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乗鞍高原で花火大会を!6月1日開催、花火×お酒×空間の「信州はなびりうむ」は老舗煙火店の新しい挑戦

やた香歩里花火鑑賞士な旅ライター

2024年初夏、長野の乗鞍高原で花火大会が開催されます。「信州はなびりうむ in のりくら」は、高原の素晴らしい景色のなか、美しい花火と、美味しいお酒やフードを楽しむイベント。

魅力的なイベントですが、もうひとつの注目ポイントは、このイベントを企画・開催するのが、華松(はなまつ)煙火という煙火店(花火会社)だということ。

普段は粛々と花火を打ち上げる職人集団のイメージが強い煙火店が花火大会を主催することは、実はとても珍しいのです。さて、どんな花火大会になるのでしょう?

【信州はなびりうむ in のりくら】
開催日時:2024年6月1日(土)15時開場~21時閉場
※雨天決行、やむを得ず開催を中止する場合はSNSにて告知。
花火打上時間:19:30~20:00予定
会場:長野県松本市 乗鞍BASE
※当日の会場への入場はチケットが必要です。

「信州はなびりうむ」ってどんなイベント?

乗鞍高原は、標高3000mを越える乗鞍岳のすそ野に広がる高原。「信州はなびりうむ in のりくら」は、その乗鞍高原の標高約1500mに位置するキャンプ場「乗鞍BASE」にて開催されます。

「はなびりうむ」ってとても可愛らしい響きですよね。
花火と、空間を表す英語ariumとを掛け合わせた言葉なんだそうです。

そう、プラネタリウム(planetarium)や水族館(aquarium)に使われるariumですね。そう思うと、なんとなくイベント全体がイメージしやすくなったんじゃないでしょうか。

私は、2024年2月下旬にこのイベントをクラウドファウンディングサイト「CAMPFIRE」で知りました。(クラウドファウンディングはすでに目標達成で終了、「信州はなびりうむ」の開催は決定しています)

乗鞍高原で花火が見られる、というのが魅力的だったのはもちろんですが、もう一つとても興味深く思ったのが、「煙火店が主催する花火大会」だということでした。

華松煙火は創業150年の老舗煙火店

この花火大会を主催する有限会社華松煙火は、長野県松本市に拠点を構える煙火店で、明治7年(1874年)創業の老舗です。

画像提供:有限会社華松煙火
画像提供:有限会社華松煙火

煙火店は、地元の花火大会やお祭りでの打ち上げを担当することが多いので、関東に住む私はあまり華松煙火さんの花火を見る機会はありませんでした。
ですがある花火大会で出会った花火で、「華松煙火」の名前がしっかり記憶に刻まれました。

それは、2022年11月に愛知県蒲郡市で開催された「花火甲子園」で打ち上げられた「雨間(あまあい)に虹輝く」と題された作品。

10号自由玉の部:「雨間(あまあい)に虹輝く」
10号自由玉の部:「雨間(あまあい)に虹輝く」

丸い花火の真ん中が白く帯状に光り、そこが一瞬虹色に輝きました。
光が消えた後は、キラキラと雨の雫のような銀色の光が輝き、静かに消えていきました。

この花火、情景がしっかり伝わったのも素晴らしかったんですが、とにかく大きかった。客席からも感嘆の声が上がっていました。多くの方の印象に残ったようで、この花火大会で観客の投票による「特等 推し花火大賞」に選ばれました。

同じ花火大会の5号玉創造花火の部では「ビーチボール」という作品で準優勝

5号玉創造花火の部:「ビーチボール」 ビーチボールでおなじみの、表面が6分割されている形がきれいに表現されていました。
5号玉創造花火の部:「ビーチボール」 ビーチボールでおなじみの、表面が6分割されている形がきれいに表現されていました。

2023年の秋田県の「大曲の花火 春の章」の新作花火コレクション(若手花火師のコンクール)でも、新作花火の部で優秀賞を受賞、さらに特別賞の日本煙火協会会長賞を受賞しています。

そんな華松煙火さんは、なぜ花火大会を自分たちで開催しようと考えたのでしょうか? 華松煙火さんに伺ってみました。

イベントに対する華松煙火さんの思いとは

華松煙火「コロナ禍になり、地域のお祭りがなくなり、イベントの縮小も相次ぎました。そしてコロナが落ち着いてきてからも、お金が集まらないことや高齢化などで続けていくのが難しいと、やめてしまうところも出てきました。
これは当社だけの話ではなく、全国的に見ても、物価の上昇や人件費の高騰などで、花火大会を開催できなくなったところがあります。
この状況は、コロナが終わったからといっておさまるわけではないと思いました。でも、花火は長野県の伝統工芸品でもあるので、なくしたくはない。自分たちでも何かできないか?と考えて、イベントをやりたいという話になりました」

画像提供:有限会社華松煙火
画像提供:有限会社華松煙火

煙火店主催の花火大会だからこそできることは何でしょうか?

華松煙火:「やりたいことはたくさんあるんです。ですが、資金的にも1時間などの花火大会をやるのは難しい。なので、リターンで、花火についての裏側を知ることができるような見学ツアーを企画しました。花火について知識を増やしていただけるようなことをやりたいと考えています。

また、大規模な花火大会ではないけれど、その分保安距離(花火打ち上げ場所と観客や建物などとの間に必要な距離)ギリギリのところまで客席があるので、打ち上げ場所に近いところで見ていただけます」

確かに打ち上げ場所が近いと、迫力が全く違います。近距離で見るのは、大きな花火大会では難しいですし、いつもと違う感覚で楽しむことができると思います。

また、「花火の裏側見学ツアー」では花火師さんから花火の話を聞くことができる貴重な機会。さらに筒場(打ち上げ場所)の見学も内容に組み込まれていたので、これは花火好きの大人にとっても垂涎ものです。
なんといっても普段は筒場は立ち入り禁止エリア、入り込もうものなら花火大会自体が中止になってしまうほどの大問題になります。この「花火の裏側見学ツアー」のリターンは数量に限りがあったこともあり、早々に完売していたと思います。

画像提供:有限会社華松煙火
画像提供:有限会社華松煙火

煙火店として「ここを見て欲しい!」というところは?

華松煙火:「松本市内は住宅地や空港などがあるので、大きな玉を上げられません。最大でも5号玉※ くらいです。
うちでは尺玉※ まで作っていて、競技会でも賞をいただいています。地元の方に、普段は上げられない大きな花火も見ていただきたいです」

  • ※5号玉:直径約15cmの花火玉。上空約190mに上がり、約170mの大きさに開く。
  • ※尺玉:直径約30cmの花火玉で、10号玉とも。上空300m以上の高さに上がり、開いた時の直径も300m以上の大型花火。
2023年4月「大曲の花火 春の章」10号玉芯入割物の部「昇曲導付 四重芯細波菊」
2023年4月「大曲の花火 春の章」10号玉芯入割物の部「昇曲導付 四重芯細波菊」

華松煙火:「今回は、普段は松本市内では上げられない尺玉も上げます。まだ最終的にどれだけ打ち上げるかは確定していないのですが、尺玉を複数含む、メッセージ花火などの単発の花火、ミュージックスターマイン※ を予定しています。

  • ※ミュージックスターマイン:たくさんの花火を続けて打ち上げる「速射連発花火(スターマイン)」のうち、音楽とコラボして打ち上げるもので、人気のプログラム。
画像提供:有限会社華松煙火 過去に花火大会で上げたスターマイン
画像提供:有限会社華松煙火 過去に花火大会で上げたスターマイン

華松煙火さんの花火の特徴は、「色の鮮やかさ、そして、変わった変化をすること」だそう。近年は「時差式花火」と呼ばれる、光がくるくると回ったり、内から外へ移動したりと多彩な変化をする花火が人気なのですが(スライド花火やイルミネーション花火などの呼び方も)、華松煙火さんも多彩な挑戦をしておられます。

2022年花火甲子園や2023年「大曲の花火 春の章」の入賞作、また直近の競技会である、2024年4月の「大曲の花火 春の章」新作花火の部の作品もこのタイプでした。

2024年4月「大曲の花火 春の章」新作花火の部「くるりんパッ!」光がいろんなパターンでくるくる回ったり、最後にパッと飛び散るように光るなど、多彩な変化が楽しい花火でした。
2024年4月「大曲の花火 春の章」新作花火の部「くるりんパッ!」光がいろんなパターンでくるくる回ったり、最後にパッと飛び散るように光るなど、多彩な変化が楽しい花火でした。

そういう、変わった変化をする花火も楽しんでほしい、「花火自体を楽しむ」という体験をして欲しいと華松煙火さんはおっしゃいます。

華松煙火:「今ってどういう花火があるのかというのを1発1発楽しんでいただきたいし、ミュージックスターマインも楽しんでいただきたいです。

それに加えて、乗鞍高原は自然もとても素晴らしく、夜の星もすごく綺麗なところなので、その空間を味わいつつ、花火を楽しんで欲しいと思っています」

画像提供:有限会社華松煙火 会場イメージ。当日はお酒やフードのキッチンカーも出て、飲食も楽しめます。そのまま泊まれるキャンプサイトも(要クーポン購入)。
画像提供:有限会社華松煙火 会場イメージ。当日はお酒やフードのキッチンカーも出て、飲食も楽しめます。そのまま泊まれるキャンプサイトも(要クーポン購入)。

星がきれいに見える空気の澄んだところでは、花火もきれいに見えるんですよ。華松煙火自慢の鮮やかな色が一層引き立つのではないかと、とても楽しみです。

やっぱり見てみたい!と思ったら?

「信州はなびりうむ」のクラウドファウンディングは目標250万円でスタート。初めてのチャレンジで達成できるか不安だったとのことでしたが、1か月弱で達成、最終的には350万円を超えるまで伸びました。

ここまで伸びた理由は、企画の魅力に加え、リターンが多彩かつ手を伸ばしやすい価格であったこと、そして企画に込められた思いがたくさんの花火ファンに伝わったことだと思います。

入場は完全チケット制です。クラウドファウンディングは終了していますが、「信州はなびりうむ」のチケットは5月15日まで販売されています。

購入できるチケットは、入場チケットのほか、5月5日時点ではまだオートキャンプサイトの宿泊クーポンや、松本市内からの送迎バス付チケットもありました。

もう少し詳しい内容を知りたいという方、クラウドファウンディングで気になっていたけど支援しそびれたという方は、華松煙火さんの公式サイトからご確認ください。
また、支援期間は終了していますが、イベントの内容については、CAMPFIREの「信州はなびりうむ」のページがわかりやすいかと思います。

華松煙火公式サイト

CAMPFIRE「信州はなびりうむ in のりくら」のページ(リターンの購入はできません)

コロナ禍でたくさんの花火大会が中止になり、花火ファンも寂しかったですが、煙火店にとっては本当に苦しい時間だったことと思います。その経験から生み出した、「花火会社だからこそ」の企画。

華松煙火さんは、できれば今後も様々なイベントを開催したいという夢を持っています。その第一歩となる「信州はなびりうむ」の成功と、煙火店ならではのこだわりが美しい花火を咲かせることを心から楽しみにしています。

花火鑑賞士な旅ライター

宮崎生まれの大阪育ち。人生の約半分を京都で過ごし、現在は千葉在住。もとからの旅好きが、関東移住を機に花火にはまり、旅の目的に花火鑑賞が加わりました。遠くへの旅行も好きだけど、身近なお出かけも好き。どこかで見た素敵なものを、誰かに伝えたい。知って欲しい誰かと知りたい誰かを繋ぎたい。ビアテイスターで日本酒ナビゲーターで温泉ソムリエで花火鑑賞士な旅人。

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