止まらないジュリアーニ氏の“失言” トランプ氏はポルノ女優への口止め料の支払いをいつ知ったのか?
トランプ氏の弁護士チームに加わったばかりの元ニューヨーク市長ルディ・ジュリアーニ氏の“失言”が止まらない。
時系列的に説明すると、以下のようになるだろう。
トランプ氏の顧問弁護士だったマイケル・コーエン氏は、2016年の大統領選挙投票日直前、トランプ氏と性的関係を持ったと訴えるポルノ女優のストーミー・ダニエルズ氏と秘密保持契約を結び、13万ドルの口止め料を払った。しかし、トランプ氏の方は、今年4月5日、エアフォース・ワンの中で、ダニエルズ氏への口止め料の支払いについては「知らない」と発言。ところが、5月2日夜、テレビ出演したジュリアーニ氏は「トランプ氏は、コーエン氏が支払った口止め料をコーエン氏に返済した」という、トランプ氏の“口止め料知らない発言”とは明らかに矛盾する“大失言”をしてしまったのである。
同じ2日の夜、ジュリアーニ氏はバズフィードのインタビューで詳しく説明している。
「コーエン氏は、2016年の大統領選後、トランプ氏から十分な報酬をもらっていないと不満をこぼしていた。時期は不明だが、ある時点でコーエン氏はトランプ氏と会い、その不満をぶつけた。トランプ氏は1年間にわたり個人資金から月々35000ドルをコーエン氏に払うことに合意し、2017年の最初の数ヶ月以内にその支払いが始まって、すでに完了した。それは明らかに、経費を返済するための支払いだった」
トランプ氏からコーエン氏に月々支払われた35000ドルが、コーエン氏がダニエルズ氏に支払った「口止め料」という経費の返済にあてられたというのだ。
最後の討論会の真っ最中だから
トランプ氏はジュリアーニ氏の“失言”をフォローするように、コーエン氏に口止め料を返済したことを認めたものの、ジュリアーニ氏は、また、5月3日朝のモーニングショー「フォックス&フレンズ」に出演し、さらなる“失言”を重ねてしまった。
「トランプ氏は何にかかった経費の返済をするのか詳細は知らなかった。ダニエルズ氏に口止め料を支払ったという詳細を知ったのは、我々が知ったのと同じ10日前だ」
と口走り、
「(トランプ氏と性的関係を持ったというダニエルズ氏の)虚偽の訴えが2016年10月15日に出てきたらどうなるか想像してみて下さい。クリントン氏との最後の討論会の真っ最中だったんだよ。コーエン氏はトランプ氏に伺いを立てることなく、自分で解決したんだ」
と息巻いてしまったのである。
虚偽の訴えは選挙に悪影響を与えるから、コーエン氏はトランプ氏のベネフィットになるようお金で解決したとジュリアーニ氏は言っているのだ。選挙資金法に違反したことを認めたような発言だ。
毎朝このモーニングショーを見ているトランプ氏は、ジュリアーニ氏の“失言”をきいて、青ざめたことだろう。早速「ジュリアーニ氏は弁護士チームに加わったばかりで、よくわかっていない」と苦言を吐いてフォローした。
ジュリアーニ氏も自身の“失言”を払拭するためだろう、5月4日、声明文を出してこう釈明した。
「選挙には違反していない。口止め料の支払いは、大統領の家族を守るため、個人的な虚偽の訴えを解決するために行われたのだ。トランプ氏が大統領候補であってもなくても、支払いは行われていただろう」
支払いは、あくまで、虚偽の訴えから家族を守るという個人的理由で行った、選挙のために行ったのではないから選挙資金法には違反していないと“苦しい言い訳”をしたのだ。
トランプ氏は何ヶ月も前から支払いを知っていた
さらに、ジュリアーニ氏は、5月6日に出演したABCの“This Week”で「トランプ氏は口止め料の支払いのことをいつ知ったのか」という質問に対して、
「いつ知ったかはわからない」
と答え、「支払いを知ったのは我々が知ったのと同じ10日前だ」という前にした発言をはぐらかした。
ジュリアーニ氏の“失言”に振り回された1週間。結局のところ、鍵となっている、トランプ氏がいつダニエルズ氏への口止め料の支払いを知ったのかは明確にされていない。
そんな中、5月5日付のニューヨークタイムズ が「トランプ氏は、“支払いのことは知らない”と4月5日にエアフォース・ワンの中で否定する何ヶ月も前から、支払いについて知っていた」と報じている。
3人の関係者が「エアフォース・ワンの中で支払いについて知らないと否定した時は、トランプ氏はコーエン氏がダニエルズ氏の訴えが世に出るのを食い止めたことを知っていた」と話しているというのだ。
13万ドル、おお、安い
明確にどの時点で、トランプ氏が支払いについて知ったのかはわからないが、毎月コーエン氏に振り込んでいた35000ドルが返済にあてられたことを考えると、何のための返済であったかをトランプ氏が把握していないのはおかしい。
また、そもそも、コーエン氏が、13万ドルという口止め料を、トランプ氏が性的関係はなかったと完全否定している、つまり“虚偽の主張”をしているダニエルズ氏に、クラアントであるトランプ氏に伺いを立てることなく、コーエン氏の一存で秘密保持契約を結んで支払ったのも腑に落ちない。また、支払ったことをクライアントであるトランプ氏に知らせなかったのも、弁護士としてはあるまじきことだ。コーエン氏は単なる顧問弁護士であっただけではない。「トランプ氏のかわりに銃弾を受ける」とまで言った“腹心の部下”だったのだ。
そんな疑問について、ジュリアーニ氏は先の「フォックス&フレンズ」でこう推測している。「コーエン氏は13万ドルときいて、おお、安いと思ったんでしょう。安いから自分で契約してしまおうと」
つまり、13万ドルは“はした金”なので、トランプ氏に伺いを立てることなく、コーエン氏の一存で払ったというのだ。ジュリアーニ氏はさらに自らの体験を話して“13万ドルはした金説”を説得力がある話にしてみせた。
「払えるんだったら、たくさんの人が払うと思わないかい? 私は、もっと莫大なお金を払ったクライアントの代理人を務めたこともあるんだよ。お金持ちはターゲットにされるんだ。映画にできるようなプロの女の訴訟もあった。彼女は金持ち高齢者を狙って、数ミリオンドルゆするプロだった」
口止め料を報告していない
確かに、大富豪トランプ氏にとっては13万ドルは、はした金かもしれない。「“虚偽の主張”であったとしても、選挙前にメディアで表面化したらトランプ氏にダメージを与えるので、コーエン氏は金で解決したというシナリオはあり得る」と、ジュリアーニ氏の先の発言と同様の見方をする識者もいる。
しかし、そうだとしたら、やはり“選挙前”というタイミングの問題に回帰し、選挙資金法違反という文字がちらついてしまうのだ。
ジュリアーニ氏も、そこを突かれる可能性を考えているのだろう、出演したABCの番組でこう強調した。
「たとえ“口止め料”が選挙献金に当たるものだったとしても、トランプ氏は“口止め料”を完済したのだから違法にはならない」
しかし、これもまた“失言”かもしれない。“選挙献金だったとしたら、それは連邦選挙委員会に報告義務があり、報告しなかった場合は連邦法に違反することになる”と専門家が指摘しているからだ。トランプ氏は“口止め料”を報告していないのである。そのため、“口止め料”が選挙の経費と考えられた場合、法律に違反したことになるという。
テレビ出演するたびに“失言”をしてしまうジュリアーニ氏。ダニエルズ氏の弁護士であるアベナッティ氏はジュリアーニ氏のテレビ出演を大歓迎しているが、トランプ氏は早速クビを考えているところかもしれない。