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梅雨期間中の猛暑というより梅雨明けの猛暑と、梅雨のような北海道の雨

饒村曜気象予報士
猛暑日を示す温度計(写真:イメージマート)

梅雨の晴れ間

 令和4年(2022年)の梅雨は、5月4日に沖縄の梅雨入りで始まりました。

 平年より6日早い梅雨入りです。

 鹿児島県奄美地方も、平年より1日早い5月11日に梅雨入りしました。

 しかし、その後は梅雨前線が沖縄付近に停滞したまま北上してこなかったため、他の地方の梅雨入りは遅れました(表1)。

表1 令和4年(2022年)の梅雨入りと梅雨明け
表1 令和4年(2022年)の梅雨入りと梅雨明け

 関東甲信地方が平年より1日早い6月6日に梅雨入りしましたが、例年のように梅雨前線が北上したことによる梅雨入りではありません。

 梅雨前線は沖縄付近に停滞したままでしたが、オホーツク海の高気圧から冷たい空気の流入が続き、曇りや雨の日が続いたことによる梅雨入りでした。

 梅雨前線が北上したことによる梅雨入りは、九州南部・北部の6月11日です。

 九州南部では平年より12日遅い梅雨入りでした。

 その後、梅雨前線上を低気圧が次々に通過し、6月15日までに四国から東北まで順次梅雨入りとなりましたが、東北北部で平年並みであった他は平年より遅い梅雨入りでした。

 梅雨明けは、沖縄地方で平年より1日早い6月20日、奄美地方で平年より7日早い6月22日でしたが、その後、本州付近にあった梅雨前線が弱まっています。

梅雨の合間の猛暑

 太陽の光が斜めから入射する場合と、真上から入射する場合では、単位面積当たりの光の量が違うため、北半球についていえば、太陽の方に向いている夏至の頃(6月21日頃)に太陽の光(エネルギー)を一番多く受け取ります。

 夏至の頃の日本列島は、梅雨期間中であり、雲で日射が遮られることが多いのですが、24日のように晴れると赤道付近よりも多くの太陽からのエネルギーが降りそそぎ、気温が高くなり、紫外線も強くなります。

 梅雨期間中は大雨による土砂災害等に警戒が必要ですが、梅雨の晴れ間も高温と紫外線に警戒が必要です。

 6月24日は、本州付の梅雨前線が消え、日本海北部に前線を伴った低気圧が出現しました(図1)。

図1 地上天気図(6月24日15時)
図1 地上天気図(6月24日15時)

 このため、日本列島には低気圧と前線に向かって強い南風が吹き、暖かくて湿った空気を流入させています。

 このため、気温を観測しているアメダスの914地点のうち、45地点(約5パーセント)で最高気温が35度以上の猛暑日となりました。

 これは、今年最多です。

 また、最高気温が30度以上の真夏日も426地点(約47パーセント)と、今年最多でした(図2)。

図2 全国の夏日と真夏日の観測地点数の推移(令和4年(2022年)5月~6月)
図2 全国の夏日と真夏日の観測地点数の推移(令和4年(2022年)5月~6月)

 ただ、北日本で雨が降っていたため、最高気温が25度以上の夏日は670地点(約73パーセント)と、6月19日の726地点(約79パーセント)には及びませんでした。

南下しながら弱まる前線

 日本海北部の低気圧から南下する前線により、北日本から西日本では、雷を伴った非常に激しい雨が降り、大雨となる所がある見込みです。

 土砂災害、低い土地の浸水、河川の増水や氾濫に警戒・注意してください。

 ただ、この前線は西日本から東日本の南岸まで南下せず、そのまま弱まる予報となっています(図3)。

図3 予想天気図(左は6月25日9時の予想、右は6月26日9時の予想)
図3 予想天気図(左は6月25日9時の予想、右は6月26日9時の予想)

 このため、南から暖かくて湿った空気が流入し、気温が高くなるという状況は、6月25日も続く見込みです。

 日本全国で真夏日となり、関東北部や北陸地方では猛暑日となるでしょう(図4)。

図4 最高気温の予報(6月25日)
図4 最高気温の予報(6月25日)

関東甲信地方等で梅雨明け?

 各地の10日先までの天気予報では、来週は、関東甲信から九州にかけては、お日様マーク(晴れ)や白雲マーク(雨の可能性がほとんんどない曇り)が多くなっています(図5)。

図5 各地の10日間予報(数字は最高気温)
図5 各地の10日間予報(数字は最高気温)

 最高気温も、真夏日や猛暑日が続く見込みです。

 気象庁では、梅雨明けの検討を始めるというニュースが流れましたが、6月中に梅雨明けの検討を始めるというのは異例です。

 関東甲信地方の梅雨明けは、平年が7月19日で、昨年、令和3年(2021年)は7月16日でした。

 関東甲信地方で、梅雨入りが早かった年と、梅雨入りが遅かった年をおのおの20年ずつ選び、梅雨明けの日をみると、梅雨入りが遅かった年のほうが、梅雨入りの早かった年より、若干ですが梅雨明けが早い傾向があります(図6)。

図6 関東甲信地方の梅雨明け((1)は梅雨入りが早い年、(2)は梅雨入りが遅い年)
図6 関東甲信地方の梅雨明け((1)は梅雨入りが早い年、(2)は梅雨入りが遅い年)

 梅雨の統計がある昭和26年(1951年)以降、一番早い梅雨入りは平成30年(2018年)の6月29日で、6月中の梅雨明けは、この年のみです。

 令和4年(2022年)の梅雨明けが、来週であれば記録更新となります。

北海道の梅雨

 気象庁は、現在は、北海道は梅雨がないとして梅雨入り、梅雨明けを発表していません。

 しかし、北海道の梅雨入り、梅雨明けを発表した時代があります。

 昭和42年(1967年)の梅雨入りは6月25日、梅雨明けは7月15日と発表したという記録が残っています(表2)。

表2 昭和42年の梅雨と平年値(いずれも上段が梅雨入り、下段が梅雨明け)
表2 昭和42年の梅雨と平年値(いずれも上段が梅雨入り、下段が梅雨明け)

 当時、沖縄は日本に返還されておらず、気象庁の情報には含まれていません。

 また、九州を南部と中部以北の2つに分けていますが、現在は南部と北部の2つに分けています。

 さらに、東北地方は現在のように南部と北部に分けていません。

 このような差がありますが、当時使われていた平年の値と、現在の平年の値を比べると、梅雨入りが早まり、梅雨明けが遅くなって、梅雨期間が長くなっています。

 北海道については、その後、梅雨入りや梅雨明けを特定できない年が続いたことから、北海道の梅雨はないとされてきました。

 しかし、最近は、今年ほど顕著ではありませんが、梅雨らしい現象が現れる年が出始めています。

 前述の図5でも、北海道(特に南部の函館)は、傘マーク(雨)や黒雲マーク(雨の可能性がある曇り)の日が、しばらく続きます。

 今年の梅雨は、最新の気象情報を入手し、例年の梅雨とは違うという意識で、注意・警戒をしてください。

図1、図3、表1の出典:気象庁ホームページ。

図2の出典:ウェザーマップ資料をもとに筆者作成。

図4、図5の出典:ウェザーマップ提供。

図6、表2の出典:気象庁資料をもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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