インド洋の記録的な高い水温で、広範囲で熱波が発生 日本の梅雨にも影響か
インドやタイなどでは熱波が発生し、連日、最高気温が40度を超える猛烈な暑さに見舞われています。
世界気象機関(WMO)はエルニーニョ現象が終息後も、インド洋熱帯域の海面水温が高いため、極端な熱波や豪雨などが起こりやすいとして警戒を呼び掛けています。
これらは日本の梅雨にも影響し、西日本では平年よりも雨量が多くなる可能性が高いです。
世界有数の人口密集地に熱波
インドでは例年、モンスーン(雨季)が始まる前の5月に熱波が発生します。今年は4月から広範囲で熱波が発生し、インドのほかタイやミャンマーでも、最高気温が40度を超える日が続いています。
この著しい暑さには上空の偏西風が関係しています。下図は大規模な風の流れを示したものです。
インド付近を拡大すると、暖色になっています。これはインド洋熱帯域の海面水温が高いために、雲の発生が多い=対流活動が活発になっている影響で、上空の高気圧が強まっていることを表しています。
これにより、偏西風が北へ押し上げられたことで、インドはいつも以上に暖かい空気に覆われています。
さらに、日本付近でも偏西風は北を流れ、暖かい空気に覆われやすくなっています。日本とインドは偏西風によってつながり、ともに暑くなっているのです。
今年の梅雨は「高温多雨」がキーワード
例年、ゴールデンウイークが終わる頃に沖縄は梅雨に入ります。沖縄の平年の梅雨入りは5月10日頃です。
今年の梅雨の特徴は全国的に暑くて、雨量が多いことです。とくに、雨量が多くなる可能性が高いのが沖縄・奄美と西日本太平洋側です。
実は、今年の梅雨にもインド洋熱帯域の海面水温が関係するとみられています。エルニーニョ現象はこの春に終息しますが、その影響はしばらくの間、インド洋熱帯域に残ります。
今年2月のインド洋熱帯域の海面水温は基準値を0.78度上回り、過去3番目の記録的な高温となりました。
なぜ、インド洋熱帯域の海面水温が高いと雨量が多くなるのでしょう?
これには大規模な風の流れが関係しています。①インド洋熱帯域の海面水温が高いと雲の発生が多くなります。
②そうなると日本の南では高気圧が強まるため、高気圧の縁に沿って、湿った空気が日本列島に流れ込みます。
③梅雨前線が本州付近に停滞しやすく、活発になった場合には大雨となる可能性が高いです。
今年と同じようにインド洋熱帯域の海面水温が記録的に高かった2016年は、6月に西日本で大雨が長く続き、広島県では土砂崩れにより列車が脱線する事故がありました。
【参考資料】
世界気象機関(WMO):Widespread parts of Asia and Africa reel under extreme weather、26 April 2024
気象庁:3か月予報(5月~7月)、2024年4月23日
気象庁ホームページ:エルニーニョ/ラニーニャ現象