。
「妻からはとてもよい話なので、背中を押してもらった。子供が小さい頃にも、ちょうど単身でフランスへ渡ったが、その時も応援してくれた。精一杯に励んでゲストにおいしい料理をご提供したい」
2人のコラボレーションと謳われていますが、誰がどの料理をつくったかについては明らかにされていません。下井氏は次のように説明します。
「軽井沢町内の農園や信州サーモンの養魚場、黄金シャモの養鶏場などに出向き、2人で信州の素晴らしい食材を見つけてきた。どの料理も共にアイデアを出してきたので、どちらが何をつくったという表現にはしたくなかった。食べに来てよかったといってくださるゲストがたくさんいらして、大変嬉しい」
プリンスホテルの食がますます楽しみに
今後について、下井氏は「もっとプリンスホテルの食をブランディングしていきたい。若手料理人や女性の発想を積極的に取り入れたい」といい、吉本氏は「軽井沢の土地感を生かし、日本海、群馬、石川、新潟にも近いので、信州に加えてこういった地域の食材も使用して、ここにしかない料理をつくっていきたい。これまでのプリンスホテルにはなかったものをご提供できれば」と力を込めます。
日本で暮らしていて、日本全国にあるプリンスホテルを知らない人などいません。年々、食のレベルが高まっているプリンスホテルに吉本氏のような異才が加わったことは非常に素晴らしいことであり、プリンスホテルの食が今後ますます楽しみです。