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「有観客開幕」のJリーグで問題が発生 サポーターが守るべき「応援ルール」とは

村上アシシプロサポーター・著述家・ビジネスコンサルタント
ソーシャルディスタンスを確保するために「着席不可」の張り紙が貼られたスタンド席(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

明治安田生命Jリーグは、政府によるイベント開催制限の緩和を受けて、7月10日から5,000人までの観客入場を解禁した。

新型コロナウイルスの感染防止のために新たなガイドラインが策定され、「超厳戒態勢」での運営が始まったが、各会場でサポーターが応援ルールに従わない事態が散見された。

鹿島の攻勢時はスタジアムのあちこちで指笛が鳴り響き、鹿島の選手がボールを持つと座席を激しくたたく威嚇行為も。試合後には「浦和レッズ」と大声で叫ぶ姿もあった。これはすべて禁止行為だ。

出典:好調の浦和レッズ、観客動員再開も“最悪サポーター”で台無し!? 指笛、威嚇、声援…禁止事項守らず

ビジター席が閉鎖されてアウェー側のサポーター来場の自粛を呼びかけているが、ギラヴァンツ北九州のクラブによるとこの日、一部の北九州サポーターがやってきた。

レプリカユニホームを着用していなかったため、どちらの応援者か判別できなかった。岡山側は「厳密に言えば来場は推奨していないが、そこまで止めることはできない」と説明した。

出典:自粛呼びかけもアウェー北九州サポ来場、判別できず

そもそも新しい応援ルールを詳細に把握せずに来場した観客も一部いたはずだ。

改めて、7月いっぱいの超厳戒態勢時における「応援ルール」について、Jリーグが提示したガイドラインから抜粋する。

禁止されている行為

  • 応援を扇動する
  • 歌を歌うなど声を出しての応援、指笛
  • 手拍子
  • タオルマフラー、大旗含むフラッグなどを "振る "もしく は"回す "
  • トラメガを含むメガホン、太鼓等の鳴り物の使用
  • ハイタッチ、肩組み
  • アウェイゲームの観戦(この1点のみ「禁止」ではなく「自粛要請」の形)
  • アウェイチームのユニフォーム・グッズを着用しての入場・観戦

ガイドラインには拍手に関する言及がないが、FC東京のサイトによると、拍手は許容される旨が記載されている。

ゲートフラッグ(いわゆるゲーフラ)についての言及もないが、北九州札幌のサイトによると、「ゲーフラを掲げる」行為は容認されている。

「座席を叩く行為」についての言及はないが、太鼓「等」の鳴り物の使用が禁止されているため、椅子を叩く行為も「鳴り物使用」の範囲内と判断されるのが妥当だ。

クラブ毎に幾分カスタマイズされた上で、それぞれのホーム試合の運営方法が各クラブのウェブサイトで公表されている。今後、Jリーグの試合を現地観戦するサポーターは、今一度各クラブのウェブサイトで応援ルールを把握した上で、マナーを守って観戦してほしい。

ルール不徹底はサポーター側にのみ問題があるのか?

ルールを破った一部サポーターに問題があるのはたしかだが、Jリーグやクラブ側ももっと周知徹底の仕方を工夫する余地があったのではないかと筆者は考える。

今後Jリーグや各クラブの運営が改善できるポイントを2つ提言したい。

【改善策1】もっと明確な告知方法を

Jリーグが6月12日にリリースした新ガイドラインは、PDFで70ページにも及ぶ。超長文の文書の中で、応援ルールについては64ページで初めて登場する。

私は本業でコンサルティングの仕事を20年続けているが、これほど「読みにくい」文書をあまり見たことがない。決定的に欠けているのは「読者視点」だ。

クラブ向け、メディア向け、サポーター向けの情報が混在しており、とにかく読みづらい。ステークホルダー毎に文書を分けるか、章立てを読者視点で再定義するなどして、誰が読んでも知りたい情報に簡単に辿り着ける文書に改善すべきだ。

更にサポーター向けの「応援ルール」については、ホーム試合を開催するクラブのウェブサイトで告知するだけではなく、周知徹底するために更なる工夫がほしい。

たとえばチケット購入時に応援ルールの箇条書きを表示させて、「承諾」ボタンを押さないと購入ができない仕様に改修したり、ホームスタジアムの運営においてもキックオフ前に応援ルールを大型スクリーンに映し、スタジアムDJに読ませたりなど、いくらでも改善の余地があると考える。

【改善策2】納得感のある理由説明を

応援行為の禁止事項の背景・理由に納得感がないと、ルールを把握していても敢えて従わないサポーターが一部出てきてしまうリスクも考えられる。

  • 声を出しての応援はなぜNGなのか?→声を出すことで飛沫感染リスクが高まるから
  • 指笛はなぜNGなのか?→手を口に運ぶことで経口感染リスクが高まるから
  • 拍手はOKなのに、なぜ手拍子はNGなのか?→手拍子に合わせて声を出してしまうリスクがあるから(日刊スポーツの取材記事より引用)
  • アウェイゲームの観戦はなぜ自粛しなくてはいけないのか?→移動することで感染拡大リスクが高まるから

例えば上記のように、単なる禁止事項の羅列ではなく、「なぜその行為がNGなのか」の説明を明記する工夫もほしい。なぜなら行動様式の変容には、理由付け・動機付けが極めて重要だからだ。

蛇足になるが、スタジアム近隣に住んでいて、長距離移動の必要がないアウェイサポーターは感染拡大リスクが低いため、アウェイグッズを身につけなければ、観戦していいのか?という疑問が残るが、上記で引用した記事の通り、「厳密に言えば来場は推奨していないが、そこまで止めることはできない」と岡山関係者が説明している。このグレーゾーンは今後取材したい。

重要なのはPDCAサイクルを正しく回すこと

「応援が禁止されるJリーグ」なんて、誰も経験したことがない。半年前には想像だにしなかった現実が今そこにある。

今まで当たり前だった行動様式を突然変えるのは非常に難易度が高いだろうし、新しい運用方法がいきなりうまくいくはずもない。

重要なのは、浮き彫りになった問題点を的確に把握して、次の試合までに改善することだ。つまり、PDCAサイクル(※)を正しく回すことに尽きる。

※PDCAサイクルとはPlan(計画)→Do(実施)→Check(評価)→Action(改善)のサイクルを繰り返すことによって、業務を継続的に改善していく手法のこと

J2とJ3は7月15日水曜に、J1は7月18日土曜に次節が開催される。かつ、有観客試合再開後、ホーム試合の運営が初となるクラブも多い。

PDCAサイクルを高速で回すことで、試合を重ねるごとにJリーグの運営がより円滑に進むようになることを、いちサポーターとして願うばかりだ。

プロサポーター・著述家・ビジネスコンサルタント

1977年札幌生まれ。2000年アクセンチュア入社。2006年に退社し、ビジネスコンサルタントとして独立して以降、「半年仕事・半年旅人」という独自のライフスタイルを継続。2019年にパパデビューし、「半年仕事・半年育児」のライフスタイルにシフト。南アW杯では出場32カ国を歴訪する「世界一蹴の旅」を完遂し、同名の書籍を出版。2017年にはビジネス書「半年だけ働く。」を上梓。Jリーグでは北海道コンサドーレ札幌のサポーター兼個人スポンサー。2016年以降、サポーターに対するサポート活動で生計を立てているため、「プロサポーター」を自称。カタール現地観戦コミュニティ主宰(詳細は公式サイトURLで)。

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