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旅客機トイレ内喫煙「加熱式タバコ」も警報

石田雅彦科学ジャーナリスト、編集者
(ペイレスイメージズ/アフロ)

 加熱式タバコの利用者が急増しつつあり、紙巻きタバコから加熱式タバコに切り替えたことを禁煙と勘違いしている喫煙者も少なくない。プルーム・テック(Ploom TECH)やアイコス(IQOS)、グロー(glo)も喫煙具であり、たばこカプセルやヒートスティックなどを使用することは喫煙行為だ。

貨物室への預け入れはNO

 お盆で移動する人の増える時期だが、旅客機を使う人も多いだろう。加熱式タバコを含む喫煙具やリチウムイオン電池について、航空法で持ち込みに制限がある。

 国土交通省のホームページ(※1)によれば、小型の喫煙用ライター(小型安全マッチ)は1個のみ身につける手荷物(バッグなどに入れるのは不可)としてのみ機内へ持ち込むことが可能だ。だが、チェックイン前にカウンターで預ける受託手荷物(貨物室へのチェックインバゲッジ)にはできず、自身が使用するものに限られ、充填用のオイルやガス類、ピストル型ライターは持ち込み禁止となっている。

 加熱式タバコを含む電子タバコなどのニコチン供給デバイスについては、電池を内蔵した携帯型電子喫煙機器というジャンルがある。これらは予備のリチウムイオン電池を含め、受託手荷物にはできず客席内への持ち込み手荷物でしか携行できない。

 加熱式タバコも自身が使用するものに限られ、予備の電池は接点が触れ合わないよう別々に保護されていなければならない。リチウムイオン電池の場合、ワット時定格量100Wh以下のものでなければならず、機内での充電はできないことになっている(※2)。

 タイやシンガポールなど渡航先の国や地域によっては、加熱式タバコを含む電子タバコなどの電子式喫煙具を持ち込めなかったり、所持しているだけで罰金が科せられたりする場合があるので要注意だ(※3)。移動前に渡航先の情報を入手しておくことをお勧めする。

 また、トイレ内を含む航空機内での喫煙は、航空法が定める安全阻害行為にあたり違反した者は50万円以下の罰金に処せられる(※4)。これは加熱式タバコでも同様だ。

加熱式タバコも煙探知機が作動

 加熱式タバコを含む電子タバコの取り扱いについて、日本の大手航空会社に聴いたところ「機内では、他のお客さまの快適性を損ねるおそれや誤解を招くおそれがあるため、常時使用不可(参考:使用禁止のタバコ、火を使う、煙が出る、におい等で他旅客の快適性に影響を与える、紙巻タバコと見間違える形状)」(日本航空)、「弊社では、無煙タバコや、電子タバコ等の火を使わない喫煙器具も他のお客様への快適性を損ねる恐れがありますため、機内での使用をお断りしております」(全日空)と回答をいただいた。

 トイレ内には煙の探知機が設置され、加熱式タバコでも作動するようだ(※5)。最新のデータがないが、機内での喫煙行為は国内で年間数百件報告され、安全阻害行為の件数に占める喫煙の割合はダントツに多い(※6)。

 ただ、トイレ内のドアなどに灰皿が設置されている場合もある。これについてはFAA(米国連邦航空局)の規定で、誤ってトイレ内でタバコを吸った場合に吸い殻をゴミ箱へ捨てて火災を生じさせないための緊急避難的な措置だ。国交省はトイレ内の灰皿については、国内航空法の埒外としている(※7)。

 喫煙以外の安全阻害行為として、乗降口や非常口の扉の開閉装置をいじる、乗務員の職務を妨害したり指示に従わない、禁止されている電子機器の使用などがある。移動中の航空機内で同法の違反行為が発覚した場合、機長が命令書を出すことができ、警察への通報や引き渡しをしたり損害賠償を請求することもあるようだ。

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国土交通省が航空機内での安全阻害行為を防止するために作成したポスター。この中でも喫煙が件数で圧倒的に多い。

 安全な飛行が阻害されたり、万が一にでも機内で火災が起きれば、ダイバート(Divert、当初の目的地以外の空港などに着陸すること)したり乗客乗員、航空会社に多大な損害を与える。一部の加熱式タバコが発するあの焦げたような独特の異臭が苦手な人も多い。

 加熱式タバコもそうだが、せいぜい数時間の移動もタバコを我慢できないのなら旅行していても楽しくないだろう。この際、きっぱりと禁煙をお勧めする。

※1:国土交通省「航空機への危険物の持ち込みについて」(2018/08/10アクセス)

※2:アイコスで使用されているリチウムイオン電池のワット時定格量は、PMIによると「IQOSホルダー」0.4Wh、「IQOSポケットチャージャー」10.7Wh(2018/08/10現在)。ただ、正規品ではないサードパーティ製のバッテリーについては不明

※3:「タイで『加熱式タバコを吸う』と最大10年の懲役刑に」Yahoo!ニュース:2018/07/19

※4:国土交通省「航空法第73条の4第5項関係参照条文」(2018/08/10アクセス)

※5:機内トイレの煙探知機:日本航空は光学式(B787)と光学式とイオン式の併用(B737-800、B767、B777)、全日空は光電式

※6:国土交通省「航空機内における安全阻害行為等報告件数」(2018/08/10アクセス)

※7:国土交通省「『航空機内における安全阻害行為等を定めた航空法第73条の4第5項及び同法施行規則関連規定に関する意見の募集』に寄せられた主なご意見の概要とそれに対する国土交通省の考え方について」(2018/08/10アクセス)

科学ジャーナリスト、編集者

いしだまさひこ:北海道出身。法政大学経済学部卒業、横浜市立大学大学院医学研究科修士課程修了、医科学修士。近代映画社から独立後、醍醐味エンタープライズ(出版企画制作)設立。紙媒体の商業誌編集長などを経験。日本医学ジャーナリスト協会会員。水中遺物探索学会主宰。サイエンス系の単著に『恐竜大接近』(監修:小畠郁生)『遺伝子・ゲノム最前線』(監修:和田昭允)『ロボット・テクノロジーよ、日本を救え』など、人文系単著に『季節の実用語』『沈船「お宝」伝説』『おんな城主 井伊直虎』など、出版プロデュースに『料理の鉄人』『お化け屋敷で科学する!』『新型タバコの本当のリスク』(著者:田淵貴大)などがある。

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