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産後のブルーで号泣、カウンセリング体験も

なかのかおりジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員
私は出産した翌日から涙が止まらなかった(ペイレスイメージズ/アフロ)

前回までに産後の体が、いかにぼろぼろになるかお伝えした。最近は、私が娘と日帰り利用した産後ケアセンターのような施設が増え、少しずつ取り組みが広がって希望もある。今回は、出産した翌日に激しいブルーに襲われて号泣しカウンセリングを受けた体験など、産後の心についてお伝えする。

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産後の心1・ブルー来たー!編(子育て支援NPOサイトに連載した「アラフォー初めてママのときどきドキドキジャーナル」より)

●出産の翌日、ブルー来たー!

産後の体についてお伝えしていますが、心も切実。妊娠中や産後にブルーな気分になるというのは、よく言われています。私の産後ブルーは、ものすごい勢いでやってきました。出産した次の日、ちょっとしたきっかけで号泣し、止まらなくなったのです。

夫は産前から海外に単身赴任していて、おなかのベビーとふたり暮らし。子宮口がやわらかく早産がこわかったし、壊れてしまいそうな新生児を育てる心配もありました。私は動いて不安を解消するタイプなので、産休に入ってからはお料理教室やヨガなど予定でいっぱいに。心が折れないように、必死でした。

●「わかってくれない」号泣止まらず

お産は、軽かったと思います。娘がこつぶちゃんで胎盤も小さめ、つるんと出てきてスピードお産。生まれた後、病院のごはんもぺろりと食べました。次の日、昼間は元気だったのですが、夜に決壊。もろもろの緊張が、ホルモンの変化とともにどばっと吹き出したのでしょう。赴任先から飛行機を乗り継いで駆けつけた夫と話していて、「こんなに大変なのに、わかってくれない」。ひとしきり号泣です。その勢いに自分もびっくり。

お世話をしながらしくしく泣いて眠れず、顔がはれあがりました。朝になって、取り上げてくれた助産師さんに話すと、「ひとりで気を張っていたね。私も産後、泣けてきたしブルーがあったよ。しょうがないよ。慣れないことをしているのだから」とのこと。

●娘をとられる?感傷的に

娘が生まれてきて、「大事なベビーを、だれかにとられてしまうのでは」という気持ちになったのも驚きでした。おなかにいたことを思うと、さびしくてかわいくて泣ける。頑張っているのに、周りは勝手なことを言う。夫も赴任先に帰ってしまう。心おきなく甘えられる人がいない…って泣ける。ベッドでお昼ごはんを食べながら、またしくしく。

おみそ汁のおわんをひっくり返してしまい、こういうときベビーがやけどしたら大変というのも初体験で緊張。あれこれ感情がほとばしってきます。あいーっ、ふえーって細い声で泣く娘。感傷的になって「おなかから出て、びっくりしてずっと泣いていたんだね。おなかをけりけりしていたね」と話しかけると、ママをじーっと見ています。娘がこっちを向いてすやすや、夢を見てにこにこしている様子にも、じんわり涙。

●主治医、助産師の共感に安心

主治医に出産までのことを話すと、「ひとりで頑張っていたもんね。ひとりでやるのは大変ね。でも、自分でこれが無理ってわかっているから大丈夫」「私もそうだけど、身内ってむずかしくて衝突するわよね」。尊敬するドクターが共感してくれて、ほっとしました。

ごはんを持ってきてくれた助産師さんにも、「母乳の相談は、電話でも答えられるから」「これからベテランになるよ」と声をかけられて。ゆっくり娘と過ごしても、しくしく。

●ストレスになる人とは面会しない

私がそういう状態だと理解できない人もいました。どうしても会うストレスに耐えられないと思う人には、娘とだけ会ってもらいました。私は体調が悪いので病室から出られないと言って。「会ってあげればよかったのに」と軽く言うスタッフもいて、産後ブルーがわからないのかなあと思いました。

ママが心身を壊してお世話ができなくなったらどうすればいいのでしょう。看護師さんや助産師さんに会うと、それぞれにアドバイスが。病院のカウンセラーや、ショートステイができる産後ケア施設について教えてもらいました。

●妊婦友・先輩ママが来てくれた

入院中、夫が赴任先へ出発。心細くて、はらはら泣きました。身内に「ひとりだと売店にも行けないし、来てほしい」と頼んでありました。ところが「病院で付き添いは必要ないよね」「我慢しなさい」と言われ、悲しかったです。

心を支えてくれたのは、お友達でした。病院の母親学級で一緒だった妊婦のNちゃんはすぐに来てくれて、それ以降も「困ったら行くよ」と言ってくれました。

Fさんは、初めての妊娠で早産しそうになって長期入院していたとき、私が何度かお見舞いに行ったことを覚えていて、海外に引っ越す前だったのですが駆けつけてくれました。

もうひとりは知り合ったばかりの先輩ママ、Kさん。娘を抱っこして「美人ね」とにこにこ。「特殊な状況でよくがんばったね」。Kさんの明るいオーラに慰められました。

●退院間際、カウンセラーに会う

おまたやおっぱいは痛いし、お世話で寝不足だし、たびたび診察もあるし、疲れを通り越してぼーっとしています。体が限界を超えているので、心の揺れが余計に大きくなる。産後1カ月健診の予定表をもらって、「もう妊婦じゃないんだな」としみじみ。

さびしいな。もっと入院していたい。そのまま退院するのが心配で、病院のカウンセラーにお願いしました。退院する日の午後、病室に来てくれて、娘は預かってもらってお話。

カウンセリングといっても、子育て経験のある年上の女性心理士が、「うわー、大変」「えらい!」とうなずきながら親身に聞いてくれる感じ。「これまで数年間、過酷な状況でよくがんばった。自分をほめてあげて」「今月は、なまける。ひとりでよくマネジメントできている」と言われました。退院後も予約できると思うと、心強かったです。

●病院にいつでも相談できるけど…

病室をぎりぎりまで使わせてもらい、体重をはかったり、おっぱいを飲ませたり。2500グラムぐらいでミニミニの娘をおくるみにくるむと、助産師さんたちが「かわいい!」と励ましてくれました。一緒に写真を撮って、お別れ。

病院の母乳外来や産婦人科には、いつでも相談できると言われたけれど…。自宅に帰ると、新しい生活に慣れるため、気をつかう日々が始まります。ブルーの波は、続くのでした。

ジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員

早大参加のデザイン研究所招聘研究員/新聞社に20年余り勤め、主に生活・医療・労働の取材を担当/ノンフィクション「ダンスだいすき!から生まれた奇跡 アンナ先生とラブジャンクスの挑戦」ラグーナ出版/新刊「ルポ 子どもの居場所と学びの変化『コロナ休校ショック2020』で見えた私たちに必要なこと」/報告書「3.11から10年の福島に学ぶレジリエンス」「社会貢献活動における新しいメディアの役割」/家庭訪問子育て支援・ホームスタートの10年『いっしょにいるよ』/論文「障害者の持続可能な就労に関する研究 ドイツ・日本の現場から」早大社会科学研究科/講談社現代ビジネス・ハフポスト等寄稿

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