Yahoo!ニュース

来季は日本?韓国?どうする!?”セクシークイーン”アン・シネに現在の心境を直撃!

金明昱スポーツライター
アン・シネは来季も日本ツアーに参戦したい気持ちでいる

 約3週間ぶりに日本ツアーに姿を見せたアン・シネ。今週はNOBUTA GROUPマスターズGCレディースに出場している。5月の日本初参戦から、“セクシークイーン”の愛称で大フィーバーした。そんな彼女の賞金ランキングは現在80位。来季の出場権が得られる上位50位までに入るのは難しい状況が続いている。来季の出場権を得るためにセカンドクオリファイングトーナメント(QT=予選会、10月31日~11月2日)出場も予定しているというアン・シネに、19日の初日終了後に現在の心境と今後の計画について聞いた。

――3週間ぶりの日本ツアー。最近のゴルフの状態はどのような感じでしょうか?

久しぶりに日本に来たのに、初日はスコアがまとまらず、すごく残念な気持ちではあります。ゴルフはその時々で調子が変わるので、良くもなく、悪くもなく、なんとも言い難いです。

――日本で出られる試合もわずかですが、現在はどこに目標を置いていますか?

今は日本のセカンドQTを受ける準備をしています。フル参戦できる順位でQTを通過できるなら、来年からは本格的に日本ツアーで試合をする気持ちでいます。

”セクシークイーン”アン・シネが来季の日本ツアー出場権を獲得するための条件と本気度

――5月のワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップから日本ツアーに初出場してから、“アン・シネフィーバー”が巻き起こりました。本当にいろんなことがたくさんあったと思いますが、振り返ってみて今はどういう気持ちでいますか?

本当にたくさんの方に応援してくれたり、注目してもらえるので、日本で試合するときはとても幸せな気持ちになります。今はとにかく来季の出場権を獲得することだけ考えています。今年は出場できる試合が限られているなかで、日本と韓国を行ったり来たりしていました。この試合は出場できて、この試合は出られないという状況ではなく、もっと気持ちに余裕があれば、今よりもいい成績を出せると感じることもあります。日本の試合に出ながら、韓国の試合にも出て、ツアー中にQTを受けるという負担から、精神的に余裕がなくなっていたんだと思います。

―― ひとつのことに中々集中できない辛さがあったということですね。

ええ。今年は自分のゴルフがどうこうというよりも、精神的に重い部分が多かったというのが本音です。日本では今でも注目してくれているので、その分、見ている人たちにいいプレーを見せたいという気持ちがあるのですが、試合に出られないと寂しい気持ちにもなります。

――日本のコースや環境に慣れるにはやはり時間がかかるのでしょうか?

海外での試合に慣れるには、1年はかかると言いますからね。私が日本で試合をしながら、感じたことが一つあります。それは韓国の選手が日本に来てからは、コースだけ慣れればいいというものではないということ。通訳やキャディなど、すべて周囲の人たちが初めて会う人たちばかりですし、日本のゴルフの文化に接するのも初めてです。日本ツアーに来るということは、ゴルフだけでなく、いろんなものが変わるということです。そういう意味では、日本に“慣れる”には時間がかかるものだと思います。それにしても日本1年目の(イ)ミニョン(今季2勝、賞金ランキング3位)はすごいですよね。彼女はコースの中に入ると本当に強い(笑)。

――それでも来季も日本でプレーしたい気持ちはあるということですね。

もちろんです。今年はチャレンジする気持ちで日本ツアーに参戦しましたが、ほかの韓国人選手たちは、1年目はしっかり日本に慣れるためにがんばっている。私も賞金シードを取れなかったといって、これで韓国に戻るのも寂しい気持ちがあります。QTから来季出場権を得ることができれば、来年は日本ツアーに専念する考えでいます。

――そういう意味ではこれからが正念場です。

これまで日本や韓国で出られる試合にはすべて出てきました。それこそ上位フィニッシュできたり、優勝するという気持ちもあります。それに加えて、QTに出場したとき、試合感覚を失わないようにしたいという気持ちがあります。出られる試合は大事に戦いながらも感覚を養い、QTで生かしたいですね。

――QTを受ける前に緊張はするものですか?

昨年もファイナルQTはそこまで緊張はしませんでした。いや? 緊張していたのかも(笑)。セカンドQTも少しは緊張していると思います。大事な試合ですからね。

――これからも日本でプレーすることを願っているファンはたくさんいると思います。

そういう方がたくさんいることにはすごく感謝しています。メディアもギャラリーも日本の女子プロゴルフ協会も、関心を持ってくださる方がたくさんいます。日本に来てから「あの選手には成功してほしくない」という声を聞いていたら、それはそれですごく寂しくなります。幸いにも私の周囲には応援してくださる方がたくさんいますので、とてもありがたいです。ただ、その分、いい結果を残せなかったときは、本当に申し訳ない気持ちになってしまいます。

――最後にファンへメッセージをお願いします。

 昨年は日本の試合に1度は出てみたくてQTを受けました。想像していたよりも多くの方が関心を持ってくださり、たくさんの試合にも推薦出場もさせていただきました。この1年で日本ツアーを終わるのはいけないとも思いました。それは自分のゴルフのすべてを見せられていないからです。そういう意味ではまだ日本ツアーでやりたい気持ちがあります。とにかくまずは2次QTにすべてを賭けています。ファイナルQTまで、絶対に通過しなければならない壁なので、それを乗り越えて来年はもっとたくさん日本の試合に出て、今年よりもいい姿を見せられるようにしたいです。一生懸命がんばっているので、これからも応援してください。

                  ※     ※     ※    ※

 この話を聞いたあとの翌20日、アン・シネに不運が襲った。NOBUTA GROUPマスターズGCレディース2日目に、初日からキャディバッグにクラブが15本入っていたことに気づき、LPGAに報告。

 罰打が加わり、通算14オーバーとなり「精神的にプレーできる状態ではない」とのことで棄権を表明。次戦のレギュラーツアー出場は未定だが、本人も話しているようにセカンドQT出場は決まっている。

 アン・シネにとって今季の日本での出来事は忘れられない記憶として残っている。結果を残せず、日本を去ることだけはしたくないという気持ちが彼女にはある。新たな挑戦を決断したアン・シネにとって、これから始まるQTは正念場だ。

それでも韓国ツアーのシードはプロになって一度も落としておらず、数々の修羅場を潜り抜けてきている。きっと期待に応えてくれるに違いない。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

金明昱の最近の記事