Yahoo!ニュース

藤井聡太竜王(20)3年連続で銀河戦ベスト4進出 永瀬拓矢王座(30)とのタイトルホルダー対決を制す

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 12月6日。第30期銀河戦決勝トーナメント2回戦▲永瀬拓矢王座(30歳)-△藤井聡太竜王(20歳)戦が放映されました。棋譜は公式ページで公開されています。

 結果は118手で藤井竜王が勝ち、ベスト4へと進出しました。藤井竜王は準決勝で豊島将之九段-糸谷哲郎八段戦の勝者と対戦します。

 藤井竜王は3年連続でベスト4進出。一昨年に続いての2度目の優勝まで、あと2勝としました。

藤井竜王、永瀬王座の粘りを振り切る

 振り駒の結果、先手は永瀬王座。戦型は、両者ともに得意で研究の深い角換わり腰掛銀に進みました。

 藤井竜王は駒組がまだ終わっていないと思われたところで、34手目、早めに歩を突っかけていきました。以下も藤井竜王の指し手は早く、かなり先のところまで想定の範囲内であったことをうかがわせます。

 対して永瀬王座は自然に応じながらも慎重に読んで、早めに持ち時間の15分を使い切る進行となりました。

 進んで、永瀬陣が壁銀の悪形を強いられたまま本格的な戦いに入ったのに対して、藤井竜王の側は中段の飛車が永瀬陣によく利いている形。形勢は次第に藤井ペースとなりました。

 54手目。藤井竜王は時間を使って考えたあと、飛車を永瀬陣に成りこんでいきます。藤井竜王はそれほど自信があるわけではなかったようですが、きびしい攻め。飛金交換の駒損ながら、王手で角を成り込んで藤井竜王がリードしました。

 永瀬王座は自陣に駒を投入してすぐには崩れないように辛抱したあと、龍を自陣に引きつけて粘ります。永瀬王座が力を示し、形勢はほぼ互角へと戻ったようです。

 銀河戦では15分の持ち時間を使い切ったあと、1手1回の考慮時間を10回まで使えます。71手目を指す前に、永瀬王座は最後の考慮時間を使って、あとは1手30秒未満で指すことになりました。対して藤井竜王は考慮時間を3回残しています。

 71手目。永瀬王座は壁銀の悪形を直します。辛抱を続けた一手ですが、しかしここでは最善ではなかったようで、形勢の針は再び、藤井竜王に傾きました。

 79手目。永瀬王座は相手の馬と銀が利いているところに、ぐいと銀を出ました。はっとするような勝負手です。しかし藤井竜王はあわてません。銀を相手にせず、相手の龍を攻めて優勢をキープしました。

 ゆっくり勝ちにいく順もあるかと思われたところで、藤井竜王は永瀬玉を寄せにいきます。以下、いつもながらに正確に攻めがつながって、永瀬玉は受けなしに追い込まれました。

 118手目。藤井竜王は歩頭に桂を打ち捨てます。しゃれた手で、取っても取らなくても、永瀬玉は受けがありません。ここで永瀬王座が投了。藤井竜王の勝ちとなりました。

 藤井竜王と永瀬王座の対戦成績はこれで、藤井11勝、永瀬4勝となりました。

 今年度の将棋界でも抜群の実績を残している藤井竜王。銀河戦ではどうなるでしょうか。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

松本博文の最近の記事