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産後の体 むくみと痛み、細切れ睡眠でぼろぼろに

なかのかおりジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員
産後につけた育児日記。授乳は1日に10回も。体中が痛く睡眠不足 なかのかおり撮影

産後うつの取材をしていると、出産した直後に母親の体がどんな状態になるか意外に理解されていないことがわかった。体中がむくみ、おっぱいはかちかち、おまたの傷に、寒気に、関節痛。ぼろぼろなのに1日10回を超える授乳やおむつ交換で寝不足だ。産後に育児日記をつけた筆者が振り返って、うつや虐待は特別なケースではないと痛感した。体験を紹介する。

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「産後の体1 ママはビギナー」(子育て支援NPOサイトで連載した「アラフォー初めてママのときどきドキドキジャーナル」より)

●ひどいむくみ、体重が減ってない!

時間がたっても、産後のことはよく覚えています。ヒトを製造して生み出すなんてすごいことをしたうえ、おっぱいを吸われて栄養も出ていくし、お世話で休みなし。40歳を前にしての初産で、夫は海外に単身赴任中。そのときの自分に、寄り添ってあげたいです。「自分がもうひとりいたら」というママって、結構いる! 子どものお世話や家事、仕事、困っているママのお手伝いなど、もうひとりいたら確かに便利。

産後に気になるのが体重です。病院で体重計にのるのですが、3キロ近いベビーと胎盤が出たのに、あまり減らない。私は妊娠中にプラス7キロで、それほど増えなかったもののショック。産後の便秘もあったし、おっぱいを製造するからか特に上半身がむくみました。だけど、おっぱいを飲まれるのでダイエットしなくても1カ月でするっと7キロ減でした。

●おまた・おっぱいの痛み、寒気も

入院中は血圧が高く、出産時に切れたおまたは、ちくちく。おっぱいもかちかち、ぱんぱんで痛くて、飲ませる練習で眠れず。あまりの疲れでぼーっとしています。産後5日で退院したらお世話はエンドレス。病院で最後の夜はベビーをみてもらって眠ったほうがいいと言われ、そうしました。自宅に戻ると、片付けや誕生にかかわる書類作り、シッターさんに頼む家事の説明など、やることが多くて動き回ってしまい、もっと休めばよかったな。

産後は家事を手伝ってもらったほうがいい、というのは本当です。ホルモンバランスも変わり、寒気がすごい。産後1週間ぐらいのとき、夜中に搾乳(さくにゅう)器を消毒しようと台所に立つと、がくがくと震えが止まりませんでした。季節は春のはじまり。病室は暖かかったので、寒い自宅でも油断して薄着だったんです。「私が倒れたら、娘はどうなるの」と心細くなり、コートやパンツを重ね着してカイロをはって布団に入りました。ぬれた洗濯物を干すときも、手先が冷たくてこたえましたね。

●食事も大事、嬉しかった差し入れ

授乳も、ビギナー。飲ませる角度がわからないし、吸っているのかなって心配だし。退院してすぐ母乳外来へ行ったり、自宅に来てくれる助産師さんに相談したり。おいしい母乳やママの体のために、バランスのいい食事が大事と言われます。宅配も活用して材料をそろえ、シッターさんにお願いしてシチューやお汁、煮物など温かくて栄養のあるおかずを作ってもらいました。すごくおなかがすくので、本当はよくないというお菓子も食べました。私は大丈夫でしたが、乳腺炎になったママもいるので気をつけてくださいね。

先輩ママが、洋菓子よりは母乳にいいというあんこのお菓子(あんぱん、桜餅、どら焼き)や甘酒、添加物を使わないお弁当を買ってきてくれました。「抱っこしてあげるから、食べて!」と気遣ってくれて、うれしかったです。アルコールやカフェインは自然ととりたくならない。授乳でのどがかわくので、ミネラルウォーターやハーブティーを飲みました。

●口ふさいだら泣き止む?と思う自分に恐怖

睡眠はもちろん、細切れです。3時間ぐらい眠れたらラッキー。夜中に泣くんです。うきゃーって。抱っこしてもおっぱいを飲んでも泣きやまない。初めてでどうしていいかわからない。代わってくれる人もいない。眠いし、疲れているし、口をふさいだら泣きやむかなーなんてぼんやり考える自分がおそろしくて震え上がり…。

抱っこして廊下を歩いているとき、床に落としちゃったらどうしようと真剣にこわくなった。産後うつや虐待は、「一部のひどいケース」ではないと思います。それぐらい、限界を超えたことをしているのです。至れり尽くせりの病院に戻りたいと思いました。産後のママがいたら、ベビーを抱っこして休ませてあげてください。昼間に1時間でもうとうとすると、違います。

●授乳は1日10回超、腰と手首が痛い

産後2週間ぐらいのとき、全身がくにゃくにゃーっとして力が入らずびっくり。疲れすぎたせいか、産む前からの緊張がとけたのか。

病院でもらって誕生からつけていた育児日記を見ると、娘は1日に10回以上、おっぱいを飲んでうんちやおしっこをしていました。新生児はずっと抱っこしているようなものですが、ある人に「抱きぐせがつく」「甘やかしている」と言われて、へとへとの心身にズドーン。昔はそういう説もあったけれど、いまは母親教室でも「できるだけ抱っこしてあげましょう」と言われるんですよ。

産後1カ月の健診では、ママとベビーの不安を相談できます。慣れない授乳と抱っこのせいか腰と手首が痛いと訴えると、産婦人科の主治医からは「安静にするしかないわね。難しいけど…。骨盤がゆるんでいるから、半年ぐらいかけて戻すつもりで」とアドバイス。

それまでほとんど外出しませんでしたが、親子とも異常なしで、お出かけを始めました。最初は近所のスーパーやATMに行ったり、桜の季節だったのでお散歩したり。歩いてベビー連れOKのサロンに行き、腕や腰、肩をマッサージ。産後は何人かの女性に、出張マッサージもお願いしていました。

●産後ヨガで体動かし、リハビリに

娘が1カ月半ぐらいのとき、初めて電車に乗って産後ヨガのクラスへ。ベビーを寝かせておき、あやしながらヨガをして、ママの体の回復をはかるというもの。みんなおっぱいを飲ませたりおむつを替えたりするし、泣いてもお互いさま。ベビー連れで過ごせる場は少ないので、安心できる空間で体を動かすと気分も前向きに。先生もママなのでわからないことも聞けます。ストレッチや無理のない筋トレは、産後のリハビリになりました。

おしゃれまで手が回らず、最初は部屋着みたいな服装で行きましたが、ヨガの後にママたちとランチするのも楽しく、社会復帰の第一歩でした。毎週のように通いましたね。お出かけすると、ベビー連れのあれこれも学べます。

ジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員

早大参加のデザイン研究所招聘研究員/新聞社に20年余り勤め、主に生活・医療・労働の取材を担当/ノンフィクション「ダンスだいすき!から生まれた奇跡 アンナ先生とラブジャンクスの挑戦」ラグーナ出版/新刊「ルポ 子どもの居場所と学びの変化『コロナ休校ショック2020』で見えた私たちに必要なこと」/報告書「3.11から10年の福島に学ぶレジリエンス」「社会貢献活動における新しいメディアの役割」/家庭訪問子育て支援・ホームスタートの10年『いっしょにいるよ』/論文「障害者の持続可能な就労に関する研究 ドイツ・日本の現場から」早大社会科学研究科/講談社現代ビジネス・ハフポスト等寄稿

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