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最新の「総理大臣になってほしい人」調査、河野氏・高市氏・石破氏につづく政治家と、野党に必要な人材とは

大濱崎卓真選挙コンサルタント・政治アナリスト
「総理大臣になってほしい人」で1位を独走する河野太郎氏(写真:つのだよしお/アフロ)

岸田政権が始まって1年がすぎました。総裁任期は2024年9月までのため、まだ当分の時間がありますが、永田町では「ポスト岸田」の話も囁かれるようになってきました。

我が国では首相公選制をとっておらず、政権与党の代表が国会の指名を受けて内閣総理大臣になる定めとなっています。そのため、「総理大臣になってほしい人」などといった類のアンケートは無意味だという声もある一方、有権者の望む国家のリーダー像がアンケートで明らかになるのは意味があるだろうとの意見もあります。

そこで、直近の「総理大臣になってほしい人」アンケートから、今有権者が国家に求めているリーダー像はなにか、考えてみたいと思います。

不動の3人である「河野太郎氏、高市早苗氏、石破茂氏」

株式会社グリーン・シップが全国を対象に昨年12月に行ったショートメール調査では、依然として河野太郎氏、高市早苗氏、石破茂氏の上位3人に変動はなく、不動の人気を誇っていることは間違いないことがわかりました。

グリーン・シップ社「内閣支持率調査2022.12」より引用
グリーン・シップ社「内閣支持率調査2022.12」より引用

 河野太郎氏は、2021年〜2022年夏までの調査では回答全体の12%前後のシェアでしたが、昨年10月や12月の調査では、15~18%と支持を伸ばしています。高市早苗氏が9~11%、石破茂氏が5~6%前後で収束しているのに対し、河野太郎氏の支持は明らかに広がっていることがわかります。今回の調査では、上位5人(河野太郎、高市早苗、石破茂、菅義偉、小泉進次郎)を自民党所属の衆議院議員が占めたことからも、政権与党である自民党の中に新たなリーダー像を期待する声が多いことは明らかでしょう。

 この3人はイデオロギーにも差があるほか、支持している層も異なります。河野太郎氏は党内ではややリベラル層から支持を受けているとみられるほか、一般のなかでもSNSを活用した情報発信などで若い層を中心とした支持が多いとみられます。高市氏は党内では右派にあたる層から支持が多いほか、一般のなかでも保守層を中心とした支持者が多いとみられています。また、石破氏は地方創生を中心として活動してきた過去から地方に一定の強固な支持層がいます。

 上掲の調査では、これに加えて菅義偉前首相や小泉進次郎氏の名前も上がりました。菅義偉前首相はコロナワクチンの配布など、政策業績に一定の評価があることから街頭演説などでも人気を博しており、安倍晋三元首相の国葬で、友人代表として弔辞を読んだことも評価を上げたこととされています。小泉進次郎氏もかねてから若手のホープとして期待されているところがあり、一定の評価は変わりません。

野党に「リーダー候補」が不在の状態が続く

選挙演説をする山本太郎氏
選挙演説をする山本太郎氏写真:つのだよしお/アフロ

 このようにキャラクターが豊富に見える自民党ですが、野党はどうでしょうか。上位10人のなかで唯一ランクインしたのはれいわ新選組の山本太郎氏(5位、3.6%)のみです。これまでの同社調査では8~9位だったことを考えると、支持が増えたとみることもできるかもしれません。

 その要因とも捉えられるかもしれませんが、やはり注目すべきは「他の野党の政治家」がほとんど出てこないことです。シェア0.5%以上を獲得した17名のうち、国会議員で自民党以外だったのは、山本太郎氏のほか国民民主党の玉木雄一郎氏(14位、0.8%)、参政党の神谷宗幣氏(15位、0.8%)、立憲民主党の枝野幸男氏(17位、0.7%)のみでした。シェア0.2%以上でみても、立憲民主党の野田佳彦氏や小沢一郎氏の名前はあっても、党代表の泉健太氏の名前は出てこず、少なくとも調査結果からは泉総理の誕生を期待する声は無いようにみえます。

 与党所属の国会議員の方が多いなかで単純に比較はできませんが、それでも「キャラクター不足」が否めないのも事実でしょう。「0.2%以上のシェア」でみたときに、立憲民主党で3人しか名前が上がらないことは「ホープ」としての人材が少ないことを示唆しており、当選3回未満の若手世代の台頭が望まれるなかで、ホープが育つかどうかが鍵でしょう。また、蓮舫氏など国会質疑で比較的露出の多い野党議員の名前が「総理大臣になってほしい人リスト」として上がってこないことも、有権者の「リーダー像」とは異なっているという可能性があります。野党の中にも若手の新世代で活躍する政治家も多く、こういった政治家を有権者が知ることで、今後「若手のホープ」が誕生することが期待されます。

国会議員以外に望まれるリーダー像は

根強い人気を誇る橋下徹氏
根強い人気を誇る橋下徹氏写真:アフロ

 (憲法上は総理大臣に指名されることはありえませんが)国会議員以外はどうでしょうか。関西圏では引き続き人気の橋下徹氏は2021年11月の同社調査では河野太郎氏とならぶ上位(2位、10.7%)を獲得しましたが、その後は支持が減り、直近の調査では7位、3.5%となっています。今回注目したいのは、明石市長の泉房穂氏が2022年10月にランクインし、12月には1.1%の支持を獲得したことでしょう。Twitterで39.7万フォロワー(2023年1月13日現在)を持つオピニオンリーダーでもある泉房穂氏は、自身の発言などから次期明石市長選挙には立候補しないことを表明していますが、一方で政策集団を結成したりするなどして、今後も政界に一定の影響力を及ぼす存在との見方が大勢です。

 これに吉村洋文大阪府知事も入れると、国会議員以外の「総理大臣になってほしい人」に絞れば、上位3人が関西ということになります。歯にきぬ着せぬ物言いの多い関西人の主張の強さが、リーダー像に求められている要素の一つかもしれません。

 さらに言えば政治家の「人柄」がどれだけ見えているかも重要な要素でしょう。上位の河野太郎氏や、国会議員以外で名前が上がった政治家は、話し方(やツイート)などから、本人の人格や人間味が有権者につたわりやすい発信を心がけているといえます。政策や主義主張も重要ですが、何より政治家としての人柄や人間味がどれだけ伝わっているかも、リーダーの選定には重要といえます。これに限っていえば、知事選挙や市区町村選挙などの「リーダー」を決める選挙でも同じことがいえ、政治家としての人柄をどのようにリアルに有権者に伝えられるかどうかが、支持を広げる鍵と言えるでしょう。

(出典)

株式会社グリーン・シップ - 内閣支持率調査 2022.12

選挙コンサルタント・政治アナリスト

1988年生まれ。青山学院高等部卒業、青山学院大学経営学部中退。2010年に選挙コンサルティングのジャッグジャパン株式会社を設立、現在代表取締役。不偏不党の選挙コンサルタントとして衆参国政選挙や首長・地方議会議員選挙をはじめ、日本全国の選挙に政党党派問わず関わるほか、政治活動を支援するクラウド型名簿地図アプリサービスの提供や、「選挙を科学する」をテーマとした研究・講演・寄稿等を行う。『都道府県別新型コロナウイルス感染者数マップ』で2020年度地理情報システム学会賞(実践部門)受賞。2021年度経営情報学会代議員。日本選挙学会会員。

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