所属不明のドローン、トルコ軍ドローン、ロシア軍と思われる戦闘機がシリア各地を相次いで爆撃
シリアで4月28日深夜から29日夜にかけて、無人航空機(ドローン)や戦闘機による爆撃が相次いだ。
ダイル・ザウル県で「イランの民兵」を狙った爆撃
最初の爆撃は、シリア政府の支配下にあるダイル・ザウル県南東部、イラク国境に近いユーフラテス川西岸のスィヤール村(ブーカマール市北西)に対して行われた。
英国で活動する反体制系NGOのシリア人権監視団によると、4月28日深夜から29日未明にかけての民家1棟と車1台が、正体不明のドローンの攻撃を受けたのである。民家と車はいずれも「イランの民兵」のもので、外国人司令官1人が死亡、民兵5人が負傷したという。
またサウジアラビアの衛星テレビ・チャンネルのハダスは、車には、アフガン人民兵組織のファーティミーユーン旅団の司令官らが乗っており、イラクからシリア領内に入ったところを狙われ、2人が死亡したと伝えた。
ダイル・ザウル県南東部の「イランの民兵」を狙った爆撃は、これまでも米主導の有志連合とイスラエルによって度々行われており、今回の爆撃もいずれかによるものと見られる。
アレッポ県北部に対するトルコ軍の爆撃
4月29日午前8時半頃、今度はトルコ軍のドローンが爆撃を行った。
クルド民族主義組織の民主統一党(PYD)に近いハーワール・ニュース(ANHA)によると、トルコ軍のPD-1 UASが、シリア政府と北・東シリア自治局(PYDが主導する自治政体)の共同統治下にあるアレッポ県北部タッル・リフアト市の丘を爆撃した。
トルコ軍はまた、シリア国民軍(Turkish-backed Free Syrian Army:TFSA)とともに、タッル・リフアト市近郊のマルアナーズ村、マーリキーヤ村、マンビジュ市北東のフーシャリーヤ村を砲撃した。
ロシア軍所属と思われる戦闘機の爆撃
爆撃は続いた。4月29日夜、所属不明の航空機1機がラッカ県アイン・イーサー市近郊に設置されているトルコ軍の基地を爆撃した。
アイン・イーサー市は、アレッポ市とハサカ県を結ぶM4高速道路が通る要衝に位置し、シリア政府と北・東シリア自治局が共同統治し、ロシア軍が部隊を駐留させている。その北側には、「平和の泉」地域と呼ばれるトルコの占領地が迫っている。
シリア人権監視団によると、爆撃が行われたのはジャフバル村近郊。トルコ軍がM4高速道路に向かって進軍し、街道近くに土塁を設置しようとしたことに対して警告を行うのが爆撃の目的だったという。
トルコ占領下のアレッポ県北部、ラッカ県北部、ハサカ県北部への爆撃はきわめて稀だが、これまでロシア軍、シリア軍、有志連合が爆撃を行っている。トルコ軍の進軍への警告という目的から、今回の爆撃は、ロシア軍、ないしはシリア軍によると思われる。
アイン・イーサー市近郊への爆撃とほぼ時を同じくして、「ユーフラテスの盾」地域と呼ばれるトルコの占領地の拠点都市の一つであるアレッポ県アアザーズ市近郊のカフルハーシル村も爆撃を受けた。
ANHAによると、爆撃を行ったのはロシア軍戦闘機で、トルコ軍ドローンのタッル・リフアト市爆撃への対抗措置と思われる。
緊張緩和地帯でも爆撃
シリア人権監視団によると、このほかにも、「決戦」作戦司令室が活動を続けるハマー県北西部上空にロシア軍所属と思われる戦闘機複数機が飛来、ザイズーン村の発電所近くで爆発が複数回発生した。
「決戦」作戦司令室は、シリアのアル=カーイダであるシャーム解放機構とトルコの庇護を受ける国民解放戦線(TFSA)などからなる武装連合体。
複数の地元筋によるとヒルバト・ナークース村にある「決戦」作戦司令室の軍事拠点が狙われたと思われる。
爆撃が行われたのは、ロシア、トルコ、イランが停戦を監視する緊張緩和地帯。爆撃は多くの場合、ロシア軍、シリア軍によって行われるが、有志連合(米国)も、アル=カーイダ系組織やイスラーム国の外国人戦闘員を狙って爆撃を行うことがある。