シリア:米軍に立ちはだかる農夫、ロシア軍に卵を投げつける白衣の女性、革命家に抗議する住民(映像あり)
米軍パトロール部隊に立ちはだかる農夫
国営のシリア・アラブ通信(SANA)によると、シリア政府と北・東シリア自治局の共同統治下にあるハサカ県タッル・タムル町近郊のダシーシャ村とカーヒラ村の住民が5月12日、農具を片手に街道を封鎖し、米軍装甲車からなるパトロール部隊の進行を阻止した。
英国で活動する反体制系NGOのシリア人権監視団によると、米軍のパトロール部隊に対峙したのは、親政権の農夫と民兵(国防隊隊員)。
米軍部隊はパトロール活動を中止し、退却を余儀なくされた。
ロシア・トルコ軍の合同パトロール部隊を白衣の女性らが妨害、爆発も発生
シリアのアル=カーイダであるシャーム解放機構が軍事・治安権限を握るイドリブ県では、反体制系サイトのEldorarなどによると、ロシア軍とトルコ軍が5月12日、アレッポ市とラタキア市を結ぶM4高速道路で合同パトロールを実施した。
両軍合同部隊はサラーキブ市近郊のタルナバ村を出発し、アリーハー市近郊に向かって西進した。
だが、アリーハー市近郊で住民らの抗議に遭い、パトロール活動の中断を余儀なくされた。
パトロール部隊に対峙した住民のなかには、白衣を来た女性の一団もおり、彼女らはロシア軍装甲車に卵や石を投げつけ、「ロシアは私たちの敵、バッシャール・アサドは私たちの敵」などと言って、抗議の意思を示した。
また抗議行動が行われた現場近くでは爆発が発生した。爆発が何によるものかは不明。
なお、トルコ国防省は、ツイッターなどを通じて合同パトロールが実施されたと発表したが、抗議行動については言及していない。
また、ロシア国防省もこの件について声明などは発表していない。
「革命家」がIDPsを強制退去としたことに抗議するデモ発生
イドリブ県では、シリア人権監視団によると、反体制武装組織の一つシャーム自由人イスラーム運動が5月12日、フーア市内で発生した抗議デモを、空に向けて実弾を発射するなどして排除した。
抗議デモは、シャーム自由人イスラーム運動が市内の民家1棟を軍事拠点化するとして、この民家に住んでいた国内避難民(IDPs)の一家を強制退去させたことを受けたもの。
強制退去を余儀なくされたのは、未亡人と孤児4人からなるヒムス市出身のIDPsの一家。
シャーム自由人イスラーム運動は、トルコの支援を受ける国民解放軍(国民軍)に所属し、「自由シリア軍」、「革命家」を自称するが、アル=カーイダの系譜を汲んでいる。
フーア市は、隣接するカファルヤー町とともに、政府を支持する12イマーム派信徒が多く暮らしていたが、長年にわたり反体制派の包囲を受け、2018年までに全住民が政府支配地域に避難した。その後、政府との和解を拒否したダマスカス郊外県東グータ地方やヒムス県の反体制派やその家族がIDPsとして移住してきた。
(「シリア・アラブの春顛末記:最新シリア情勢」をもとに作成)