若い世代を象徴する次期女王、現地の誕生会で注目された6の出来事
コロナ禍で延期されていたノルウェー王位継承順第2位のイングリッド・アレクサンドラ王女の誕生日(1月21日)のお祝いがやっと開催された。
いずれは父ホーコン王太子を継いで、ノルウェーで最初の女性の王となるイングリッド・アレクサンドラ王女。
ノルウェー王室のメンバーはそれぞれが個性的でニュースとなりやすい。
イングリッド・アレクサンドラ王女においては未成年であるがゆえに、王室や現地メディアの配慮でこれまでは多く報道されることはなかった。
18歳ともなると公の行事の出席も増えるため、イングリッド・アレクサンドラ王女の露出は一気に増えることになる。
彼女がどのような人柄なのか、国民の好奇心は大きい。
イングリッド・アレクサンドラ王女は「メディアで注目されることが苦手」だと、公共局NRKによる初めてのインタビューで語った。
「恋人がいるか」という質問に直接答えることは避け、いずれは王女になる運命なのだという自覚はあること、立場的にSNS利用や友人との外出を控えることもあるなど、日常生活を初めて語った。
2日連続で、イングリッド・アレクサンドラ王女の誕生日は盛大に祝われ、2つのパーティーが目玉イベントとなった。
ジェンダー平等が進み、女性の政治家やリーダーが目立つノルウェーとはいえ、「女王」はこれまでいなかった。
いずれ女王となることが確実のアレクサンドラ王女は、ノルウェーの歴史においても大きな転換期となる。
成人となった王女をめぐって、現地ではこういうことが話題になった。
①天使が見えるマッタ・ルイーセ王女の婚約者、「あの霊媒師」も王室イベントに公式出席!
王女の祝い事に招待されている招待客のリストは、開催直前に公開された。
各国の王室メンバーやノルウェーの政治家の名前が連なる中、なんとそこには「あの霊媒師」の名前が(最近では「自称・爬虫類」とも言われるようになってきたが……)。
デュレク・ベレット氏が、とうとう本格的にノルウェーのロイヤルファミリーの一員として公式行事に参加し始めた。
大きなニュースになる一方で、ベレット氏は自分のインスタグラムでノルウェーでの黒人差別の主張は続けており、「ノルウェーのメディアは、私よりもアレクサンドラ王女のことをニュースにするべきだ」とも批判。
しかし、それなら彼もこのタイミングでいろいろと発言するのは避けたほうがよかったのでは、とも私は思う。現地メディアがニュースにするのは当然だろう。
②王女のために市民の公共図書館「貸切」、問題か?
オープンしたばかりの新しい公共図書館を貸しきって、ノルウェー政府は王女の誕生日をお祝いすることに。しかし、このために図書館は1日貸切となり、市民は図書館を利用できなかった。
多くの人の居場所である図書館が商業ビジネスを優先し、王室メンバーのお祝いのために市民が図書館を利用できないことなど、複数の観点で批判の声があがった。
③王女が涙目になって感謝した2人の兄弟
王女は王宮パーティーでのスピーチでm兄と弟がどれだけ頼りになる存在か、感謝の言葉を口にした時に、思わずハンカチで涙を拭った。
アレクサンドラ王女にとって兄弟がそれほど重要な存在だという印象はこれまで深く浸透していなかったため、「意外」「感動的」と記者たちもコメント。
王女の母であるメッテ=マリット王太子妃は、ホーコン王太子と結婚する前に、別のパートナーとの間に1人の息子が生まれていた。
この子の存在も2人の交際が物議となった理由のひとつだが、息子マリウスには王位継承権はない。マリウスも自由に生きようとするあまりに、その行動や交際相手がニュースになりがちだが、ノルウェーのメディア報道に疲労している1人だ。
王女「親愛なるマリウスとマグヌス、あなたたちは私のセーフティネットです」
その兄のマリウスと、弟のスヴェレ・マグヌス王子が、王女にとって心から信頼する存在であることが本人の口からはっきりと伝わった。
「女王になった時には、数々の試練や辛いこともある。その時に、女王には安心して相談できる場所があるようだ」という目線で、兄弟の存在の大きさがニュースとなった。
④ノルウェー王室で初のSNS世代、古着を着た王女の関心事は気候問題
王室でのパーティーのメニューは野菜中心メニュー。
王女の関心事は環境・気候問題であることは以前から知られていた。
ニンジンのタルタル、アスパラガスとホタテ貝、タイセイヨウオヒョウの魚料理、ノルウェー産イチゴと、「とてもポリティカル・コレクトネスなメニュー」とコメントした記者もいた。
また、この日の王女のドレスは母親が2005年に着用した「古着」だ。
若い世代の間では、気候のためにも新品ではなく古着を着ようというトレンドがある。
大きな注目を浴びる王室イベントで、最新の現地ファッションブランドよりも、古着を選ぶという選択。
王室パーティーのゲストの中にも古着やリメイクの服装で出席した人たちがいた。
必ず話題になる王室メニューにあえて肉をいれない・古着を着ることで、気候メッセージを王女はアピールした。
またノルウェー王室にとって初めてのSNSやスマホと共に育つ王室メンバーであることも注目されている。
王女はどうしてもSNSや現地ニュースは見てしまい、家族が批判的に報道されると動揺することもあり、「まだ距離の取り方がわからない」と、自分なりのメディア対策は模索中だと公共局のインタビューで語っていた。
⑤新しい王室の時代、欧州の君主制・次世代が集う
冒頭写真の4人の若い女性と1人の男の子。王位継承権を持つ5人の集合写真は歴史的ともいえ、注目を浴びた。女性の多さは新しい時代の幕開けを感じさせる。
- 後ろ左側:オランダのカタリナ=アマリア王女(2003年生まれ・18歳)
- 後ろ右側:ベルギーのエリザベート王女(2001年生まれ・20歳)
- 前側左:スウェーデンのエステル王女(2012年生まれ・10歳)
- 前側中央:ノルウェーのイングリッド・アレクサンドラ王女(2004年生まれ・18歳)
- 前側右:ルクセンブルクのシャルル公子(2020年生まれ・2歳)
⑥「普通の、普通じゃない女の子でいてくれる王女」
「普通の、普通じゃない女の子でいてくれる王女」と、ノルウェーのヨーナス・ガール・ストーレ首相は図書館でのパーティーでスピーチをした。
王室メンバーでも市民と距離が近く、できるかぎり普通の人であろうとする王室は、ノルウェーでの人気の秘密でもはる。
今回の首相のスピーチの一言がニュースになることも、ノルウェーがどれだけ「高い位にいる人が普通でいようとする」ことを好む平等の国かが伝わってくる。
偉そうにしない今時の若者の生活を「しようとする」王女の姿は、この国では好意的に受け止められるのだ。
アレクサンドラ王女はもう未成年ではない。
公式行事への参加も増えるため、今までは遠慮をしていた現地メディアも関連ニュースを増やすだろう。
爬虫類や霊媒師だと自称するマッタ・ルイーセ王女の婚約者といい、当分はノルウェー王室の話題は絶えなさそうだ。