【札幌市中央区&南区】「ガイド日記」普遍的で平和な気分になれる札幌を体感してもらう!
私ごとではありますが、実はこの春3ヶ月にわたって、ほとんど東京にいました。というのも東京でのガイド(通訳案内士業務)があまりにも忙しく、その間札幌に帰って来た数日に、まとめてこのYahooの記事のネタを仕入れていたりしました。
しかし、これからの夏の数ヶ月は北海道がむしろ日本の観光のメインステージのひとつとなります。備忘録を兼ねて、この後インバウンドガイド(外国人観光客を札幌や北海道にガイドとしてご案内)を担当した時の記録を、いつも少し鉄道オタクっぽいものや珈琲オタクっぽい記事に挟んで、時折紹介していきたいと思います。
市民目線からだけではなく、外部の目から見た札幌、というものを通してこの街の魅力を再発見できることもあるのではないか?と思うのです。
札幌の、「存在理由」に気づいてもらう。
今回のゲストはオーストラリアから来られたお二人です。歴史と文化に興味あるという事で、札幌と北海道が明治維新の後に紆余曲折がありながら日本となり、その首府として意図的に作られた街であると言うことを軸にまず説明しました。
工事中の赤れんが庁舎に早速行きました。工事中なのにきちんと等身大の赤れんがのパネルが展示されている律儀さにとても感激していました。
でも次に大切なアイヌの方々のことをもちろん説明しなくてはなりません。北海道には地下にある「アイヌ文化を発信する空間 ミナパ/minapa」へと向かいました。
日本と諸国の間に挟まれて苦悩したアイヌの方々や北方諸民族について思いを馳せる時間としました。
素晴らしいフクロウの大きなシンボルである木彫にしばし感動されていました。
また鮭がタバコをくわえて、パソコンを入力しているユーモラスな作品もとても気に入られたようです。こうした先住の方々のディスプレイが都市の真ん中にある札幌について、彼らはとても好印象を持たれたようですし、先住民族の方々に関してはオーストラリアの方々も大変理解が深いので、話が進みました。
と同時に、実質的な札幌のメインルートが地下にあるということ、つまり「チカホ」の機能性にも感激していました。
札幌は、アートの街でもあると感じてもらう。
そこから地上に上がり、札幌駅へ。安田侃氏が北海道を代表するアーティストであると言う説明をしながら、実はこの作品「妙夢」は札幌市民にとって、友達や彼氏彼女との待ち合わせに使う象徴的な場所だと説明しました。
そして、アートにも興味があるお二人だったので、先日数度訪問した直島の話をしつつ、実はこの安田侃氏の作品が、もう1人の偉大なアーティスト安藤忠雄氏と直島のベネッセミュージアムでコラボしている話などをしながら、安藤忠雄氏作品に対して伏線を貼っておきます。
札幌はアートの街でもあり、特に特定の主義主張に偏ることなく、常に多彩な価値観から普遍的なものを見出していく姿勢がある事を説明しました。かつてこの札幌駅のコンコースにSIAF札幌国際芸術祭のカウンターが置かれていて私も勤務していたことや、初回のSIAFの監督には先日惜しくも亡くなられた坂本龍一氏(私は同じく亡くなられた高橋幸宏氏と共に大ファンでした)が予定されていながら、体調の関係で実現しなかったことなどを語りました。
個人的にはもし日本のアートに詳しい方なら、2017のSIAFでは大好きな毛利悠子氏や、物書きの端くれとして私淑していた吉増剛造氏の事も語りたいところでしたね。
札幌の、さまざまな側面を感じてもらう。
その後、いったんタクシーを利用して札幌の景観を楽しみ寿珈琲で、コーヒーの好きなお二人には特徴的なネルドリップ(彼らにはフランネルを使ったドリップと説明した)を楽しんでもらいました。この方式の発展に寄与したのは、戦争中の各国の軍人たちでどうしてもコーヒーを飲みたい時は、配給品の靴下を使ってドリップして場合があったと説明しました。ご夫人はブラック、ご主人はホワイト(ミルク入り)を注文。特にご夫人の方が気に入られたようでした。
その後に二条市場見学。多くのカニや、特にホッケに強い興味を感じられていました。そして創成川公園をライラックを見ながら北上し、やはり安田侃氏の作品がお気に入りのようです。そしていつものレンガで作られた団塚栄喜氏の作品「たけくらべ」で少し身長が高く見える表示を楽しんでもらいつつ、川の両岸に見えるキリスト教の教会について解説しました。
つまり明治維新の後に西洋文化受容の実験場として機能した北海道の説明です。
そのまま時計台見学へ。1階の展示では、明治維新後の北海道に移住した日本人が西洋料理にトライしながら実は日本食は当然捨てられなかったこと、農学校の生徒たちはキリスト教に改宗したことを綺麗な英語で書かれた誓約書を使って説明すると、とても感動していました。
そして2階に上がり、ボストンから来た時計台の時計と同じシステムを使ったメカニックを説明し、ここには日本の太陽暦採用という歴史があることを説明。
札幌で、手軽に日本料理を作る体験をしてもらう。
さてランチタイムです。食事は、というと「北海道のお好み焼きを食べてみたい」と言うことで、大阪でも広島でもお好み焼きを食べていた彼らを、地元の人に愛されている風月の狸小路店にお連れしました。北海道では本来のお好み焼きのスタイルに乗っ取って自分たちで焼くんですよ、ということで早速トライしてもらいました。これは一番手軽に体験できる日本料理かもしれませんね。うん、海外の方にここでお好み焼き作ってもらうのは良いかもしれません。ここが札幌の学生たちにとっては「妙夢」同様に色々青春の思い出がある場所なのです、そう説明しました。
しかし北海道も大いに感じてもらいたいので、ここはクラシックで乾杯!です。
実はこの時点で、このワンデイツアーの最後はアートでクローズしようと思っていたのですが、お腹も空いたし結構歩いたので、大通公園のイサムノグチ氏の作品「ブラック・スライド・マントラ」の話をする機会を逸しました。この段階で、(そこから訪問候補のひとつであるモエレ沼公園に行くというストーリーが消え)もうひとつの想定していた安田侃氏から安藤忠雄氏の作品路線でクローズするしかないなと、お好み焼きを食べながら、真駒内滝野霊園の「頭大仏殿」の写真を見せたらとても行きたいといいます。前の記事でインバウンドに人気が出てきた場所のひとつとしてここを紹介しましたが、早速行くことになりました。
札幌は、「普遍的で民族や宗教に関係なくみんなが平和に暮らしていける」街であるというストーリーを感じてもらう。
さて、風月のある狸小路から滝野まで行けるかな、バスが間に合うかな?と調べたら、すすきの駅から真駒内駅に行き、その駅前から出る最後の滝野霊園行きのバスには間に合うけど、そのバスはそこで折り返しをするので、10分程度しか滞在時間がないのです。
という事で、往路は真駒内駅にまず行き、そこからタクシーで滝野霊園まで向かうことにしました。3000円少しでしたね。これで約25分の滞在時間が確保できました。
まず、真駒内滝野霊園に着くと、ズラっと並んだモアイ像にすごく笑ってくれました。
しかし頭大仏に行くと、とても感動して、また静かな気持ちになるようでした。安藤忠雄氏の世界に感動してくれたようです。
昨年、ここの大きめの置かれた鐘(おりん)を鳴らす時、外側からではなく、内側からヘリを撫でるように回しながら鳴らし、次に反対側もそうすると、ものすごく長くて複雑な反響が響くのに気付いたので今回もそうしてみると、あっという間に大仏の鎮座する空間全体が静かに鳴り、空を通過する雲と、安定している大仏の対比を感じることができました。とても今日のツアーの最後に静かで良い時間をもらったと言って頂きました。
私は、ここは公益社団法人運営の霊園であり、宗教や宗派に関係なく誰でも入れます。大仏も特定の宗教を表すのではなく、普遍的な価値を感じるようにシンプルな構成になっています。これがさまざまな葛藤や脅威にあがないながら、普遍的で民族や宗教に関係なくみんなが平和に暮らしていける場所でありたい、という考えの上に成り立つのが札幌、そして北海道の価値なのです。という説明をさせて頂きました。
彼らの祖先も大変な思いをしてオーストラリアに来たようです。平和を考える一端を札幌で感じてくれたら、それは嬉しいと思いました!
普遍的で、市民も旅行者も平和と幸せを感じることができる街、札幌。それはきっと色々な思惑や困難を乗り越えて達成されて来つつあり、またより進化していくものと信じ、一介のガイドとしての立場から、この美しい街の住民&紹介者として、これからもあちこちゲストを紹介していこうと思います!
■アイヌ文化を発信する空間「ミナパ」■
公式サイトは、こちら。
■SIAF 札幌国際芸術祭■
公式サイトは、こちら。
■札幌時計台■
公式サイトは、こちら。
■北海道のお好み焼き・焼きそば風月■
公式サイトは、こちら。
今回利用したのは「狸小路4丁目店」
■真駒内滝野霊園■
公式サイトは、こちら。
■「たけくらべ」■
参考記事(札幌市公園緑化協会)は、こちら。