なぜニセコが……外国人が押し寄せて地価上昇する場所に「ハワイとの共通点」があった
常夏のハワイと冬はマイナス10度以下になることがある北海道のニセコ……2つの地域に共通点がある、といっても、うなずく人はいないだろう。まったく正反対の場所だ、と。たしかに気候と風景は大きく異なる。しかし、「楽しさ」の点で2つの場所には共通する要素がある。
それは、自然を楽しむだけでなく、ショッピングやグルメも満喫できるという点である。
ハワイはきれいな海が魅力。しかし、海がきれいなリゾートは世界中に数多い。そのなかで、ハワイが抜群の人気になっているのは、ワイキキのビーチから少し足を伸ばせば分厚いショッピングゾーンが形成され、グルメスポットも豊富だから。ビーチで遊ぶだけでなく、高級ブランドから生活雑貨まで幅広く買い物を楽しめるし、食事の楽しみもある。それが、ハワイの魅力を上げている。
さらに、ワイキキビーチに近接するカラカウア通りだけでなく、アラモアナセンターにウォールマート、ホールフーズマーケット、アウトレットモールなどショッピングに行きたい場所がいくらでもある。だから、毎年、世界中から観光客が集まってくる一方で、「お金があれば楽しい場所(思い切り楽しむには、お金が必要)」といわれる。それくらい、ハワイではショッピングとグルメが重要な要素というわけだ。
一方、ニセコはどうだろう。
ニセコの魅力として大きいのは、世界的にも高く評価されている雪質のよさ。サラサラのパウダースノーで、しかも雪の量が多い。スキー場のスケールが大きいことや宿泊施設が充実していることも人気の理由として挙げられている。
それらスキー場としてのポテンシャルの高さに加え、近年は新千歳空港や札幌中心部へのアクセスが向上したことも来訪者を増やす要因になっている。
ウィンタースポーツを楽しみに来た人でも、滞在中、何日かは暖かい過ごし方もしたい(ニセコは雪質がよいが、寒さも厳しい)。そもそもニセコを訪れる人すべてがスキーやスノボだけをしたいと思っているわけではない。夫と子供にはスキーをさせて、妻はショッピングに出かけたいというケースもある。
そんなとき、札幌の中心地まで遊びに行きやすいニセコは最良のリゾート地になるわけだ。これは、ハワイも同様。ハワイに行く人すべてがサーフィンやダイビングの趣味をもっているわけではない。プールサイドで日焼けはするが、海には入らない人も多く、その場合、買い物と食事が大きな楽しみとなる。
つまり、ニセコにはハワイと同様にショッピングやグルメを楽しむ場所が身近にある。それも、ニセコの魅力を上げる要因と考えられる。
札幌では買い物、食事の楽しみが広がる
ニセコから札幌中心地までの所要時間は車で2時間ほど。決して近いとはいえないが、外国から日本にやってきた外国人旅行者からしたら、たいした距離ではない。
札幌には買い物できる場所が多いし、グルメスポットも豊富だ。ウニ、蟹、イクラにジャガイモ、アスパラガス、トウモロコシ……おいしい食材が多く、ラーメン、ジンギスカン、スープカレーといった名物も豊富。食べる楽しみが多く、それは日本人にとっても北海道の魅力になっている。
海外から日本に遊びに来た人たちにとっても同様。しかも、真冬の北海道でも、札幌中心部は暖房の効いた地下街が発展しているので、ぬくぬくとショッピングとグルメを堪能できる。
スキー、スノボを楽しむ場所なら本州にも多く、スケールの大きなスキー場もある。が、スキー場から車で2時間でショッピングとグルメを満喫できる場所はない。だから、ホテルに滞在し続けて、スキーやスノボに没頭することになってしまう。
これに対し、ニセコは札幌中心部の魅力が加わるので、楽しみが大きく広がる。だから、行きたいという人の層が広がるわけだ。
ニセコは、夏のゴルフの拠点にもなる。ゴルフやショッピング、グルメの楽しみがもっと多くの外国人に知られるようになれば、来訪者はさらに増えるだろう。新幹線が札幌まで延伸する計画になっているのも追い風となり、ニセコはハワイのような世界的観光地として発展する可能性がある。そうなれば、定住者、働く人も増えて、周辺でも住宅需要が高まる。
近年、北海道では不動産価格が大きく上昇。昨年の公示地価では、全国で地価上昇率が高い場所ベスト10をすべて北海道の街が独占した。さらに、ニセコではとんでもない宿泊費のホテルが誕生するなど、驚きの出来事が生じている。
その状況は異常ともされるが、ニセコがハワイのような人気スポットになれば、新千歳空港から札幌中心地までの地価は今以上に上昇する可能性がありそうだ。