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オートバイのあれこれ『CBナナハン以来の“デカさ”。CB1000SF』

Rotti.モトエンスー(moto enthusiast)

全国1,000万人のバイク好きたちへ送るこのコーナー。

今日は『CBナナハン以来の“デカさ”。CB1000SF』をテーマにお話ししようと思います。

レーサーレプリカモデルが流行し、とにかく“スペック”を追うバイク作りが続けられていた1980年代。

そんななか、ホンダの社内では新たな方向性を望む声が上がるようになりました。

「スペック至上主義はそろそろ終わりにして、人間の感性に訴えかけるような風格を感じるバイクを作れないだろうか」

当時のホンダの二輪開発部内には、『CB750FOUR』や『CB1100R』などにかつて憧れたエンジニアが少なからずおり、彼らの思い出の中にあった“威風堂々たるCB”を再度実現しようという機運が高まり始めたのです。

▲CB1100R〈1981/画像引用元:本田技研工業〉
▲CB1100R〈1981/画像引用元:本田技研工業〉

もっともこの背景には、カワサキ『ゼファー』が想定外のヒットを記録し、トラディショナルなネイキッドスタイルに需要があることが判明したこともあったと思われますが、時代がレプリカブームからネイキッドブームへと移行する転換期に、ホンダの二輪開発部は「迫力あるCB」を今一度作ってみることを決意。

そうして誕生したのが、92年デビューの『CB1000SF』(CB1000スーパーフォア)でした。

▲CB1000SF〈1992/画像引用元:本田技研工業〉
▲CB1000SF〈1992/画像引用元:本田技研工業〉

『プロジェクトBIG-1』というコンセプトを掲げ生まれたCB1000SFは、「BIG」の文字どおり、大型バイクであることをこれでもかというくらい主張する大柄な車格とされました。

全長2,220mm&ホイールベース1,540mmは、同時期のライバル『ゼファー1100』のそれ(全長2,165mm&ホイールベース1,495mm)を余裕で凌駕。

▲ZEPHYR1100〈1991/画像引用元:川崎重工〉
▲ZEPHYR1100〈1991/画像引用元:川崎重工〉

かつて、本田宗一郎氏が『CB750FOUR』の完成車を初めて見た時、「こんなにデカいの、誰が乗るんだ?」と言い放ちましたが、まさしくCB1000SFは「こんなにデカいの、誰が乗るんだ?」と思ってしまうのも無理はないくらいのボディサイズとなっていました。

車格の大きさという点では「CBナナハン以来の衝撃!」と表現して差し支えないかもしれませんね。

〈実は私(身長172cm)もCB1000SFの実車にまたがったことがありますが、たしかに車体は大きいです。個人的推測になりますが、身長が170cmない人だと、CB1000SFの取り回しはおそらく“気合いの要る仕事”になるでしょう〉

▲CBR1000F〈1989/画像引用元:本田技研工業〉
▲CBR1000F〈1989/画像引用元:本田技研工業〉

エンジンのほうも、ビッグバイクらしい重厚なトルクを味わえるよう、ツアラーモデル「CBR1000F』のものをベースに低速トルクを強化。

低回転域から大きな車体を豪快に前へ押し出すフィーリングを優先し、これが結果的にはストップ&ゴーの多い街中での扱いやすさ(=低回転域における信頼感)へとつながって、CB1000SFは「一度動き出せば乗りやすい」という評価とともに人気モデルとなりました。

CB1000SFはその外観こそ迫力満点でワイルドな一方、乗り味はいかにもホンダ車的な優等生だったといえます。

以降、CB1300SFへと進化し、CB1000SFの血統は長寿となったのでした。

世の中の声に応えたのではなく、ホンダのスタッフの単なる“憧れ”がきっかけとなり生まれたCB1000SFが大きな支持を集めたことは、地味なようで実は奇跡的なことだったのかもしれません。

▲1994年にはビキニカウル装備の『T2』モデルも登場〈画像引用元:本田技研工業〉
▲1994年にはビキニカウル装備の『T2』モデルも登場〈画像引用元:本田技研工業〉

モトエンスー(moto enthusiast)

バイクを楽しむライター。バイク歴15年で乗り継いだ愛車は10台以上。ツーリング/モータースポーツ、オンロード/オフロード、最新バイク/絶版バイク問わず、バイクにまつわることは全部好き。

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