なぜネイマールはサウジアラビア移籍を選んだのか?エムバペの存在と新時代到来の予感。
サウジアラビアに、また一人、スタープレーヤーが到着した。
ネイマールのアル・ヒラル移籍が決定している。アル・ヒラルは移籍金8000万ユーロ(約126億円)をパリ・サンジェルマンに支払い、ブラジル代表のアタッカーを確保した。
ネイマールは2年契約でアル・ヒラルに加入する。2年間で2億ユーロ(約316億円)、ボーナスや広告収入を含めると3億5000万ユーロ(約553億円)がネイマールの懐に入ると言われている。
■バルセロナで欧州初挑戦
ネイマールは2017年夏にバルセロナからパリSGに移籍。契約解除金2億2200万ユーロ(約351億円)が支払われ、史上最大の移籍が成立した。
バルセロナでは、リオネル・メッシ、ルイス・スアレスと破壊的な3トップを形成した。「MSN」と呼ばれた攻撃陣は欧州中の脅威となった。2014−15シーズンには、リーガエスパニョーラ、コパ・デル・レイ、チャンピオンズリーグで優勝を飾り、3冠を達成した。
バルセロナの南米トリオはピッチ外でも良好な関係を築いていた。それがピッチ内で反映され、変幻自在なコンビネーションが体現されていた。
しかし、結成からおよそ3年でMSNに解体の日が訪れる。「僕とレオ(メッシ)はネイマールに会いに行った。バルセロナに残ってくれ、と頼んだ。その時、彼は『イエス』と言ってくれたんだ。だけど…。彼の周りの人たちはそのように考えていなかったみたいだ」と当時を回想するのはルイス・スアレスである。
■パリ・サンジェルマンでの日々
ネイマールがバルセロナ退団を決めた理由のひとつに、メッシの2番手に甘んじていたくなかった、というものが挙げられる。
だがパリSGでは、同時期にキリアン・エムバペが加入した。モナコで頭角を現していたヤングスターは、パリSGに移籍してから一年後、フランス代表でロシア・ワールドカップ優勝を経験する。そこから少しずつ、序列が変わり始めた。
エムバペは、この数年、移籍の噂が絶えなかった。2021年夏には、レアル・マドリーが移籍金2億ユーロを準備して獲得に動いていた。昨年夏には、契約満了に伴いフリーで移籍するというのが濃厚視されていたなか、契約が切れる直前で契約延長(2年+1年延長オプション)を行った。
そして、この夏、1年の契約延長オプションを行使しない旨をクラブに伝えたとされ、再びエムバペの移籍騒動が巻き起こった。
しかし蓋を開けてみれば、パリに残ったのはエムバペだった。エムバペがトップチームの練習に復帰した直後に、ネイマールのサウジアラビア移籍が発表された。
巷ではエムバペの“黒幕説”が囁かれている。真相は定かではない。ただ、現代フットボールにおいて、ひとつのチームにスタープレーヤーを複数抱えるのが難しいのは確かだ。守備が免除されるような選手は一人いれば十分(というより限界)で、ネイマールとエムバペを擁してチームを機能させるのは至難の業だった。
■ネイマールと新天地のサウジアラビア
いずれにせよ、ネイマールは新天地にサウジアラビアを選んだ。「ペレの再来」と謳われたネイマールも、気付けば31歳を迎えている。
昨シーズン、クリスティアーノ・ロナウドがサウジアラビアに移籍して話題を呼んだ。マンチェスター・ユナイテッドで問題を抱え、契約解除を行った後、アル・ナスルへの加入を決めた。
そして、この夏、カリム・ベンゼマ(前所属レアル・マドリー/35歳)、エンゴロ・カンテ(チェルシー/32歳)、サディオ、マネ(バイエルン・ミュンヘン/31歳)とキャリア・実績で申し分ない選手が次々に参入を決めている。その流れに、ネイマールも乗った格好だ。
「クラブのレジェンドに別れを告げるのは、本当に難しい。だがネイマールは、ずっと、パリ・サンジェルマンのレジェンドであり続ける」
「ネイマールがパリ・サンジェルマンに移籍してきた日のことを、私は一生忘れないだろう。6シーズンにわたる彼の貢献についても同様だ。素晴らしい時間を共に過ごした。ネイマールはこのクラブの歴史の一部だ。彼と彼の家族に感謝を伝えたい。ネイマールの次の冒険、また今後の人生の成功を願っている」
これはナセル・アル・ケライフィ会長の言葉だ。
■新たな時代の到来
ネイマールはパリの6シーズンで、173試合に出場して118得点77アシストを記録している。リーグ・アンのレベルを考慮しても、得点とアシストに関しては十分な数字である。
一方で、ネイマールは度重なる負傷に苦しめられた。パリSGで、実に119試合を負傷欠場した。チャンピオンズリーグを筆頭に、ビッグマッチでネイマールを欠くという状況が度々起こった。
ネイマールのキャリアを評価するのは、正直、難しい。だが彼のサウジアラビア移籍は象徴的なものだ。
新しい時代が、到来するーー。
そんな予感が、するのである。