「熱中症労災」の傾向と対処法 冷房が壊れている職場は即座に改善を!
関東甲信を中心に、猛烈な暑さが続いている。6月29日には、全国32地点で35.0度以上を観測し(午前11時時点)、群馬県の伊勢崎では40.0度を超えたという。
東京消防庁によると、6月28日には、都内で224人が熱中症とみられる症状で病院に運ばれ、1日の熱中症による搬送者数としては今年に入ってから最多だったという。半数以上は70歳代以上の高齢者であるが、なかには仕事中に体調不良となった人も多く含まれているのではないだろうか。
仕事中に熱中症を発症するなど、体調を崩した場合、それは「労働災害」(労災)である。今後も猛烈な暑さが続くと予想されており、適切な熱中症対策が求められている。昨年の職場における熱中症の発生状況をみながら、注意喚起をしていきたい。
毎年500人以上が「熱中症労災」によって死傷している
厚生労働省が発表している「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」によれば、昨年2021年、職場で熱中症によって死亡したか、4日以上休業した人(以下、死傷者)は547人であった(うち死亡者は20人)。
最も死傷者数の多かった2018年(1,178人)と比べ、半数近くに減少してはいるものの、ここ5年ほどは、毎年500人以上が仕事中の熱中症、すなわち「労災」により、休養を余儀なくされたり、最悪の場合には亡くなっている。
次に、時期や時間帯についても確認しておこう。2017年以降の統計をみると、職場の熱中症は、全体の8割以上が7月と8月に起きている。各地で梅雨明けが発表され、ますます暑さが本格化していくことが予想されるなか、警戒が必要だ。
また、時間帯では、15時台、14時台の発症が目立つ。ただし、次のグラフから明らかなように、「9時台以前」や「18時台以降」の発症も多いことに注意が必要だ。帰宅後、体調が悪化し、病院に搬送されるケースも多いそうだ。
屋内で働いていても発生する熱中症
一般に予想されるように、職場で熱中症の被害に遭うのは、主に屋外で仕事をしている人に多い。業種別では、建設業で最も多く発生している。だが、屋内でも安心することはできない。2021年の死傷災害のうち、約2割は、屋内作業に従事していた状況下で発生していた。
屋内作業においても、その環境が重要になる。炉などの熱源が近いところで作業しているケースなどはわかりやすいが、そうした熱源がない場合にも、高温多湿の環境などは危険である。また、屋内でも、冷房設備が故障していたり、適切に使われていない場合に、熱中症になってしまうのだ。
ある保育園では、保育室のエアコンが壊れているため、子どもがよく発熱してしまうという。鼻血を出してしまう子どもも多く、熱中症にかかっている可能性が高い。
また、別の介護施設でも、室内の冷房3台のうち2台が故障しており、室温が28度から31度になることもあるという。利用者、職員とも、軽い熱中症のような症状が出ているが、会社は「予算がないから対応できない」として、なんら対策がとられていないという。
これらのケースでは、そこで働いている労働者だけでなく、子どもや高齢者も熱中症を発症しやすい環境に置かれているという点で、その影響の大きさは看過できない。
仕事中に熱中症にかかったら「労災」を申請しよう
すでに指摘したように、仕事中に熱中症を発症した場合、それは労働災害である。体調に異変を感じたら、速やかに医療機関を受診するとともに、管轄の労働基準監督署に労災を申請してほしい。労働者にはその権利がある。
また、相談事例にあったように、壊れた冷房設備を修理せず、そのままにしているような会社は、「安全配慮義務」を怠っている可能性が高い。この場合、労働組合に加入して団体交渉し、状況の改善を法的に求めることができる。さらに、労災とは別に、労働者の命を危険にさらした責任等について、会社に損害賠償を請求することもできる。
熱中症は、最悪の場合、死に至る危険な疾患であり、ここ数年、毎年20人以上が熱中症労災で亡くなっている。そうした危険な職場環境を作り出しているのは会社なのだから、仕事中に熱中症に発症した場合には、会社側に法的責任が生じる。
ここで重要なのは、熱中症労災の被災者のうち、自覚症状があってからすぐに病院に行っている場合には、休業見込期間が比較的短い傾向があるという点だ。つまり、体調に異変を感じてからすぐに診察を受けていれば、その後の回復も早まるということだ。ぜひ躊躇せず、休んだり、病院に行き、そして労災を申請してほしい。一人で申請することが難しければ、早めに専門の窓口に相談することをおすすめしたい。
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