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髙橋遥人(阪神タイガース)、3ケタの背番号「129」からの再起

土井麻由実フリーアナウンサー、フリーライター
明るい笑顔の髙橋遥人

■ブルペン投球を再開

 2021年11月に左肘のクリーニング術、翌年4月に左肘内側側副靭帯再建術(トミー・ジョン手術)、昨年6月に左尺骨短縮術および左肩関節鏡視下クリーニング術を受け、じっくりとリハビリに時間をかけてきた阪神タイガース髙橋遥人投手。

 9月には力を入れたキャッチボールを見せ、「2021年の最後に投げていたときよりも、今のほうがボールはいい」と、きっぱりと言っていた。

 その後も一歩ずつ歩を進め、昨年末にはブルペンにも入った。年が明けてからも2度ブルペンに入り、順調な様子を窺わせる。

力強いキャッチボール(左は島本浩也、右は野口恭佑)
力強いキャッチボール(左は島本浩也、右は野口恭佑)

■背番号「129」

 ただ、何かが違う。違和感の正体、それは背番号だった。まだ自主トレ中なのでユニフォームは着ていないが、ウェアの袖に入った「129」に、何とも言えない思いを抱いてしまう。髙橋投手は育成契約に切り替わったのだ。

 背番号3ケタの育成選手になったことについて、髙橋投手は口を開いた。

 「今までずっと支配下で待ってもらってたのに、ずっと(復帰)できてなかったんで。僕が2年間、枠を使ってたんで、そういう意味では育成のケガしないでやってる人たちにも申し訳ない気持ちもあったんで…。それでももちろん、自分は試合に出ようって頑張ってはいたんですけど、それもできなくて、結果、枠を埋めただけになってしまって…」。

 常に周りを気遣う髙橋投手らしい言葉だ。

 「育成になってよかったっていうのはないですけど、まぁしょうがないですかね…いや、しょうがないっていうか、そうなるものだと思ってたんで。逆に2年待ってもらってありがたかったです。普通にケガさえなければ、戻れば結果はついてくると思うんで、まずは戻すことが一番ですね」。

 完全回復さえすれば、いつでも2ケタに復帰できる。その日を目指し、腰を据えて復活への道程に向き合うだけだ。

左袖の背番号
左袖の背番号

■「順調なのかなって感じ」

 現在の状態を「どんどんよくなっている感じはある」と言いつつも、「でも、じゃあそれが、あとどれくらいなのかっていうのは、いまいちわからない。よくはなってるけど、どこまで上がるのかっていうのもけっこう不安っていうか、どこが頂点なのかなっていうのがある」とも明かす。

 自身も未知の世界なだけに、さまざまな思いが去来するのだろう。しかし、それを打ち消すように「でも、よくなってるのはほんと、間違いないんで。まぁ順調なのかなって感じですね」と明るく笑った。

練習の合間の談笑
練習の合間の談笑

■手首の可動域

 髙橋投手が「よくなっている」と感じるのは、具体的にどういうことを指すのだろうか。詳しく説明してくれた。

 手術をした左手首は今もまだむくんだり、動きづらさもあったりし、可動域に制限があるという。そりゃそうだ。メスを入れたのだから。その制限があることで、まだ思いどおりに投げられないところはあるが、以前よりは投げることができている。

 「めっちゃわかりやすく言ったら、遠い距離だとリリースが後ろなんで投げられるけど、近い距離で思いっきり投げたら自分が思ってるところじゃないところに飛んでいく。リリースが前になってくるんで」。

 このとき、手首をそらすような動きをして見せ、「これが出ないんで」と可動域に制限があることを示す。そういえば昨秋も、体を大きく使う遠投はしていたが、「近い距離は、もっとじっくりやってから」と話していた。そういうことかと合点がいった。あのころはまだ、今よりも手首が動いていなかったのだ。

遠い距離を投げる
遠い距離を投げる

 また、「こういうのが出ない」と言って手首を左右にひねる動作をし、この動きは右打者のアウトコースに投げるときに重要なのだと解説する。

 「2021年は右の外と左の内は全く投げてないです、ストレートは。もともと投げづらいとかはなかったけど、2021年は投げてないんです」。

 そのころはずっと手首の違和感が気になっていたため、投げられなかったのだ。しかし当時、手首を気にしている間に痛めた肘に焦点が当てられており、そちらの手術が急がれたという経緯があった。

 だが今、手術をしたことで手首の不安は解消し、術後のリハビリで可動域は広がりつつある。徐々にではあるが思いどおりに投げられるように、近づいてきている。それこそが、髙橋投手が「よくなってきている」という感じる部分でもあるのだ。

佐藤蓮(左)も支配下復帰を目指す
佐藤蓮(左)も支配下復帰を目指す

■「止まっている感はない」

 まだ途上ではあるが、「どんどんよくなっています。もうあんまり止まってる感はないですね。どんどん、ちょっとずつよくなってる感じです」との手応えが深まっている。これまで幾度となく行きつ戻りつしてきたが、「止まってる感はない」という言葉が頼もしい。着実に前進している証しだ。

 可動域の制限が広がることと投げる感覚のよさは比例し、「一緒ぐらいで上がってきている。動きはもっと出てくるんじゃないかな」と、自身も実感している。

 ただ、「でも、まだまだっすけどね。みんなと比べたら、ほんとに。まだまだっすよ」と、先走りそうになるこちらの機先を制する。だが、「感覚がいい」のは間違いないようだ。

 12球団一とも言われる投手王国であるタイガースに髙橋投手が戻ってきたら、その牙城はどれほど強固なものになるのだろう。

 常勝チームを築くためには欠かせない、重要な1ピースである髙橋遥人の完全復活が待たれる。

小川一平に耳をつままれている?
小川一平に耳をつままれている?

(撮影:筆者)

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フリーアナウンサー、フリーライター

CS放送「GAORA」「スカイA」の阪神タイガース野球中継番組「Tigersーai」で、ベンチリポーターとして携わったゲームは1000試合近く。2005年の阪神優勝時にはビールかけインタビューも!イベントやパーティーでのプロ野球選手、OBとのトークショーは数100本。サンケイスポーツで阪神タイガース関連のコラム「SMILE♡TIGERS」を連載中。かつては阪神タイガースの公式ホームページや公式携帯サイト、阪神電鉄の機関紙でも執筆。マイクでペンで、硬軟織り交ぜた熱い熱い情報を伝えています!!

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