ジャニーズを巡る問題にジャニーズファンは反応したのか
元ジャニーズJr.の方が,ジャニーズ事務所で起きた性被害を告発したことが話題となりました.
2023年3月7日に,BBCニュースで加害が明るみに……それでも崇拝され 日本ポップス界の「捕食者」というニュースが配信され,3月18,19日には「J-POPの捕食者 秘められたスキャンダル」という番組が放送され大きな話題となりました.
その後,4月12日には元ジャニーズJrの方が記者会見を行いその様子は新聞等で取り上げられました.
そこで,この件がツイッタ―上でどのように話題になったのかを分析してみました.
三行まとめ
・性加害に関する話題とマスメディアへの批判の二つの話題が存在した
・性加害関連の情報を拡散したアカウントの多くが過去に政治的な情報を拡散していた
・ファンクラスタのアカウントは性加害についてほぼ話題にしていなかった
データについて
「ジャニーズ,ジャニー,ジャニ,#ジャニーズ」をキーワードとしてツイートデータを収集し,ツイッター上でどのように扱われていたのかを分析しました.
2023年3月1日~4月21日までに,748,360アカウントによって4,105,631回ツイートとリツイートが行われていました.
一日ごとのツイート量の変化は以下の通り.
大きなニュースが出たときにピークが表れていることが分かります.
通常は400万回というとかなりの規模の話題ですが,ジャニーズファンのコミュニケーションも多数みられますので,これらのツイートがすべて性加害関係のツイートではないことには注意が必要です.
クラスタ分析
ジャニーズファンのツイートと性加害に関連するツイートを分類するためにクラスタ分類を行いました.ここでは,リツイートに基づくツイート分類の手法を使ってどのような話題があるのかを分類しました.
特に,BBCのニュース以前(事前:3月1日~7日)及び元ジャニーズJrの記者会見以後(事後:4月12日~21日)で大きくクラスタが分かれている可能性を考慮して二つの期間でそれぞれクラスタリングを行いました.
それぞれのデータでは以下のようなクラスタが得られました.
事後データには性加害に関する話題を中心とした大きなクラスタが得られました.
ただ,単一クラスタではなく複数のクラスタが存在していました.
まず,最も大きい性加害に関するクラスタAでは,61,723アカウントが186,357回拡散していました.クラスタの代表的なツイートは,
などでした.基本的には,性加害全般を話題としたクラスタでした.
一方,2番目に大きいクラスタBは,18,573アカウントによって29,882回の拡散がありました.代表的なツイートは,
であり,全体的にテレビで報じられない件についてマスメディアを批判するツイートがほとんどでした.
性加害関連クラスタのアカウント分析
では,どのようなアカウントが関連クラスタのツイートを拡散していたのでしょうか?
性加害関係のクラスタA,Bについて分析した結果,政治的姿勢に特徴があったので,グラフ化してみました.
クラスタA,Bそれぞれのクラスタともに過去に政治的な関心を持っていたアカウントが多く,どちらも70%以上が過去に政治的ツイートを拡散したことのあるアカウントでした.ジャニーズWEST+スノーマンクラスタやキンプリクラスタでは10%にも満たないのと比較するとその違いは歴然です.
参考までに各クラスタの情報を拡散したアカウントのプロフィールのTFIDFをワードクラウド化してみました.
性加害に関する情報を拡散しているアカウントのプロフィールは政治に偏った者が多そうであるというのはこのワードクラウドからも見て取れます.
ちなみに,ファンクラスタについては,多分ジャニーズWESTとスノーマンのファンが中心なんだろうと思いますが,SixTONESなども入っているので,完全な自信はないです.違っていたら申し訳ないです.
キンプリクラスタは大丈夫な気がするんですが.
ファンクラスタの反応
この結果を見る限り,性加害に関心を持っている層とジャニーズファン層とは乖離しているようにも見えます.
そこで,ファンクラスタがどの程度性加害のニュースに反応したのかを見てみます.ここでは,性加害関連クラスタ以外のクラスタをファンクラスタと仮定して,事前データのファンクラスタが事後データでどの程度性加害クラスタのツイートを拡散していたのかを見てみました.
事前事後データの期間中にクラスタ内のツイートをリツイートしたアカウントは293,909ありましたが,そのうち事前データでファンクラスタを拡散したアカウントは169,860ありました.そのうち性加害関係クラスタも拡散したアカウントは9,491ありました.従って,BBCがニュースにする前にジャニーズファンクラスタにいたアカウントのうち,当該ニュースを拡散したアカウントは5.6%程度だったといえます.
もちろん,クラスタに含まれないツイートもあったかもしれませんが,ファンクラスタの間では性加害に関する話題はほぼ広がらなかったといって良さそうです.
一方,性加害問題に言及したアカウントのうち事前にファンクラスタのツイートを拡散していたアカウントは6.1%程度でしたので,今回の問題を話題にしているアカウントにジャニーズファンアカウントはほとんどなかったといえるでしょう.
ちなみに,記者会見を行った元ジャニーズJr.の方への批判についても話題になっていたようですが,ほとんど見つけることは出来ませんでした.元ジャニーズJr.の方へ批判を行っていたのはごく一部のようです.
おわりに
ジャニーズ事務所内で起きた性加害に関する話題についてツイッター上の動きを分析してみました.政治的な話題に興味があるアカウントが強く反応しているところは予想外で興味深いところでした.
一方,ファンクラスタはあまり本件には反応していないようです.ジャニーズアイドルを楽しんでいる人たちにとっては,重要ではないのか,単に反応をしないだけなのかわかりませんが.複数アカウントを持っている方は別アカウントで反応をしたりしているのかもしれません.今後どうなるのかはわかりませんが,とりあえずファンに与えた影響はデータから見る限り限定的なようです.
とはいえ,ジャニーズを応援している人たちにとっては,積極的に議論したいような内容ではないというのは間違いないですから,ファンの間では話題にならないのも当然といえば当然なのかもしれません.
というわけで,今回の性加害問題は,ジャニーズファンではなく社会問題に興味がある人々の間で話題になっていたという結論になりそうです.