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術後の髙橋遥人(阪神タイガース)が屋外ウォーキングを開始

土井麻由実フリーアナウンサー、フリーライター
鳴尾浜球場の外野を歩く髙橋遥人

■3度目の手術

 「外はいいですね」。そう言って、髙橋遥人投手は小さく微笑んだ。

 術後、初めて屋外に姿を現した。外野フェンスに沿ってゆっくりゆっくり歩を進めるウォーキングを終え、額にかすかに汗をにじませている。その表情は晴れ晴れとしていた。

 阪神タイガースから衝撃の発表があったのは6月16日のことだった。

 「髙橋遥人投手は愛知県内の病院で『左尺骨短縮術』及び『左肩関節鏡視下クリーニング術』を無事に終え、本日退院しましたのでお知らせいたします」。

 同時に髙橋投手のコメントも添えられていた。

 「もう一度マウンドに立つチャンスをいただいたことに対して、球団の方々に本当に感謝しています。そして、チームが戦っている中で戦力になることができず、ファンのみなさまの期待に応えることができずに、申し訳ない気持ちでいっぱいです。必ずマウンドに戻ってくることができるように、あと少しリハビリを頑張ります」。

 そういうことだったのか…。鳴尾浜球場で春先から何度か会話を交わしたが、いつも自身の現状は話しにくそうで、自ら話題を変えたりすることもあった。「前向きにやってます」とか「元気ですよ」とか、明るい言葉を発してはいたが、無理しているところもあったのだろう。合点がいった。

■状態が上がらないときが一番きつかった

 今回の手術前を振り返って「一番きつかった」と打ち明けたのは、なかなか状態が上がってこなかったときだったという。昨年4月18日に左肘内側側副靭帯再建術(トミー・ジョン手術)をしたが、肘の回復に関しては「自分の中で早くてというか、全然投げられるなっていう感じだった」と経過は良好だった。

 1年後の今年の同日、「手術から1年ですよ」と自ら明かしたが、しかしそのころにはボールを投げる姿は見られなくなっていた。肘ではなく、髙橋投手を苦しめていたのは、別の箇所だったのだ。

 「痛くて上げられなかったんで。キャンプ中にやっぱ、どうしても上がってこなくて。痛いときというか、上がんないときが一番きつかった。気持ちは一回落ちた」。

 しかし検査をして症状を把握し、手術をすることで「次がある」と、もう前を向くだけだと気持ちを切り替えることができた。

 「これだけリハビリが長かったら、いろんな人に助けてもらっているんで、そこで自分が落ちても…って感じですかね。今はもう日に日によくなっていく。もう(気持ちが)落ちることはないですね」。

 そう語る表情も明るい。決して無理をしているわけではないのが窺える。

第一歩を踏み出した
第一歩を踏み出した

■右手を使うのがうまくなった

 昨日までは包帯をしていた手首に、今日からは固定器具を装着している。「(可動域に)制限はあるので動かないように。前までは曲がっている状態だったので、次の段階で伸ばしてオッケーになった」と一段階進んだようだが、「動かしちゃいけない角度もある」と固定している。

 左利きだが日常生活でも「だいたい右(手)を使って生活しています。でもトミー・ジョンして、だいぶ右を使うのがうまくなったんで、全然苦じゃないですね(笑)」と食事も右で不自由なくできているという。固定器具は1ヶ月半ほど着ける予定だ。

 当面は「まだ歩くだけですけど。ジョグとかはよくなるのかな、ちょっとずつ。ウエイトは足だけだったらいいんじゃないですかね。(おもりを)持てないので、自重じゃないですかね」と、できることを徐々にやっていく。

 歩みはゆっくりでも、間違いなく快方に向かっている。

もくもくと歩く
もくもくと歩く

■待ちわびるファンへ

 首を長くして復帰を待つファンへのメッセージを促されると、「申し訳ない」を3度繰り返した。「何回も同じこと…同じことというか、長引いてるんで」と言ったあと、「もうないかな。次は投げられるようになります」と続けた。

 ファンの期待は痛いほど感じている。なにより髙橋投手自身が、早くファンの前で投げる姿を披露したいと強く願っている。

 「また(投げる姿を)見せられるように、一生懸命に頑張るだけですね」。

 柔らかい笑顔はいつもと変わらないが、その瞳には強い光が宿っていた。

必ず復活する
必ず復活する

(撮影はすべて筆者)

フリーアナウンサー、フリーライター

CS放送「GAORA」「スカイA」の阪神タイガース野球中継番組「Tigersーai」で、ベンチリポーターとして携わったゲームは1000試合近く。2005年の阪神優勝時にはビールかけインタビューも!イベントやパーティーでのプロ野球選手、OBとのトークショーは数100本。サンケイスポーツで阪神タイガース関連のコラム「SMILE♡TIGERS」を連載中。かつては阪神タイガースの公式ホームページや公式携帯サイト、阪神電鉄の機関紙でも執筆。マイクでペンで、硬軟織り交ぜた熱い熱い情報を伝えています!!

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