現場からの報告「十三回忌追善 実相寺昭雄 特撮ナイト」
今年は『ウルトラマン』や『ウルトラセブン』、そして映画『帝都物語』などで知られる、実相寺昭雄監督の13回忌にあたります。
11月29日が命日だったのですが、12月1日から翌朝にかけて、池袋の新文芸坐で追善のオールナイト上映会が開かれました。
撮影監督である中堀正夫さんをはじめとする、「実相寺組」のメンバーの皆さんと一緒に、私も不肖の弟子として活動している「実相寺昭雄研究会」も、今回のイベントに協力させていただきました。以下は、その報告です。
新文芸坐「十三回忌追善 実相寺昭雄 特撮ナイト」
当日は新文芸坐の二百数十席が、前売りだけで完全に埋まってしまい、満員御礼。当日券の発売はありませんでした。
まず、亡くなって10年以上も過ぎた監督の作品を観るために、この「十三回忌追善 実相寺昭雄 特撮ナイト」に、たくさんの人たちが集まってくださったことに感謝です。
プログラムは・・・
【トークショー】庵野秀明監督、樋口真嗣監督、樋口尚文監督
『ニッカウヰスキーCM集』(約15分)
『KAN TOKU 実相寺昭雄』(2016/30分/BD/ドキュメンタリー)
『シルバー仮面』1・2話(1971/BD/TV作品)
『実相寺昭雄監督作品ウルトラマン』(1979/102分/35mm)
『ウルトラセブン』45話「円盤が来た」(1968/BD/TV作品)
『ウルトラマンダイナ』38話「怪獣戯曲」(1997/BD/TV作品)
『帝都物語』(1988/135分/35mm)
庵野秀明監督、樋口真嗣監督、樋口尚文監督の揃い踏み
上映に先立って行われた、庵野秀明監督、樋口真嗣監督、樋口尚文監督のお三方によるトークショーが秀逸でした。
司会役の樋口尚文監督に促され、『帝都物語』に参加していた当時、実相寺監督がいかに「ツンデレ」だったのかを、笑わせながら語ってくださったのは樋口真嗣監督です。
真嗣監督は、『帝都』の絵コンテ全編を描いた人ですが、劇中で、いとうせいこうさんが演じた、今和次郎が手にするフィールドワークノートを、「ページを何枚めくるかわからないから、全部書いておいて」と実相寺監督に言われ、徹夜で準備したそうです。とにかく「ツンデレ」の監督を喜ばせたくて、「何でもしました」と懐かしそうに語っていました。
庵野監督は、小学生時代に見た、実相寺監督の『怪奇大作戦』がいかに怖かったかを回想し、大学時代にあらためて『京都買います』や『呪いの壺』などを見直した時、「こんなすごいことをやっていたのか」と驚いたそうです。
また、この日に上映された映画版『実相寺昭雄監督作品ウルトラマン』について、この作品の「とにかくオープニングタイトルが大好き」と何度も言いながら、アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』のオープニングへの強い影響を明かしてくれました。
『ニッカウヰスキーCM集』の衝撃
そして上映会。スタートは、直前まで公表されていなかった、『ニッカウヰスキーCM集』です。
実相寺監督は映画やドラマのほかに、実に数多くのCMを手がけてきました。中でも、アメリカのソプラノ歌手、キャスリーン・バトルが歌った『オンブラ・マイ・フ』で知られるニッカのシリーズCMは名作ばかりです。
「わたしは美味しいウヰスキーを知っています」という、山崎努さんの渋い声のナレーションを記憶している人も多いはずです。
今回、保存されていたフィルムを、撮影した中堀さん自身がチェックし、ニッカのご協力を得て、スクリーン上映することができたのです。私も劇場のうしろの壁際の中央に、中堀さんと並んで立って見ていました。
移動撮影を多用した中堀さんのカメラワーク。やはり実相寺組の牛場賢二さんの絶妙な照明。そしてロケ現場に凛として立つ、キャスリーン・バトルの歌と存在感が圧倒的でした。まさに、ディーバです。
13回忌の先へ・・・
このCM集のあとは、実相寺組の勝賀瀬(しょうがせ)重憲監督が撮った、ドキュメンタリー映画『KAN TOKU 実相寺昭雄』に続き、『シルバー仮面』から『帝都物語』まで、実相寺作品が朝まで上映されました。
13回忌は、あくまで1つの区切りです。これからも鬼才・実相寺昭雄監督とその作品を、様々な形で次代に伝えていく活動を続けていきたいと、研究会一同は思っています。
合掌。