「生なごやん」「生ういろう」…。名古屋グルメの新トレンドは「生」!
グレード、美味しさがアップする「生」が名古屋グルメの新トレンド
近年、「生」は名古屋グルメの新トレンド。もともと生キャラメルや高級生食パンなど、「生」をキーワードにヒットしたグルメは全国的にも少なくなく、その流れが今、名古屋の特にお菓子の分野に到来しているのです。
名古屋の定番菓子である「なごやん」「しるこサンド」「ういろう」「えびせんべい」。これらの「生」をピックアップし、その魅力を紹介します。
名古屋のおやつ菓子として親しまれている敷島製パン(Pasco)の「なごやん」。60年以上愛されているロングセラーに、この度新しく「生」タイプが誕生しました。6月1日に発売された「生なごやん」です。
「創業100周年を記念して国産小麦粉を使った新商品のアイデアを社内で募集し、生まれたのが『生なごやん』です」と同社広報担当者。「生」というキーワードを採用した理由は「既存の『なごやん』は焼き菓子で中身は黄味あん。対して蒸し上げる製法、中身を黄味あんクリームにすることで、よりしっとり、よりなめらかな食感にした生菓子であることから『生なごやん』と名づけました」といいます。
筆者も早速実食。形や大きさは確かにほぼなごやん。口にすると生地はしっとりふんわり、黄味あんクリームもとろり柔らか。小麦と黄味あんの風味・甘みを活かした味の方向性はなごやんと同様ながら、口の中でとろける食感と甘みに名前の通りの生菓子らしいみずみずしさを感じます。二段階ぐらい大胆にアップグレードしている感があり、なごやんだと思って食べるとびっくりしますが、純粋においしいので筆者的には「合格!」です(偉そうですみません)。
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「しるこサンド」は駄菓子→手土産にアップグレード
しるこサンド(松永製菓/愛知県小牧市)もまた名古屋を含む愛知県民にとってはソウルスナックともいうべき存在。1966年の発売以来半世紀以上愛され続けているロングセラーです。ビスケットにあんこをはさんだ甘じょっぱさが独特で、一枚もう一枚と手が伸びてしまいます。
その高級版が「生しるこサンド」。2015年に冷蔵タイプとして発売され、2018年に常温タイプにリニューアルされました。従来のしるこサンドに比べるとサイズ感はふた回りほど大きく、ビスケットも小豆入りのクリームもしっとりしていて、なるほどの“生”食感。柔らかさの後から小豆の風味がふわっと広がり、ビスケットのようでもあり和菓子のようでもあり。大人も満足できる味わいに進化しています。
「ビスケットもあんも素材にこだわりながらも、しるこサンドならではの小豆の風味を活かすことを重視しました。従来のしるこサンドをご存じのお客様から『プレミアム感があって驚いた』『これなら“おつかいもの”としても喜ばれそう』とご好評いただいています」と松永製菓の広報担当者。
しるこサンドはもともと“駄菓子の街”である名古屋市西区で生まれたこともあり、あくまで日用のおやつ菓子。しかし、生タイプは高級ビスケットのクオリティでパッケージにも品があり、手土産として十分使えます。しるこサンドは愛知県内のスーパーなら大体どこでも買えますが、「生しるこサンド」は名古屋駅地下街エスカ内「なごみゃ」、ジェイアール名古屋タカシマヤ地下1階「銘菓百選」、御園座「御園小町」と販売店が限られる(通販あり)というレア感もあり。子どもの頃にしるこサンドを食べたことがある、という人へのおもたせにするといっそう喜ばれそうです。
ういろうのトップブランドも「生」が推し!
ういろうは名古屋銘菓の大定番。駅の土産物売り場やデパ地下では、地元の名店の商品がいくつも並びます。中でも一番の売上を誇るのが青柳総本家の青柳ういろうです。
青柳ういろうは1964年の東海道新幹線開通の際に車内販売をスタート。これによって“ういろう=名古屋”のイメージが全国に定着しました。おみやげ向けに日持ちがするフィルム入りの密封製法を開発したのも成功の大きな鍵となりました。そして、この密封製法をあえて使わずに昔ながらの製法をとっているのが「生ういろう」です。
「一番の違いは蒸し方。通常の商品はフィルムに生地を充てんして蒸すのですが、生ういろうは型に生地を流し込んでから蒸します。そのため生地を二層にするなど手の込んだ商品もつくれるんです」と取締役の後藤稔貴さん。
レギュラー商品の「白」と生ういろうの「和三盆」を食べ比べて見ると、生の方が生地がきめ細かく口どけがよく感じます。ういろうを食べ慣れている人ほど、品の良い甘みや柔らかな食感の魅力を実感できることでしょう。
同社では生ういろうという商品自体はもともとあったのですが、今年2月に食べ切りやすいようにサイズを小さくしてリニューアル。「生」タイプを新たな看板商品にしようという意気込みが感じられます。
ういろうは名古屋土産としてはメジャーすぎて買い控えてしまう…旅慣れた人ほどそう思いがち。しかし、誰もが知る青柳ういろうのあまり知られていないアップグレード版だと思えば、旅の上級者が選ぶ手土産にふさわしいんじゃないでしょうか。
半生えびせんべい「知多しゃぶ」
えびせんべいも実は名古屋および愛知の名物。国内生産の95%を愛知県が占めています。その中でも香味庵本店(愛知県美浜町)の「知多しゃぶ」は、非常にユニークな半生タイプのえびせんべい。小判のような薄くて平たい楕円形で、えびの香ばしさは焼いたえびせんべいに比べてほのかに優しい印象。口に入れると、柔らかくもやや弾力があり不思議な食感です。
「考案したのは10年ほど前。普通のえびせんべいは二度焼きするのですが、一回焼いた半生の状態のものを時々自分でツマミ食いしていたんです。日持ちがしないので商品化しようという発想はなかったんですが、せっかくおいしいのだからお客さんにも食べてもらいたいという思いが強くなって商品化することにしました」と店主の杉浦好之さん。
そのままだと酒のつまみになり、野菜をまいたり、名前の通り湯にさっとくぐらせてしゃぶしゃぶのようにして食べるのもよし。菓子というよりも食卓を豊かにする材料として楽しめます。
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このように様々な魅力あふれる商品が登場している「生」名古屋グルメ。「生」はフレッシュさを表現するキーワードとして使われ、どの商品も日持ちよりも手作り感を重視し、従来の商品よりも素材の持ち味をより実感できるのが魅力となっています。手土産として、ちょっと贅沢なおやつとして、おなじみの名古屋グルメの新しい味わいを楽しんでみてはいかがでしょうか。
(写真撮影/すべて筆者)