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北朝鮮に越境の米兵「アメリカに帰りたくない」と話していた? ── 米 最新報道まとめ

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
韓国と北朝鮮の軍事境界線をまたぐ板門店で、韓国側から写真を撮るツアー客。(写真:ロイター/アフロ)

18日、韓国と北朝鮮の軍事境界線上の板門店で、見学ツアーに参加していたアメリカ人男性が北朝鮮に許可なく侵入し、北朝鮮に拘束された事件の続報。

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この男性は米軍に所属する23歳のトラビス・キング(Travis King)さんで、詳細が報じられている。

北朝鮮に拘束されたトラビス・キングさんの顔写真

APFOXニュースニューヨークタイムズによると、キングさんは2021年1月に米軍に入隊し、翌年在韓米軍に所属となった。しかしその年の10月以降、ソウル市内で暴行や警察車両損傷など少なくとも2件の罪を犯し、刑務所に約2ヵ月収容されていた。今月10日に釈放されたばかりで、17日にアメリカに帰国し、テキサス州の米軍基地で除隊の手続きが行われる予定だった。

しかしキングさんは刑務所にいる間ずっと「アメリカには戻りたくない」と話していたことが、関係者の証言でわかっている。キングさんは帰国予定日に仁川国際空港まで護送されたが、帰国便には搭乗しなかった(保安検査場を通過したのか否かは不明)。

18日朝、キングさんは国境見学のJSAオリエンテーションツアーに参加し、団体客42人と共にソウル市を出発した。同じツアーグループだった観光客の一人は米メディアに対して、このように証言している。

「ツアー終盤の午後、グループ一行が屋外で写真を撮っていたら、キングさんが突然、全力疾走で北朝鮮側に向かった」「青い建物の間を約10メートル走って越境し、姿が見えなくなった」「兵士の一人(米兵)が『男を捕まえろ』と叫んだ」

これら一連の出来事は数秒以内に起こったという。この証言者は「最初はTikTokの撮影か何かのパフォーマンスかと思った」と振り返った。

事件当日の板門店見学ツアーの様子。参加者は皆固まって歩いていた。コリアナウによれば、黒いシャツを着た人がキングさんとされる(キングさんはツアー中おとなしかったそうだが、この直後に大声を上げ北朝鮮へ越境した)

証言者が話した「青い建物の間」は、2019年6月30日、当時のトランプ大統領と北朝鮮の金正恩総書記が面会し、固い握手を交わした場所でもある。

写真:ロイター/アフロ

アメリカはバイデン政権以降、再び北朝鮮と外交関係がない。また「孤立した共産主義国(北朝鮮)と実質的に戦争状態にある」と、ニューヨークタイムズは述べている。

キングさんと数日前に話をしたばかりという母親は、「その時はすぐに(テキサス州の)基地に戻ると言っていたのに」「(息子が)まさかこんなことをするとは思えない」と、ABCニュースに話した。

現時点で北朝鮮はこの事件について沈黙しており、キングさんの安否は不明だ。情報が限られる中、ロイド・オースティン国防長官は記者会見で、米兵が無許可で「故意に」北朝鮮に越境し、拘束されたことを認め、「我が軍の一員のウェルフェア(心身の健康と安否)を危惧しており、調査を進めている」と言葉少なに語った。

今後のキングさんの行方だが、北朝鮮当局に亡命者として扱われるか不法侵入者として扱われるかによって異なってくる。亡命者は北朝鮮に住むことが許されるだろうが、不法入国者と見なされた場合はアメリカとの交渉の切り札として利用されることになるかもしれない。

(Text by Kasumi Abe)無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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