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”セクシークイーン”アン・シネが来季の日本ツアー出場権を獲得するための条件と本気度

金明昱スポーツライター
来季出場権を賭けて正念場を迎えているアン・シネ

 今季から日本ツアーに参戦しているアン・シネ。初戦のワールドレディスチャンピオンシップサロンパスカップから11試合を消化した。

 先週のミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープンでは、自己最高の12位タイでフィニッシュし、現在の賞金ランキングは80位。明日から開幕する日本女子オープンの出場権はないため、一端、韓国に帰国中だ。

 アン・シネが出場する試合は、必ずその一挙手一投足が話題になる。スポーツ新聞やゴルフ専門サイトがアン・シネの成績に関係なく、その結果は必ず記事になる。

 ホールアウト後の囲み取材では「明日のウェアは?」という質問は定番となっているが、それに対してアン・シネはユーモアを交えてしっかりと答える。お馴染みの光景になった。

 最近では、何を食べているのかについての質問も多いのだが、返ってくる答えが見出しになりやすいワードなので、取材する側としては追いたくなる気持ちもわからなくもない。

 この間、いくつかの日本のバラエティ番組にも出演しているが、その姿を見ても、アン・シネは注目されることをプラスと捉えている。

 “セクシークイーン”という単語が独り歩きし、どうしてもゴルフと関係のないことが話題になりがちだが、「何が何でもアン・シネを追う」という雰囲気は落ち着いてきたように思う。

 それでも、彼女のプレーを追うギャラリーやファンはいまだに多く、今年の日本ツアーでは今でも話題の選手に違いない。

人気よりもシード獲得が切実

 忘れてならないのは、彼女は今季、「日本のシード権を手に入れる」のが目標だということだ。

 できる限りのオファーをこなしながら、本業のゴルフに全力投球していると言ったところだ。

 アン・シネには最近も数々の取材オファーが来ているというが、それらをほぼ断っている状態だ。賞金ランキング50位までに与えられる来季シード権を獲得するために、猛練習中だという。

 彼女がどれだけ本気なのかがわかるエピソードをツアー関係者から聞いた。

「マンシングウェアレディース東海クラシックに出場するため、日本女子プロゴルフ選手権コニカミノルタ杯が開催された岩手県から最終日の試合が終わったあと、すぐに愛知県に移動しました。翌月曜日の早朝にマンシングウェアレディース東海クラシックの会場となる新南愛知CC美浜Cに向かったのですが、その日、ゴルフ場は指定練習日ではなくてクローズしていて、練習ができなかったんです」

 それほど、アン・シネは今、練習に飢えている。すべてはシード権を手にいれるためだ。

 ただ、現在の成績について、まだまだアン・シネ自身は納得していない。賞金ランキング80位の彼女にはシード獲得までには険しい道が続くからだ。

 今後はマスターズGCレディース(10月19~22日、兵庫)、大王製紙エリエールレディス(11月16~19日、愛媛)の出場が確定している。

 また、スタンレーレディス(10月6~8日、静岡)と伊藤園レディス(11月10~12日、千葉)はウェイティングから出場権が下りてくるのを待っている状態だ。

 つまり、多くて残り4試合の出場が可能。そこから大逆転でシード獲得の可能性も残されている。

過酷なQTにも参戦予定

 一方で、ツアーと並行して戦わなければならないのが、来季のツアー出場権を賭けたQT(予選会)だ。今のところアン・シネはQTの出場を予定しているという。

 現在賞金ランキング80位のアン・シネだが、このままの順位だとセカンドQT(10月31日~11月2日)からの出場となる。

 仮にサードQT(11月21~23日)から出場するためには、「樋口久子 三菱電機レディス」(10月27~29日、埼玉)終了時点で賞金ランキング70位まで入っていなければならず、いずれにしても、残りのトーナメントで結果を残して、賞金ランキングを上げていくしかない。

 そういう意味でも、来季も日本ツアーでのプレーを希望しているアン・シネにとって、10月、11月はまさに正念場なのだ。

 個人的に残念なのは、信頼できるキャディが日本を離れたことだ。初戦からアン・シネのバッグをかついできた韓国人キャディのナム・ギュハ氏が先週の試合を最後に韓国に戻った。

 ナム氏は元々プロゴルファーでゴルフに詳しく、アン・シネからの信頼も厚かった。何度か一緒に食事したが、とても穏やかな性格で、他の選手や日本人キャディとの交友もうまくやっていた印象が強かっただけにとても残念だ。

 アン・シネもSNSのインスタグラムで「実の兄がいない私に、実の兄以上に情がわきました。とても悲しい。私と一緒に行き来して大変だったでしょう?本当にありがとう」とメッセージを送っている。

 それでも後ろを振り返っている暇はない。生き残りを賭けた戦いはもう目の前に迫っている。いつもカメラには笑顔を向けている彼女だが、常に緊張感と戦っていることだろう。

 プロゴルファーである以上、戦う場所を確保できないことは、現在の日本での“立ち位置”を失うことを意味する。

 結果がすべてのシビアな世界――そのことを一番よく知っているのは、アン・シネ自身なのかもしれない。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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