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丸亀でのこぼれ話 野球教室とボランティアの中学生選手たち《阪神ファーム》

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
野球教室の前に掛布監督が声をかけ、香川ベースボールアカデミーの子たちと記念撮影。

 香川県にある四国コカ・コーラボトリングスタジアム丸亀(丸亀市民球場)は、2015年にオープンしました。こけら落としに行われた同年3月3日のオープン戦は阪神とソフトパンクの顔合わせ。この試合で、ルーキーだった江越大賀選手が新球場第1号ホームランを放ち、今もロビーにパネルが飾られています。

 阪神がウエスタン公式戦を初めて開催したのも、同じ2015年8月1日(土)と2日(日)です。ちなみに1日の試合で一二三慎太選手がホームランを打って、これが新球場第2号。きのう行われたルートインBCリーグ・石川との交流戦(金沢市民)で一二三選手と会い、その話をしたら「覚えてますよ!2号だったんでしょ?」と笑っていました。

 この2015年は、初日の練習時間を早めて14時から野球教室を行い、17時から試合。そして翌日が12時半開始のデーゲームと、暑い盛りになかなか過酷なスケジュールで…。それもあったのか、去年は7月29日(金)と30日(土)に18時からのナイトゲームを行い、野球教室は31日(日)の練習後に変わりました。おととし、去年はどちらも広島戦です。そして、ことしはまた少し変更され、29日(土)と30日(日)に18時開始のナイトゲーム、31日(月)が練習と野球教室。月曜日といっても、夏休みなので問題ないですね。

ピッチャー組の質疑応答タイム?
ピッチャー組の質疑応答タイム?
キャッチャー組は輪になって座る。
キャッチャー組は輪になって座る。

 昨年、2016年夏に丸亀で行われた、広島2連戦と野球教室などの記事はこちらでご覧ください。その中から、一二三選手のホームランなど一昨年の試合についての記事へも移行できます。

 7月29日分→<丸亀でのナイター 1戦目はカープの足にも翻弄されて大敗…>

 7月31日分→<丸亀のナイター2戦目は完封勝利!“故郷”で快投を披露した秋山>

 8月1日分→<最終日は野球教室で締めくくった丸亀のこぼれ話>

 上記の記事に秋山投手と丸亀の関係をご紹介していますが、ことしも秋山投手のご両親はお越しになりました。秋山投手本人は1軍に定着して、しかも10勝目前の活躍ですが、ご両親にとっても“故郷”での公式戦開催とあり、ことしも差し入れを持って訪問してくださったわけです。私までお土産をいただいて、いつもありがとうございます。

 試合前の掛布監督やコーチ陣、選手何人かとも会われて、そのたびに今季の活躍ぶりが話題に。ご両親は「ここにおられる皆さんのおかげ」と繰り返されましたが、そう言える活躍が何よりの孝行ですね。来年もまた笑顔で、1軍で頑張る息子さんの話ができますように!

月曜の野球教室(でも夏休み!)

 さて、ことしは初めて“月曜日”に開催された野球教室。参加したのは丸亀市、善通寺市、多度津町、琴平町、まんのう町の『香川県軟式野球連盟学童部』に所属している6チーム(榎内ブレイザー少年野球クラブ、多度津少年野球クラブ、郡家軟式野球スポーツ少年団、丸亀城東少年野球クラブ、高篠少年野球クラブ、善通寺タイガース)で、小学1年から6年までの81人です。

閉会式で挨拶する福永投手。「勉強になりましたか~?」とマイクを向けて
閉会式で挨拶する福永投手。「勉強になりましたか~?」とマイクを向けて
それを見て笑う(右から)藤浪投手、長坂選手、板山選手。
それを見て笑う(右から)藤浪投手、長坂選手、板山選手。
岡崎選手(左)と荒木選手も爆笑していました。
岡崎選手(左)と荒木選手も爆笑していました。
さらに(右から)高橋コーチ、筒井コーチ、今成選手も大笑い。
さらに(右から)高橋コーチ、筒井コーチ、今成選手も大笑い。

 まず投手と捕手、内野手、外野手の3グループに分かれました。投手と捕手はライトの芝生とファール部分で投球と捕球をします。ビッチャー組の仕切りは福永投手で、キャッチャー組は長坂選手。やはりルーキーに役割が回ってきますね。でも最初の大まかな段取り説明はキャッチャーを含めて福永投手が担当。「まずビッチャーとキャッチャーに分かれて、お話を聞いてからピッチングをしましょう!」てな感じで、大きな声でしっかりとやっていましたよ。

 キャッチャー組の責任者・長坂選手は「はい、集まって~。この辺でいいかな。じゃあ座ろうか」と輪になって自分も一緒に座り、話し始めます。ピッチャーの方は福永投手が仕切って質疑応答のような感じです。きっかけを聞き逃したんですけど、最初に石崎投手が(速い球を投げるための?)ボールの握り方などを見せて、次に藤浪投手が「自分は何に特徴があるか考えて、それを磨く。どれも中途半端にやっていると、いい選手になれないから」という話。みんな真剣に聞いています。私もです。

 そのあと「コントロールのいいピッチャーの話はいいの?」なんて突っこみがあったり、とにかく先輩投手がと口を挟んでくるんですよね。こういう時は。でも福永隊長は果敢にスルー(笑)。やがて、それぞれのバッテリーが向かい合ってのピッチングが始まり、笑顔と称賛の言葉を交えながら指導。後半は昨年と同じく、投手陣もバッティングをやっていました。

狩野総監督、熱血・良太先生

 野手グループに行ってみると、まず外野手がバッティングで内野手は守備から始まります。外野組は、子どもたち全員に「打つ人は前へ、他の人はもうちょっと後ろに下がって」などと説明する狩野総監督。さすがです。内野組はノッカーの新井選手と今成選手が盛り上げてくれるので、選手たちも大喜び。今成選手は、子どもの「フライお願いします!」などリクエストに応じて打ってあげるんですが、たまに強烈なライナーも来ます。本気の。

「トスする人が手を引いたら、自分もバットを持つ手を引いて準備」と良太先生。
「トスする人が手を引いたら、自分もバットを持つ手を引いて準備」と良太先生。

 入れ替わって内野組がバッティング、外野組が守備練習。捕球の見本を見せたりすると、子どもの目がキラキラしますねえ。また新井選手はいつものように、大粒の汗を流しながら熱血指導でした。一通り打ち終わったところで「ちょっとみんな集まって」と声をかけ、バットを持って身振り手振りのアドバイス。それを踏まえて2巡目に入ります。

陽川選手は外野で少年と何やら談笑中。
陽川選手は外野で少年と何やら談笑中。

そして、待ち時間を持て余す子に「オッチャンの小さい頃はな」と話しかけてあげる筒井コーチ。そういえば森越選手や陽川選手も、よく話しかけてあげていました。そういうの、すごく嬉しいでしょうね。平日でお父さんは来られなかったかもしれませんが、お母さんは一生懸命ビデオカメラを向けておられたので、いい記念になると思います。

“野球塾”の中学生たち

 さて、この野球教室でもティーバッテイングのトスを上げたり、球拾いをしたり、今成選手のノックが強烈すぎて捕れない子のカバーをしたりと大車輪の活躍だったのが、おなじみ『香川ベースボールアカデミー』の中学1年から3年の選手たちでした。高松市と丸亀市を拠点として開講している香川ベースボールアカデミーについては最初の方に貼りつけた昨年の記事でもご紹介していますが、現在の監督は、広島東洋カープや四国アイランドリーグでプレーされていた天野浩一さんです。

ことしのポスターはこんな感じでした。やはり掛布監督。
ことしのポスターはこんな感じでした。やはり掛布監督。

 このアカデミーは小学生からのスポーツ塾と、中学生からの硬式野球塾に分かれていて、野球技術の習得や体力の育成だけでなく子どもたちの心身をも育てるというもの。おととしから3年続けて球場へお手伝いに来てくれたアカデミーの中学生たちも、まさにその通り。毎年メンバーは変わっているそうですが、場所移動の際は全力で走り、出会った人には必ず大きな声で挨拶をして頭を下げています。

 ところが……ことしは初日に天野監督が雷を落としたとか。詳しくは聞けなかったものの、おそらく動きが緩慢になっていたというようなことでしょうか。それでも、みんな礼儀正しくて明るくて、本当に気持ちのいい子どもたちですよ。

試合前に休憩所のテントで。前列は右から天野監督、村尾局長、新名コーチ。
試合前に休憩所のテントで。前列は右から天野監督、村尾局長、新名コーチ。

 そうそう、昨年までは丸亀市生活環境部スポーツ推進課ホームタウン推進室室長として仕切っておられた村尾剛志さんが異動となり、ことしはユニホーム姿で参戦。アカデミーの局長さんだそうです。その村尾さんと立ち話をしていた時、そばを通りかかった子が「こんにちは!」と頭を下げて挨拶してくれたのですが、村尾さんは「いったん立ち止まってから挨拶しないと」と注意。

 その子は「あっ」という表情で、戻ってやり直すか…でも急いで行かなくちゃ…と一瞬の間にワ~ッと考えたんでしょうね。ものすごく困った顔に。私はあわてて「いいよ、いいよ。大丈夫」と言いながら、思わず吹き出してしまいました。

セカンドで送球を受けた!

 アカデミーの選手たちの仕事は、練習のための準備から始まります。練習が始まると外野で球拾いをしたり、用具の出し入れなど。30日のフリー打撃中、同時に守備練習も行われるんですが、ファーストでノックを受けていた新井選手と森越選手の送球を二塁で捕るというミッションを任された選手がいました。本来は手の空いたスタッフ(打撃投手やマネージャー、トレーナー)がやるところを、たまたま誰もいなかったのでしょう。時間にして数分、緊張の面持ちながら追いついた対応です。

たまたま人がいなくて、セカンドで送球を受けた土田くん。
たまたま人がいなくて、セカンドで送球を受けた土田くん。

 あとで話を聞いたら「すごかったです!」と感想を述べる土田くん(中学3年)。「どんな体勢からでも正確なボールが投げられていて」。なるほど。勉強になった?「はい!いい経験ができました」。緊張はしたみたいですが、楽しかったかと尋ねると「楽しかったです!」と笑顔。

 また毎年、アカデミーを卒業した高校生も何人かお手伝いに来ています。残念ながら高校3年の夏が終わってしまい、引退した野球部員ですね。今回も2人いました。高校3年なので、彼らがアカデミーにいた頃はまだ開催されていなかったため“初参加”。これまでもプロの選手と同じグラウンドにいるような経験はなく、どうだった?と聞くと「楽しかった!」と声を揃えます。この2人は、来年から大学で野球を続けるそうです。名前や顔は非公表ですが「阪神に入ったら取材してください」とのこと。4年後のドラフト会議、楽しみにしていますよ。

阪神が引き揚げた後、ユニホームに着替えてチームの練習。まずはランニング。
阪神が引き揚げた後、ユニホームに着替えてチームの練習。まずはランニング。
練習に備え、ベンチにきちんと並べられた道具類。これがすべての基本ですね。
練習に備え、ベンチにきちんと並べられた道具類。これがすべての基本ですね。

 それともう1つ。31日は野球教室の前に練習があり、それが終わるとフリー打撃で飛んだボールを拾い集めます。そのうち何人かが「場外へ出たボールも取ってきますか?」とスタッフに尋ねると「いいよ。そのままで。あ、もしかして探せる?もし取ってこられるなら取ってきて。見つけたらあげる」とのこと。そりゃもう猛ダッシュで行きましたねえ(笑)

 わざわざ球場の外まで行ってくれるんだから、見つけたら持って帰っていいよという許可が出たわけです。しかし、あとで確認したところ「わからなかった…」としょんぼり。でも何日か経って、ひょっこり出てくるかもしれませんね。もし見つけたら来年また教えてください。

 ことしは初日に行けませんでしたが、それでも歓待してくださった丸亀市や香川ベースボールアカデミーの皆様、本当にありがとうございました。来年もよろしくお願いします。

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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