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「新型コロナウイルスに負けるな!」 “バッターコール手洗い動画”が話題に

中川路里香フリーランスライター
手洗い動画より(写真提供 株式会社Baseball Planning)

新型コロナウイルス禍の影響で、スポーツの現場で時計の針は止まったまま。そんな中、多くのアスリートたちがさまざまなメッセージをSNSで発信し、多くの人々に勇気を与えています。野球界では、NPBが12球団の選手とファンとがキャッチボールをする動画を配信するなど、画面越しにファンに寄り添いぬくもりを感じさせてくれています。このような動きが、アマチュア球界や野球に携わる人たちからも起き始めているのです。

球場アナウンサーが新型コロナを撃退?!

球場でマイク越しにスタメン発表やバッターコールをする人といえば、球場アナウンサー。その球場アナウンサーたちが、YouTubeで手洗い動画を配信しています。まずは、球場でアナウンスを聞いているかのような臨場感たっぷりの動画をご覧ください。

1番・流水、2番・石鹸、3番・手のひら、指の腹、4番・手の甲、指の背……と、まるで試合前の打順発表さながらに手を洗う順番をコール。この通りに洗えば、しっかりと洗浄できることを狙っています。9番打者?のコールが終わると「試合終了です。しっかり洗った、あなたの勝利です! 本日の勝利投手は、手を洗い終えたあなた。敗戦投手は、COVID-19 新型コロナウイルスでした」のセリフで締めくくるこだわりようです。

プロの本領を発揮して、啓蒙と楽しさを両立

この動画を企画、制作をしたのは、球場アナウンサーを育成、派遣している会社、株式会社Baseball Planning(以下、ベースボール・プランニング)代表の藤生恭子さんです。「こんな時期だからこそ、一人でも多くの人が“元気になる”、“面白がれる”何かを提供したかった」と制作した理由を明かします。4番のコールを担当した伊藤有沙さんと一緒に画像作成や編集までを行ったそうです。

こだわりは、やはりアナウンス。というのも、登場する9人のアナウンサーは全員プロ。藤生さんが元オリックス・バファローズ二軍担当アナウンサーだったのをはじめ、他球団で以前マイクを握っていた人や、日本ハムファイターズや西武ライオンズで、また、女子プロ野球を担当している現役アナウンサーです。見終わった後に残る楽しかったなあ…という余韻は、プロの成せる技だったというわけです。

“野球ってやっぱり素晴らしい”それが原点

プロ野球が開幕していない今、テレビで流れる野球ニュースの映像といえば、無観客の球場で選手たちが分散して練習する風景ばかり。そんなある日、藤生さんは「特集なんかでこれまでの試合の映像が流れたんです。スタンドいっぱいのお客さんが1プレーに沸きあがっている光景が写っていて。ああ、野球ってこんなにもたくさんの人たちを喜ばせていたエンターテイメントだったんだ」と改めて気づいたといいます。

しかし、このような状況下ではアナウンサー派遣の依頼などあるはずもなく、仕事受注は皆無状況。「自分たちの仕事は、生きていく上で絶対に必要だ、というものではありません。だからこそ“声”を使って社会貢献できることを探していた」のだとか。「これまで私たちを楽しませてくれていたエンターテイメント、野球の良さを忘れられないためにも」。それらの思いを結集した今回の動画は、他所では真似のできない手洗い指南といえるでしょう。もちろん、みんなで新型コロナウイルスに勝ち、勝利投手となることを信じて。

社会人硬式野球チームからも新型コロナウイルス撃退を目指す動画が

ベースボール・プランニングの動画がきっかけで動き出したのが、社会人野球チームのHonda鈴鹿硬式野球部(以下、ホンダ鈴鹿)です。5,6年前からベースボール・プランニングがホンダ鈴鹿のオープン戦でアナウンスを担当しているという関係で、社会人野球チームにも何かできることがあるはず、と模索していた両者の思惑が合致し、同じく手洗い動画を作成、4月18日にチーム公式ツイッター上で配信しました。(下記の公式ツイッター画面から見られない方は、Honda 鈴鹿硬式野球部 公式ツイッター からご覧ください)

こちらは、おなじみ『全開ホンダ』という全国のHonda硬式野球部共通の応援歌をBGMに、プロ注目選手と噂される森田駿哉選手や松本竜也選手をはじめメンバー10名が出演。コールは、藤生恭子さんが担当しています。ホンダ鈴鹿ファンのみならず、野球ファンにとって心躍る動画なのではないでしょうか。その印象通り、配信からわずか2日で再生回数が約2万回を数え、『素晴らしい動画ですね』といった感想が届くなど、反響を呼んでいます。

ファンを思う気持ちが反響を呼んだ

アマチュア球界の現況がニュースではなかなか伝わってこない現状、この動画を見た人の中には、選手が見られて良かったと思われた方もいるかもしれません。まさに、今回の動画作成には、いつもチームを応援してくれている社内外全ての人へ、選手の元気な姿を見せたかったこともあったのです。「私たちは企業人であることを忘れずに、その範囲内でファンの期待に応えることも企業スポーツチームの務めだと思います」と、中濱さんは話します。それも含めて、社会貢献。今回の動画作成の意義は深いものがあります。

社会人野球の状況は、日本野球連盟が4月2日に11月下旬から予定されている都市対抗野球大会を除き、全ての大会中止を発表、なんとも寂しいシーズンとなっています。ホンダ鈴鹿はシーズンインしているこの時期、本来ならば一日練習ですが、現在は、終日勤務を終えた後、18~20時組と19~22時組に分かれ、時間帯を日替わりで練習と、短縮を余儀なくされている状況です。しかし、「今は我慢の時期だと全員が割り切って、都市対抗出場、日本一を目指し、日々練習に励んでいます」(中濱さん)とのこと。とりあえず、選手は全員、元気です!

今後もこのような活動を紹介していけたらと思います。

フリーランスライター

関西を拠点に活動しています。主に、関西に縁のあるアスリートや関西で起きたスポーツシーンをお伝えしていきます。

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