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県境の会社境界駅に残る築94年の木造駅舎 高山本線 猪谷駅(富山県富山市)

清水要鉄道ライター
猪谷駅

岐阜県の県都・岐阜を起点に、下呂、高山、飛騨(古川)といった飛騨地方の都市を経て富山県の県都・富山に至る高山本線。大きく分けて岐阜県側はJR東海、富山県側はJR西日本という風に管轄がわかれている。その2社の境界駅となっているのが県境の富山側にある猪谷(いのたに)駅だ。

駅舎
駅舎

猪谷駅は昭和5(1930)年11月27日、笹津から延伸してきた飛越(ひえつ)線の終点として開業。昭和9(1934)年10月25日、岐阜側から伸びてきた高山線と富山側から伸びてきた飛越線が繋がったことにより、高山本線の駅となった。駅舎は開業時のもので、今年で築94年を迎える。クリーム色と腰部のワインレッド色の組み合わせは、千里、速星、西富山といった富山県内の他の木造駅舎にも共通する塗り分けだ。越中八尾駅も以前は同じ塗り分けだった。入口の車寄せに掲げられた青地に白抜きの駅名標が渋い。

駅舎内
駅舎内

分割民営化後はJR西日本の管轄となったが、平成18(2006)年12月1日に無人化。窓口跡は板で塞がれ、その前に自動券売機が置かれている。

駅の所在地は平成17(2005)年4月1日に富山市に編入されるまでは婦負郡細入村だった。猪谷は明治の町村制以前の村名で、現在も大字として残っている。江戸時代には富山藩が越中と飛騨の国境に設けた関所のある村だった。

駅構内
駅構内

かつては貨物輸送で賑わった駅だけあって構内は広い。富山方面からやってきて折り返すJR西日本の列車の中には、なぜか遠慮するかのようにホーム富山寄りの隅に停車する列車もある。

折り返し発車を待つJR東海の列車
折り返し発車を待つJR東海の列車

高山方面へ折り返すJR東海の列車は2番のりばの構内踏切に近い辺りに停車する。手前の切欠き部分はかつての3番のりばで、平成18(2006)年12月1日に廃止された神岡鉄道の列車が発着していた。神岡鉄道は亜鉛鉱山で栄えた吉城郡神岡町(現:飛騨市)とを結んでいた国鉄神岡線を三セク転換した路線で、貨物輸送の廃止と利用者の減少により廃止された。

ホームと時刻表
ホームと時刻表

猪谷駅は会社境界駅だけあって普通列車は当駅を境に分断されている。本数は高山方面が8本、富山方面が9本で、乗り継ぎは比較的考慮されている。他に特急「ひだ」が4往復直通しているものの、昼間は約4時間普通列車が来ない。富山県内の高山本線については、利便性向上のためにJR西日本からあいの風とやま鉄道への移管も検討されている。もし移管されれば増便なども行われて便利になりそうだが、果たしてどうなるのだろうか。

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鉄道ライター

駅に降りることが好きな「降り鉄」で、全駅訪問目指して全国の駅を巡る日々。

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