なぜレアルは強さを維持できるのか?ヴィニシウス、ロドリゴ、カマヴィンガ…タレントの発掘と資金力。
ビッグマッチに向けて、準備を整えている。
レアル・マドリーはチャンピオンズリーグ準決勝でマンチェスター・シティと対戦する。10日にマドリーの本拠地サンティアゴ・ベルナベウでファーストレグが行われ、決戦の火蓋が切って落とされる。
■重要なタイトルの獲得
マドリーはシティとの一戦を前に、タイトルをひとつ手中に収めた。
コパ・デル・レイ決勝で、マドリーはオサスナと激突した。中立地ラ・カルトゥーハで行われた試合において、マドリーはロドリゴ・ゴエスの2得点で2−1と勝利を収め、コパ制覇を達成している。
「我々は重要なものを勝ち取った。決勝トーナメントで、手強いライバルたちを倒してきた。なので、我々が優勝にふさわしかったと思う」とはカルロ・アンチェロッティ監督の弁だ。
「だがレアル・マドリーというクラブの要求度の高さが、次の試合(シティ戦)に向けて全力で準備することを求めている。我々は非常に高いモチベーションでその試合に臨む」
■ロドリゴとヴィニシウスの活躍
オサスナとの決勝では、ロドリゴとヴィニシウス・ジュニオールが活躍した。
マドリーは、この2選手に、早い段階で触手を伸ばしていた。ロドリゴ(2019年夏加入/移籍金4500万ユーロ/約67億円)、ヴィニシウス(2018年夏加入/移籍金4500万ユーロ/約67億円)、いずれも10代でマドリーの門を叩いている。
マドリーのそれは、いわゆる「青田買い」だ。南米のマーケットに目を光らせ、将来有望な選手を確保する。そのために、2014年にフニ・カラファト氏を入閣させ、スカウティング部門を強化してきた。
現在、ロドリゴやヴィニシウスを獲得しようとすれば、間違いなく高額な移籍金が必要になる。そういったタレントを早めに掴んでおき、ヨーロッパで適応させ、チームで活躍の場を与える。そのプランが実り始めている。
■ヤングタレントの発掘とフリーの選手
南米出身の選手だけではない。近年のマドリーは、オウレリアン・チュアメニ(昨年夏加入/移籍金8000万ユーロ/約120億円)、エドゥアルド・カマヴィンガ(2021年夏加入/移籍金3100万ユーロ/約46億円)とヤングタレントに注目してきた。いま、最も関心を抱いているのがジュード・ベリンガム(ボルシア・ドルトムント)であることからも、その方針は揺らいでいないというのが見て取れる。
ここに、もうひとつの軸が加わる。フリートランスファーの選手だ。
2021年夏に加入したダビド・アラバはバイエルン・ミュンヘン、昨年夏に加入したアントニオ・リュディガーはチェルシーとの契約が満了してフリーになっていた。
移籍金ゼロで獲得できるというのは大きな魅力だ。だが交渉は簡単ではない。年俸、待遇、条件面で選手側に判断されるからである。そういった観点では、パリ・サンジェルマンのような「国家クラブ」や資金潤沢なプレミアリーグのクラブとの競争は分が悪い。
だがアラバとリュディガーはマドリーを選んだ。以前、リュディガーが「レアル・マドリーに移籍するのは夢だった」と語っていたが、これはまさに“レアル・マドリーのブランド力”がなせる業だ。この辺りが、フロレンティーノ・ペレス会長が巧みなところである。
金満クラブの印象が強いマドリーだが、実際はそうではない。この数年の補強で言えば、高額で獲得したのはエデン・アザール(2019年夏加入/移籍金1億1500万ユーロ/約172億円)とチュアメニくらいだ。チュアメニに関しては、その夏にカゼミロを移籍金7000万ユーロ(約105億円)でマンチェスター・ユナイテッドに売却して、ある程度帳尻を合わせてしまった。この抜け目のなさが、マドリーの強さにつながっている。
■決戦の時
先のコパの優勝で、アンチェロッティ監督はこの2シーズンで獲得可能なタイトルを全て勝ち取った。コパ、リーガエスパニョーラ、チャンピオンズリーグ、スペイン・スーパーカップ、UEFAスーパーカップ、クラブ・ワールドカップという6つのタイトルだ。
だが今季のリーガにおいては、首位バルセロナ(勝ち点82)に水をあけられている。マドリー(勝ち点68)は3位に位置しており、2位アトレティコ・マドリー(勝ち点69)とバルセロナを追走している状況だ。国内では度々、格下相手に勝ち点を落としてきた。つまり、安定感を欠いている側面はある。
一方、チャンピオンズリーグという大会はベスト16以降、ノックアウトステージになる。ファーストレグ・セカンドレグはあるが、そこでは一発勝負だ。「ビッグイヤーを獲得したければ、レアル・マドリーに勝たなければいけない」と語ったのは他ならぬジョゼップ・グアルディオラ監督である。その真意が問われるゲームが、迫っている。