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難読駅名のおかげで詐欺を解決!? 高山本線 上枝駅(岐阜県高山市)

清水要鉄道・旅行ライター
上枝駅

 漢字からはその読みを想像できない難読駅名。鉄道ファンや地元民以外にとってはしばしば不便を強いる存在だが、そんな難読駅名が詐欺事件の解決に一役買ったことがあった。

駅名標
駅名標

 令和4(2022)年12月5日、岐阜県高山市に住む81歳の女性に孫を語る男から「会社の書類や財布をなくした」などの電話があり、女性は家を訪れた郵便局員を名乗る男に200万円を渡した。もちろんこの郵便局員は偽物で、特殊詐欺の典型な手口である。その日、市内の鳩タクシーというタクシー会社に男から配車依頼があり、行き先を尋ねると男は「うええだ駅周辺」と答えた。だが、「上枝駅」の正しい読みは「ほずえ駅」で、不審に思った鳩タクシーでは電話番号を控えていた。翌日にも同じ番号から電話があったため会社は警察に通報。男が詐欺事件に関わっていたことが判明し、逮捕に至った。犯人逮捕に協力した鳩タクシーには警察から感謝状が贈られている。

駅舎
駅舎

 事件の解決には鳩タクシーの機転を利かせた対応もさることながら、犯人が駅名を読み間違えていたことが一役買っていた。確かに「上枝」を「ほずえ」と読むことなど初見では思い至らないだろう。駅周辺は昭和18(1943)年4月1日に高山市に編入されるまで大野郡上枝村で、「上枝」は川上郷・三枝郷から一字ずつ取った合成地名だ。穂先を意味する「穂末(ほずえ)」を盆地北端に位置する当地に当てはめてこのような読み方をするようになったと言われている。

駅舎
駅舎

 上枝駅は昭和9(1934)年10月25日に高山本線の飛騨小坂~坂上間が開業した際に開設された。その時建てられた築90年近い木造駅舎が今なお現役で使用されている。かつては駅舎の隣に古い便所があったが、老朽化により令和4(2022)年1月に使用停止となり、その後解体された。

駅舎内
駅舎内

 上枝駅は昭和46(1971)年2月16日に無人化。無人駅となってから半世紀以上が経つが、駅舎は比較的状態よく残っている。

窓口跡
窓口跡

 駅員がいた頃に切符を売っていた窓口跡は塞がれている。その左隣は手小荷物を取り扱っていた窓口の跡だ。手前の台には本と地元の小学生がつくった蒸気機関車の模型が置かれている。

木製引き戸が残る
木製引き戸が残る

 駅舎からホーム側に出る扉は一枚の大きな木製引き戸だ。多くの駅では引き戸が撤去されたりアルミサッシに交換されているため、この引き戸は貴重な存在と言える。駅舎ホーム側の庇や外壁なども木のままで味わい深い。時間が止まったかのような光景だ。

駅舎 ホーム側
駅舎 ホーム側

 ホームは2面2線。駅舎はホームより一段低いところにあるため、ホームへは階段かスロープを上がる形になる。高山本線は比較的木造駅舎が多く残っている路線だが、それでも近年は建て替えが進んでおり、上枝駅の駅舎も今後が気になるところだ。

鉄道・旅行ライター

駅に降りることが好きな「降り鉄」で、全駅訪問目指して全国の駅を巡る日々。

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